五輪開催記念『サンデーモーニング』の東京五輪反対報道を検証する(前編)

藤原 かずえ

TBS『サンデーモーニング』は、開催地決定から開催に至るまで、東京五輪の価値をひたすら貶めるある種の「ディスカウント東京五輪運動 Discount Tokyo Olympic campaign」を展開してきました。

五輪の運営を客観的に分析した上で適正に批判することは、世界を繋げる「平和の祭典」を持続的に発展させていく上で重要なプロセスです。しかしながら、『サンデーモーニング』の東京五輪報道は、五輪の運営において発生した個別の問題に対して、建設的な解決策を議論することなく、恣意的に特定のスケープゴートを極悪人認定して攻撃するものであり、テレビ放送を使った大規模な【キャンセル・カルチャー cancel culture】そのものでした。五輪に関わる多くの事案が、番組を通して代わる代わる理不尽に大問題化され、日本社会はその都度不必要な混乱を繰り返しました。

この記事では「サンデーモーニングの東京五輪反対報道を検証する(前)」と題し、2013年から2020年までに同番組が一方的に展開してきた東京五輪反対報道の軌跡を振り返って検証してみたいと思います。

■東京に開催地決定

2013/09/08放送
関口宏氏:7月24日はもう決まっているの。今年の夏なんか考えたら、やってられないぞ。
大宅映子氏:あれだけ皆が熱狂しているのを見るとよかったかなと私は思っているけど。
関口宏氏:喜ぶのは結構だけど課題も。
岸井成格氏:安倍総理が疑念を持たれた汚染水問題について「全く心配はありません」と胸を張って言い切った。そして「国が前面に出てすべて解決にむかってやりますから」「7年後は全く問題がありません」と。本気になってこの対策をやらないと、全く国際社会に向かって不信感を持たれることになる。なかなか重い責任を背負った。
大宅映子氏:今東京はこれ以上集積しようがないくらい成熟しきった。経済効果というが、お金だけを目的にやるのは引っかかっていた。もっと経済効果があり得る街があった。イスタンブルはイスラム初・東西の懸け橋という点で説得力がある。譲った方がいいと私は思っていた。だけどいろんな状況が変わってしまった。
関口宏氏:やっている時に地震が来たらどうするのか。悪い人に狙われたらどうするのか。スポーツ庁設立でひと揉めあるかもしれない。1回作ると国家予算は流れ放しになる。

思えば、リオで2013年9月7日(日本時間9月8日)に開催が決定した東京五輪に対して、同日朝8:00から放映の『サンデーモーニング』は明確に反対の論調を示しました。大宅氏は何の根拠も示さずに東京五輪を「金だけを目的にやる」と断定して非難しました。これは明らかに事実と異なる中傷です。関口氏も思いつくままにイチャモンを並べました。

この日の『サンデーモーニング』は、喜びに沸く日本列島とは正反対に、出演者の顔が引きつってテンションも低かったことから、「お通夜のような放送」と当時呼ばれました。中継で結んだ安倍首相へのインタヴューも皮肉に満ちたものでした。

関口宏氏:非常に心配なのが、原発の汚染水の問題を解決できると世界に向けて言った。自信はどうか。
安倍首相:自信があるからそのように申し上げた。海外からの不安を払拭できたと思う。
関口宏氏:専門家も解決策が見えないという汚染水問題、7年間で大丈夫か。
安倍首相:大丈夫です。
関口宏氏:その「大丈夫」の根拠は?
安倍首相:現段階においても福島第一原発の港湾の0.3km2に完全に汚染水をブロックしているし、今でも福島近海はWHO飲料水基準の1/500になっている。完全に安全だ。

さらに、中継が終わると番組はスタジオトークで安倍首相への疑念を露わにしました。

関口宏氏:僕らが聴いている話ではまだまだ大変だと。総理は自信を持っていた。本当かな。
大宅映子氏:「コントロールできる」「封じ込められる」という話は初めて聞いた。
関口宏氏:でしょ。だから大丈夫かと心配がある。
岸井成格氏:タンクも本気になってやらなければダメだ。あれだけ太鼓判押したんだから

この安倍首相の発言は、当時東電のウェブサイトで公開・逐次更新されていた水質のモニタリングデータで証明されていましたが、番組はこれを完全に無視し、コメンテーターの無知で勝手な認識を根拠に処理水を不当に危険視しました。この時に造られた風評が最近まで大きな影を落として漁民に被害を与えるとともに復興を妨げていたことは、多くの国民が知るところです。

