コロナと共に生きよう

新型コロナウイルスワクチンの接種が世界中で猛烈な勢いで進んでいる。これは今後のウイルスへの対応方法を変える大きな動きだ。

英国では7月5日、ジョンソン首相によりワクチンの接種を積極的に進めていくことを前提に、屋内外での法的規制の全面解除を行っていく新たな方針が示され、19日より実施された。濃厚接触者であっても接種完了者と子供については別の枠組みへの移行を検討するなど、コロナとの共生に向けて大きな方向転換を迎えつつある。

7割弱の人が1回以上ワクチンの接種を終えているイスラエルの保健省によれば、ワクチンによる“発症を予防する効果”は変異株の影響もあり64%に低下する一方、接種を受けた人の“重症化を防ぐ効果”は93%で従来と変わらないとのこと。英国でも既に接種率は7割弱に達し、これまで感染者数が増えれば死亡者数や入院者数も増えていたが、直近ではこの相関関係が明らかに崩れている。重症化率や死亡率がワクチン接種により大幅に低下するのであれば、いよいよ新型コロナウイルスへの対応をインフルエンザと同様の扱いに切り替えていくのが合理的だろう。

ノーベル生理学・医学賞受賞者で京都大学の本庶佑特別教授も以前より「感染はゼロにはならない。(出口戦略は)感染はあるが死人は一定の数に抑えられる、感染防御は続けるが外に出て経済活動をやろう、という形。死ななければ感染症は怖くない」と仰っている。これからは“ウィズコロナ”としてバランス感覚を持って対応していくべきだろう。ワクチン接種を進めていく中で重要なのは、ワクチン接種後、きちんと抗体ができたかを確認することである。時間と共にワクチンの効果は低下していくため、3回目のワクチン接種も必要かもしれない。また、ワクチンの開発と同時に複数の症状に応じた治療薬の開発が期待される。

これまで約1年半の間、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返され多くの人に制約を課してきたが、医療キャパシティや検査体制等々の大幅な改善がなされているとは言えないだろう。また、ワクチン接種が他の先進諸国に比し日本でこれだけ遅れた主因は厚労省が適用する薬事承認等のルールに起因するのではないか。

菅総理は後手に回ったとの批判を受けながらも、法制度を変更すべく頑迷固陋な専門家や役人と戦ってこられた。法律や制度を早急に見直し、非常時に迅速に適用できる体制が望まれる。とりあえずは集団免疫が期待できる全国民の7割のワクチン接種率を目指すのが最優先されるべきだろう。


編集部より:この記事は、北尾吉孝氏のブログ「北尾吉孝日記」2021年7月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。