田原総一朗です。
7月23日、いよいよ東京オリンピックが開幕した。開会式前日の22日、東京の新規感染者数は1979人。2000人に迫る勢いだ。緊急事態宣言下、無観客開催という異例づくめのオリンピックとなってしまった。
政府分科会の尾身茂会長は、「このままのスピードで感染が広がると約2週間後には2倍になる」とし、東京の新規感染者数は、「8月第1週には3000人近くまで増加する」という見通しを示した。
東京の街を見ていても、緊張感は感じられない。さらに学校の夏休み、オリンピック、お盆……。人出が増える要素しか見当たらない。
もちろん何より大事なのは、国民の命であり、健康だが、コロナ対策は菅内閣の運命にも直結する。もしこのまま感染が広がり、東京の新規感染者が5000人を超えるようなことがあれば、菅内閣はもたないだろう。
僕は「ポスト菅」は、河野太郎大臣だと考えている。菅首相、二階氏も僕にそう語った。しかし、もし「5000人超え」で菅内閣が瓦解するようなことがあれば、ワクチン担当大臣である河野氏も責任を負い、後継の芽もなくなってしまう。一方で、現在の野党の力は心もとなく、政権を取る力はないだろう。日本の命運は今、コロナ収束にかかっていると言っていい。
今さらながら、ワクチン接種がもっと早く進んでいれば、と思わざるを得ない。私は、菅首相から「ワクチンの確保は大失敗だった」という言葉を直接聞いている。安全重視は日本の美点でもあるが、今回のワクチンについては、やはり時間がかかり過ぎた。
65歳以上の新規感染者数は、実際に減っており、ワクチンの効果を実感できるのだから、菅首相の悔恨はなおさらだろう。しかし悔いてばかりいても、事態は改善しない。
菅首相は現在、必死で「ワクチン外交」に務めている。一つ注文をつけさせてもらうならば、今一度、自らの言葉で、国民に訴えかけてはどうか。生きた言葉こそが、国民の心に届くはずである。