■アンダーコントロール

2013/09/15放送
岸井成格氏:汚染水が外洋に出ていない。健康被害が出ていないということでコントロールされていると言っている。漏れていることは事実でコントロールされているとは言えない。場当たり的にタンクを急造しても限界は来る。
金子勝氏:タンクから排水溝を伝わって出ちゃう可能性とか。港湾のシルトフェンスがあるが、トリチウムに関しては薄まって出ている。これを対策から外すのは大問題だ。

環境工学的な問題である当該事案における【コントロール(制御) control】とは、外界に対して有害な影響を与える可能性がある放射線濃度を超えないように港湾の水質を保持することであり、この段階でコントロールは完全に実現されていました。その後の課題は、この状態を保持した上でより効率的な制御システムに置き換えるだけであったので、成功は自ずと保証されており、番組は不当に不安を煽るイチャモンをつけただけであったと言えます。また、金子氏の発言から番組が既にこの時点でトリチウムに関する風評を流していたことがわかります。実際に日本政府は、世界との約束通り、この時の状態を保持しながら効率的なシステムへの置き換えを完了し、当該問題を完全に解決しましたが、根拠のない素人コメンテーターが認識で風評を拡散させたことによって地元の漁業者は深刻な風評被害を理不尽に受けることになりました。番組が地域に与えた傷は極めて大きいと考えます。なお、番組では目加田頼子氏と青木理氏が今年に至っても次のような風評を流しています。

2021/04/18放送
目加田頼子氏:トリチウムには健康被害に大きな影響はないと言われているが、わからないこともたくさんある。実際にそうではないと指摘する研究者たちもたくさんいる。それをこれから30年、40年ずっと放出し続けるわけだ。それがどういう影響を環境だけでなく人体に及ぼしていくのかわからないわけだ。海洋放出以外にオプションはなかったのか。どんなことを検討して、それぞれにどれだけのコストがかかるのか。で最終的に海洋放出に至ったという経緯の説明もほとんどない。納得も理解も得られないままに「もう決めました」というのはあまりにも乱暴だ。

2021/05/02放送
青木理氏:福島では10年たって汚染水を放出するなんて話をしている。

基準を満たしたトリチウムの放出に有意な健康被害がないことは世界中の原発で明らかになっていることであり、海洋放出以外のオプションのコスト計算や経緯の説明は政府の委員会によって既に周到に実施されています。事実も抑えることなしにデマを流している目加田氏の行為は極めて有害です。さらに青木氏は「処理水」を「汚染水」と呼ぶ許容しがたいデマを流しています。無知なコメンテーターの不合理な発言を訂正することなく風評を拡大させている番組の社会的責任は極めて重いと言えます。

■ソチ五輪

2014/03/02放送
岸井成格氏:一番気になっているのは6年後の東京五輪だ。舛添氏は世界一の五輪をと言って知事になったが、外交が一番大事だ。日中・日韓がこういう形になっていて、日本の右傾化が国際的に懸念が高まって来て、今世界の火薬庫は東アジアになりつつある。日中が尖閣で武力衝突があるかもしれない中で五輪を開く。このまま開けるのか。日中・日韓・日米をとにかく改善していく。

五輪を政治利用し、あることないことを危惧する岸井氏です。ちなみにソチ五輪は五輪史上最も大会経費がかかったとされる五輪でその額は約5兆円です。北京五輪で約4兆円でこれに続きます。東京五輪の大会経費は1年延長にかかった約3000億円を含めて1兆6440億円です。確かに当初予算の7340億円よりは大幅に増えましたが、それでもロンドン五輪やリオ五輪の大会経費と同レベルの額です。

■新国立競技場

2015/07/12放映
関口宏氏:みっともない話になってきた。
大崎麻子氏:次世代へのあまりにも大きな負の遺産だ。
岸井成格氏:そのまま突っ込んでいくのは、よほど何か力が働いているのか、表に出せない裏があると思う。疑わざるを得ない。普通は絶対あり得ない。

2015/07/19放映
姜尚中氏:責任は誰が取る?安倍総理も一言も謝罪がない。しかるべき人が謝罪をするか、もしくは辞意を表明しなければいけない。これをそのまま許すということは安保法制とも同じで、一回戦争をやってしまえば歯止めが効かなくなる。

