“世田谷モデル”ついに廃止へ

稗島 進

オリンピック真っ盛りの中、1日あたりの東京の新型コロナ感染者は3000人を超えた。世田谷区の陽性者数は累計16567人(7月30日現在)で、20、30代が多い。ワクチン接種を早急に進めるべきであるが、スムーズに予約ができない状況が続いている。

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さて、鳴り物入りで始まった“世田谷モデル”(定期的に行うPCR検査)だったが、ついに来月9月で廃止が決まった(区のHP参照)。わが会派(無所属・世田谷行革110番・維新=F行革)が唯一、議会で激しく反対してきた。残念ながら、億単位の血税が浪費され、予想された通りの結末を迎えた。保坂区長が大騒ぎしてプール方式まで導入したものの、対象となる介護事業所や障害者施設からの希望は少なく、1ヵ月に1回の検査では感染者を的確に捕捉することもできず、目的とした感染拡大の防止やらクラスター発生の抑止やらといったフレーズは完全に空念仏と化していた。まったくもって、怒りを禁じえない。あまりにも自明である愚策に血税を使い、誰も責任を取らないままこうして終わろうとしている。私には徒労感しかない。

目下、区民の生命・身体を守るためにやるべきことは、ワクチン接種の加速である。区の対象者は約83万2000人。このうち1回目が終わった人は約31万6000人、2回目は約19万人となっている(8月2日現在)。そして、40、50代の予約はほとんどできない状況だ。

保坂区長は接種が進まない原因として、国がワクチン配給を削るせいだと怒っているのだが、それはそれとして、区としてやれることは徹して実行することが急務ではないか。たとえば、接種時間は国のモデルだと1人3分となっているが、区はなぜか1人4分に設定。打ち手に歯科医師も活用してどんどん接種すればよいのに、私がそれを指摘すると区は「間に合っています」と言う。間に合ってるくらい遅いと考えないところが不思議である。予約分を素早く処理しないから、国に在庫だと認定されてしまうのである。


このままでは区長が“評論”するように、オーバーシュートの過程をたどってしまうのではないか。

先日、世田谷区に本社を置く楽天グループから、区民を職域接種の対象に加えて頂けるとの申し出があり、すでに予約は埋まってしまったが、これだって区から働きかけたわけではない。区が総力を挙げてワクチン接種を遂行するという思いが感じられないのが、不可解でならない。私たちの会派が取り上げてきた、中学校の修学旅行もどうなるのか。大阪市長は生徒たちの気持ちを汲んで、実施に向けて手を打っている。


“教育ジャーナリスト”を名乗ってきた保坂区長の思いを聞きたいものだ。