変わってきた商品の売り方

カナダのBC州政府はコロナ対策の一環で中小企業向けにオンラインビジネス推進策を取り込んでいます。ウェブサイトの制作ではなく、ウェブを通じた課金制度など人を介さないビジネスの構築を政策的に進めます。これを進める会社には最大約65万円の支援金が出るこのプログラムは爆発的人気で予算上限まで瞬く間に到達、州政府は予算を増やして対応しています。

hakule/iStock

カナダ最大の時価総額企業、ECのプラットフォームを手掛けるショッピファイ社の4-6月決算が発表され、前年同期比57%増で同期の売り上げも1230億円となりました。成長ペースは鈍化していますが、依然高い比率で伸び続けています。

ECと言えばアマゾンのような巨大企業が野球場のような広大な敷地に倉庫を持ち、ロボットが動き回り、アマゾンに商品を納入する企業は高い費用を払いながらもそれが最も売れることを知ってしまい、楽な方を選んでいた傾向が強いと思います。しかし、BC州の取り組み、あるいはショッピファイ社の中小企業向けのECプラットフォーム構築が当たり前になると小さな会社でもオンラインビジネスが可能になります。

私どもの会社もオンライン書店とオンラインギフトショップの二つを持っていますが、今後、オンライン型決済の範囲を増やし、既存のビジネスであるマリーナや駐車場の決済、課金方法も変えていく計画です。また支援するホームケアの会社も将来的にはオンライン課金を含めた顧客が払いやすい手段をいくつか提供していくことを提案していければと思っています。

勿論、これは入り口にすぎず、顧客をそのオンラインショッピングサイトに誘導し、確実に商品やサービスを提供できる手段を構築しないと売り上げ増にはつながりません。ただ、インフラを含めた周辺サービスが急速に普及すると思われ、3-4年でアマゾン一強体制は崩せるとみています。

例えばアマゾンのサイトに入っても正直、ドキドキすることはありません。事務的に購入するだけ。しかし、例えばそこに百貨店やモールのようなポータルサイトがあり、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)でショッピングモールを歩いているような感じにすればショッピングは楽しくなるでしょう。それぞれの店が課金システムを持っているし、オンライン上で店員とやり取りすれば本当のショッピングに近くなります。

最近、バンクーバー市のウェブサイトを通じて許認可課とオンラインコミュニケーションでやり取りして用事が10分で終わったことに衝撃な喜びを感じました。今までは役所に行って2時間待って10分やり取りする、でした。究極的な改善です。これを一般店舗でもやればよいのです。あとは商品を届ける仕組みだけですね。

食生活はどうでしょうか?私はコロナ後もレストランに行く価値がどんどん薄れてくるとみています。テイクアウト、これが定着するみています。北米や日本のモールなどにあるフードコートは人気がありますが、最近、客席エリアのクオリティを上げたり質感を向上させたりしています。フードコートはテイクアウト方式で一つの店の囲まれたエリアではなく、自分の好きな場所で好きな店のものを食べることが可能です。ただ、日本の場合、長居をする人やマナーが悪い人たちの改善努力はした方がいいでしょう。

回転ずし各社はテイクアウトに当然、対応していますが、最近ではテイクアウト専門店も出来ています。理由は回転寿司は入店するのに待たねばならない、これが敬遠されるのがあるでしょう。あの価格の寿司をさっと食べたいと思う人は多いはず。正直言えば、あの回転寿司マシーンを見ながらの寿司は景色としては何ら面白みもなく、最低です。でも誰もそれを指摘しなかったのが不思議なのです。アミューズメント性や非日常だったのかもしれませんが、もはや珍しいものではありません。ならばテイクアウトでもOKでしょう。

吉野家の牛丼、持ち帰りが先日の4連休の際には5割を超えたと報じらています。また戦略的に並盛を複数注文すると割引するという策も功を奏したようです。私だって吉野家のあのスツールに座って3分でかき込むのは嫌です。吉牛がJALのエコノミークラスで提供されていたことがあるのですが、奇妙な満足感がありました。食べるところ変われば牛丼もうまし、なのでしょう。ならばテイクアウトにして公園のベンチで食べるもよし、家でゆっくり食べるもよしなのです。

ものごとの常識観はいくらでも変えられます。変わるプラットフォームや社会の認識が変われば既存のビジネスモデルは瞬く間に輝きを失います。オンラインストアは早く送ればよいという時代からどう送るか、という差別化の時代に入るでしょう。ラッピングしてくれるとか、カードを添えてくれるなど、アイディアはいくらでもあります。テイクアウトしたフードをどのようにおいしく食べるか、という演出もビジネスとして生まれるでしょう。このように考えるとどんどんビジネスは代謝できてしまうのです。

これからの数年、大変面白い時代がやってくるとみています。ポストコロナの世界の色は相当変わる、それが私の予想です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年8月2日の記事より転載させていただきました。

アバター画像
会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。