2015/07/26放映
関口宏氏:この間いろいろドタバタ劇がありました。
岸井成格氏:ホントに大丈夫なの。責任の所在が不明だ。これでは国民も「大丈夫なの」「任せられないね」という感じをずっと引きずる
関口宏氏:前回の東京五輪はもっと志が高かった。今回はなんだか利益のことばっかりでうごめいている。

五輪の話題だけに限らず、一般に『サンデーモーニング』のコメントで散見されるのが、通常の議論を「みっともない話」「ドタバタ劇」といったネガティヴな印象語で罵ることです。「議論すること」を「混乱していること」と混同する日本社会独特の偏狭な考え方は国際化が進んだ今も全く改善されていませんが、このような世界の非常識から国民が抜け出せない元凶の一つが『サンデーモーニング』のような不見識なテレビ番組のミスリードに他なりません。また、「よほど何か力が働いているのか、表に出せない裏がある」といった反証不可能な【陰謀論 conspiracy theory】も日常茶飯事です。番組においてコメンテーターは全知全能の聖人のように振舞っていますが、議論することを否定し、陰謀論を許容する彼らは、基本的に何の論理的スキルも持ち合わせていない単なるクレイマーの寄せ集めに過ぎません。

■五輪エンブレム盗作疑惑

2015/09/06放送
関口宏氏:競技場の問題といい、関係者がはしゃぎ過ぎたんじゃないか。

番組はこういう何の根拠もない認識を結論にして開催者側に少しずつダメージを与え続けていきます。

■東京五輪招致で不正送金?

2016/05/15放送
関口宏氏:どうも今度の五輪はいろんなことが
岸井成格氏:なんかケチがつくんですよね。

2016/05/22放送
関口宏氏:なんかスポーツ全般が金のなる木になってきちゃってね。今回の五輪もね、僕ら50年前の五輪を知っているが、あの時と雰囲気が違う。何か。
幸田真音氏:なんかブラックなイメージ。一番かわいそうなのは選手たちでこういうことでケチ付けられたというのは気の毒だ。純粋な情熱に見ずかけることはしてほしくない。

「なんか○○だ」というフレーズを濫用して根拠なく恣意的な批判するのも番組お得意のパターンです。このような根拠を欠いた非難のことを「中傷」と言います。サンデーモーニングは中傷天国なのです。

■小池東京五輪会場見直し

2016/11/06放送
浜田敬子氏:一連の会場見直しを見ていると、誰のための五輪なのかと感じてしまう。

2016/11/27放送
浅井慎平氏:五輪って何かという問いかけすらちゃんとやっていない。物凄いテーマを持っている。情報が公開されなければいけないし、市民の納得の上で物事が決定していかなければいけない。当り前のことだが、そんなこと言わなければいけないことにつらいものがある。

2016/12/18放送
田中秀征氏:小池都知事は短い期間によくやった。ここまで持ってきてしまった人たちの責任はどうなるんだ。組織の上の方はみんな交代させてもいい。こんな事態にしたんだから。

2016/12/25放送
関口宏氏:どうしてもお金の問題が解決しない。
岸井成格氏:こういうの聞いていると五輪大丈夫なの。

小池都知事ブームの真っ只中、番組は小池都知事を褒め称え、その反対勢力を批判しました。「五輪は誰のものか」「五輪とは何か」という問いかけは番組が繰り返し続けた常套句です。彼らはけっしてその答えを言わずに曖昧なままにスケープゴートを非難するのです。

