加藤官房長官「県境またぐ移動自粛を」は説得力なし

加藤勝信官房長官は8月2日の記者会見で、新型コロナウイルス感染急拡大を受けた夏休み中の行動について「都道府県を越えた移動はできるだけ避けてほしい。どうしても必要な場合は検査を受け、小規模かつ分散で行ってほしい」と述べた。これは、全国知事会がまとめた都道府県境をまたぐ移動の中止・延期を呼び掛ける提言を踏まえたものである。

更に、加藤氏は「高い警戒感を持って感染防止に努めてほしい」「東京五輪も自宅で観戦するなど不要不急の外出を控えて、感染防止に対する協力を改めてお願いしたい」と語った。しかし、これら加藤官房長官の発言は、国民には殆ど響かないといって良いのではないか。東京五輪という海外から数万人規模の人間を招き入れるイベントをしておいて「県境またぐ移動自粛を」などと言われても、お笑い以外の何物でもない。

五輪開催の是非はここではひとまず置いておいて、開催賛成の人も、反対派の人も、官房長官の発言をおかしいと感じるのではないか。しかも、時は緊急事態宣言下である。緊急事態宣言を解除して、五輪を開催するのならまだしも、宣言下で五輪を開催しているのだから、これも意味不明である。「どこが緊急事態?」と思う人が増えるのも当たり前だ。真の緊急事態に五輪を開催する余裕などないはず。

ピンポイントで短期間、的を絞った緊急事態宣言の発令ならばまだ効果があったかもしれないが、ダラダラと発令を継続して、しかも五輪まで開催された日には「?」と思うのが当然であろう。「高い警戒感を持って感染防止に努めてほしい」と官房長官は述べる。が、「高い警戒感を」の発言は、大規模な人の移動が起こる五輪を中止してこそ、説得力を持つはずである。「高い警戒感を持って感染防止に努めてほしい」のは政府のほうである。

いわゆる「バブル」も既に穴だらけという指摘もある。五輪関係者の路上飲みも報道されている。緊急宣言が繰り返し出され「東京五輪はやっているのに、なんで自分たちは自粛ばかりなのか」という国民の声も聞こえてくる。緊急宣言を発令したままでは、国民の怨嗟の声は、政府に更に向かうことだろう。


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