東京五輪閉会式には、天皇陛下に代わって秋篠宮皇嗣殿下が出席されるらしい。開会式は元首が宣言することとなっており、日本が誘致した以上は、行わないという選択はない。しかし、閉会式は代理を立てることが可能なので、規約上は可能である。
とはいえ、多くの困難を乗り越えて世界のアスリートが集まり、日本選手が国民の期待と日の丸を背負って素晴らしい成績を収めたのに、閉会式に天皇陛下が不在であるとなれば、国民としても残念この上ないし、国際的な皇室のイメージも大きく傷つくことになるし、皇后陛下の不調に対しても何が原因か誰が悪いとか、さまざまな形で世界中で話題になることが憂鬱だ。
しかし、それは横に置いて、秋篠宮殿下がご出席になるというなら、是非とも、妃殿下もご一緒にご出席されることをお勧めしたい。
なぜなら、開会式で天皇陛下の開会宣言の途中になって菅義偉首相と小池知事が椅子から立ち上がった騒動は、もし皇后陛下が一緒に出席されておればおそらくなかったからである。
すでに明らかになっているとおり、予定ではバッハIOC会長の挨拶の後、一呼吸置いて、「開会宣言を天皇陛下がされます。みなさん、ご起立下さい」というアナウンスがあって、陛下とほかの参加者が同時に起立し、そして、陛下の宣言が始まる予定だった。
ところがどうしたわけか、陛下が勘違いされて、いきなり立ち上がって開会宣言を始めてしまわれたので、菅首相と小池知事が一瞬戸惑ったが、混乱のなかで小池知事が手順と違うが立ち上がった方がいいと判断して、菅首相を促して立ち上がったということである。
菅首相らが前を向いて陛下の方を見ていなかったという批判もあるが、この場合は、並んで座っている菅首相らは首を陛下の方に向けるとか、横目でちらちら陛下の方を見るのが正しいとはいえず、前を向いていたのが正しい。
ただキャスター出身らしく、小池知事は、目立たないように陛下の様子を見て異変に気がつき、即断したのは、これは見事といえるかもしれない。自分だけが立たずに菅首相にも促したのは、隠れたヒットとして誉めたい。
どちらにしても、シナリオを忘れて間違ったタイミングで立ち上がり開会宣言を始められたのは陛下であって、それは、バッハ会長の挨拶が予定より少し長かったとかいうのは関係ないし、陛下に宣言をお願いをするのも予定通りであって、なんら落ち度はなく、そういう批判をするのは国際機関の長に対して失礼であろう。
それなら、陛下が式次第から外れてしまわれたのが誰の責任かと、最後の段階までミスが起きないように念押しをしなくてはならない宮内庁に責任があることは明らかであろう。象徴天皇制に大きな傷を付けた非常識な拝察発言などするより、陛下に恥をかかさないようにきちんと準備することこそ、宮内庁庁長官の仕事だ。
もちろん、普通ではありえない予定外の事態は想定外であり、菅首相や小池知事に何らミスはないし、不敬であるはずもない。
そして、もし、皇后陛下が出席されていたら、陛下の勘違いを防ぐことが可能だった可能性が高い。
平成の陛下(上皇陛下)の時代なら、美智子皇后(上皇后陛下)がシナリオを完璧に頭に入れられ、さりげなく、間違いがないように気を配られていた。これは、別に両陛下に限らず、政治家でも民間人であっても、夫人が同席することのメリットは、セレモニーでも食事の席でもハプニングを防ぐ効用があるのである。
そういう意味で、閉会式には秋篠宮殿下と妃殿下がそろってご出席されると良いと思うし、本当は将来の陛下になられるべき悠仁殿下にもご出席されたらどんなに素晴らしい帝王学の学びの場となるだろうかと思うのである。
私は悠仁殿下の帝王教育に東京五輪が役立てられなかったことは日本国家と皇室にとって誠に惜しいことをしたと思う。