■迷走五輪

2016/12/04放送
橋谷能理子アナ:五輪をめぐるごたごたが続きます。華々しく公表された大会エンブレムは盗作疑惑が浮上し、白紙撤回。さらにオリパラの主会場になる新国立競技場の建設計画も予算が大幅に膨れ上がり、これまた白紙に。他にも招致に際してJOCからコンサルタントに対し不正な送金があったとの疑惑が浮上。国会で追及される騒動もありました。招致時におよそ7000億円とされた開催費はいまや2兆円とも3兆円ともいった額まで膨れ上がり、競技会場などをめぐって混乱が続いています。迷走を続ける2020年東京五輪に向けた動き。肥大化・商業化が進み曲がり角を迎えた五輪。2020年東京五輪、いまあらためてその意義が問われています。
関口宏氏:まずは招致、それから細かいことは考えようみたいな雰囲気があったようにしか見えない。何かみんなで共通理念を固めて招致する前にいろいろ考えなければならないことを考えなければいけなかった。
涌井雅之氏:結論から言えば、五輪レガシーに対しての哲学と合意形成を忘れてきたということだ。2020年東京五輪はどこにも何にもない。そこが一番の問題だ。私は個人的には江戸という大変な文明があった。100万人以上の人間が住んでいて実に公衆衛生も恵まれていて素晴らしい生活をしてきた。自然共生と再生循環型の都市だった。これを世界化することにレガシーが決まったらいろんな問題が起きない。そういうものの考えができていないのが非常に残念だ。
大宅映子氏:まったく同感だ。東京に誘致している時に何が目的と聞いたら経済効果と答えた。ちょっと待ってくれと。2020年に東京でやることの意味はまだモノカネなのか。東京程成熟した社会はない。そこでやる。これからの人間社会どうするかという話で新しい価値観とか方向が出せるのであればいいけれど。経済的に儲かるからやりましょうという話は絶対ダメだと思った。
岸井成格氏:原点に戻ると五輪はスポーツの祭典であると同時に平和の祭典と言っている。これに対して日本がどれだけ強烈なインパクトがあるメッセージを出して工夫もしていろんな知恵も出し合って平和の祭典の五輪をもう一度取り戻すという発想が必要だ。

涌井氏は、東京五輪の話題になると「理念がない」と終始しましたが、東京五輪の理念は誘致活動の申請ファイルで明確に宣言されています。その大きな柱が「復興五輪」であり、住民も政府も東北復興を目指して尽力してきました。そもそも、理念で五輪を批判するというのはイチャモンに他なりません。過去の五輪の理念を問われても多くの人はまったく思いつかないでしょう。平昌・リオ・ソチ・ロンドン・バンクーバー・北京といった各五輪の理念は一体何であったのか、言える人は稀少です。理念で迷走した五輪など聞いたこともありません。中でも異様なのはモノカネが目的であると勝手に信じている大宅氏です。誰が吹き込んだのかわかりませんが、東京五輪がモノカネを理念にしているというデマを信じていること自体、正気の沙汰とは思えません。理念が存在するにもかかわらず「ない」と言ってみたり、「モノカネだ」と言ってみたり、「原点に戻れ」と言ってみたりするこの番組のコメンテーターこそ、理念を無視した異様な言いがかり集団であると言えます。

■平昌五輪

2018/01/8放送
関口宏氏:無事に行ってくれることを祈るしかない。
目加田説子氏:平昌五輪があって2年後に東京五輪があってその後に北京と東アジアで続く。これを機会に東アジア全体の平和というものを真剣に考えていくきっかけになればいいかなと。非常に楽観的だが。
青木理氏:日本のメディアが南北の動きに批判的だ。五輪の政治利用だと。確かにそういう面はあるが、日本国内のムードを見ていると、とにかく北朝鮮憎しと慰安婦問題に関する韓国への反発で南北の動きを冷笑している。蔑んでいるような感じがあって凄く気になる。とりあえずは北が出ることによって1988年の五輪の時のように大韓航空機爆破みたいなことはないと。平昌五輪ができるような懸案事項が一つ減った。これは良いことだ。ここから南北対話から米朝とかいろんな協議の枠組みを創ろうよという努力をすることが大切だ。圧力というがその先に何があるのか、最近の日本のそういうムードを見ていると、結局北を追い詰めてやっちまえとしか僕には見えない。こういうメディアの雰囲気になっちゃうといざ対話の局面になった時、政策の選択肢は狭まる。むしろ日本が主導するんだというムードをメディアも政治も作っておかなければいけない。

2018/02/11放送
橋谷能理子アナ:北朝鮮のほほえみ外交の象徴、美女応援団の声援がなり響く会場に姿を見せたのは韓国・文在寅大統領、そして北朝鮮最高指導者の直系の家族として初めて韓国を訪れた金正恩党委員長のの妹、金与正氏です。(中略)南北融和が強く印象付けられる中、18日にわたる平和の祭典が幕を開けました!

2018/02/25放送
高橋純子氏:東京五輪は「ニッポン!」「ニッポン!」とみんなが言わないと許してもらえないような、そういう社会の空気にしていかないように気を付けたい。

「東京五輪には理念がない」と吐き捨てるように非難している番組コメンテーターですが、「五輪を政治利用した」と世界中から認定されている平昌五輪については、批判精神を封印して肯定したり、異常に擁護したり、なぜか日本を批判したりするという本末転倒な発言を繰り返しました。ちなみに東京五輪は、高橋氏の希望通り、「ニッポン!」「ニッポン!」とみんなが言わないと許してもらえないような五輪にはなりませんでした。逆に「中止だ!」「中止だ!」とみんなが言わないとメディアや医師会から許してもらえないような五輪になってしまいました。

■東京五輪、国の負担大幅増へ

2019/02/03放送
青木理氏:復興五輪とか言っていたが、楽しみにしている選手とかいるのはわかるが、このお金、復興とか廃炉処理とか子育てとか社会福祉とか少子化とかに使った方がいろいろできる。「もうやめちゃえ」と個人的に思う。

勢い余って口を滑らせてしまった青木氏です(笑)

■札幌で五輪マラソン

2019/10/20放送
元村有希子氏:IOC、東京都、JOCのコミュニケーションのなさという機能不全をまたあらためて見せつけられて来年本当に大丈夫なのか
関口宏氏:つまらないことかもしれないけど「東京」五輪なんですよ。東京でやるべきものだったんだ。

夏の東京の気温を口うるさく問題視してきたにもかかわらず、計画を変更すると今度はその計画変更を問題視する番組です。論理的に考えれば、彼らは文句が言いたいだけで気温などどうでもよかったということです(笑)

■五輪1年延期

2020/03/29放送
青木理氏:五輪延期が決まるまでほとんど東京都小池知事の動きが見えなかったが、突然出てきてロックダウンだと言った。これって五輪のために検査も抑えていたのではないだろうかとか、あまり危機感を煽らないようにしていたのではないだろうかという疑念を持つ。こういうことをしていると、やっぱり信頼が政治や行政に持てなくなる。

陰謀論という反証不可能な言説を「こういうことをしていると」といつのまにか事実認定して結論を導く青木氏とその似非ジャーナリズムを許容するこの番組は常軌を逸しています。

■東京五輪1年前イヴェント

2020/07/26放送
浜田敬子氏:五輪1年前イヴェントの池江さんのメッセージには感動した人も多いと思い、池江さんも純粋な思いで「五輪が開かれたらいいな」とメッセージを出したと思うが、今は半数以上が来年の五輪は反対と否定的なコメントをしていて、コロナの感染が収まるまではこちらを優先してほしいと国民感情がある中で、記念のイヴェントに池江さんを起用したことに対して、スポーツ関係者の中からは「彼女自身は最近練習を再開したばかりでパリ五輪を目指すと言っているのになぜ東京五輪のイヴェントに池江さんを起用せざるを得なかったのか。残酷ではないか」という意見と、もう一つは彼女の個人的な闘病の物語と否定的な感情が多い五輪の世論を変える意味で池江さんの立場を利用したのではないか」という意見も出ている。もう一つ私が違和感を持つのは、安倍政権のレガシーとしての東京五輪という報道を見ると、非常に五輪というのは政治とは無関係でなくてはいけないのに「政権のレガシー」という位置づけをすることによって、感染が収まっていないにもかかわらず、ちょっと無理をして開こうとするそういう力学が働くのではないかということを非情に危惧している。

池江選手を政権が政治利用しているという反証可能性のない「陰謀論」を「意見」と曲解し、それを前提に政権批判する浜田氏です。池江選手の立場を狡猾に政治利用しているのは明らかに浜田氏の方です。逆境に立ち向かい強い思いで五輪を目指している池江選手は、喪失感を持っている世界中のアスリートを元気づける当該イヴェントのメッセンジャーとして最大の適任者であり、池江選手自身もオファーを快諾してイヴェントを楽しんだことを語っています。そんな池江選手が騙されてイヴェントに参加させられたような印象を造った浜田氏の暴論は、池江選手の善意と決意を踏みにじるものでした。そんな池江選手がパリ五輪ではなく東京五輪の出場権を実力で得たことは、世界中のアスリートのみならず、同じ病気で苦しんでいる人達にも希望を与えたものと考えられます。なお「安倍政権のレガシー」というのも陰謀論に他なりません。このようなスケープゴートの悪魔化こそ、メディア倫理にもとるアンフェアな行為であることを浜田氏は認識すべきです。

以上、『サンデーモーニング』は、公共の電波を独占的に使うテレビ放送であるにもかかわらず、一方的に東京五輪に反対していることがわかります。これは明らかな放送法違反です。さて、次回の後編では2021年の『サンデーモーニング』の五輪報道を検証します。偏向報道はさらに強度を増します。


編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2021年7月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください。