NHKで1980年代まで放送された「明るい農村」と言う朝の番組がありました。日本国内の農業を取材する番組だったと記憶しています(写真もNHKサイトから)。
この番組には、被害者としての農民・農村を描くという制作意図もあったそうです。番組名に「明るい」と敢えて付けたのは、農業が置かれた立場が決して明るいものではなかったから。「明るい」と言う番組名には、逆説的なニュアンスが含まれていたのです。
SNS上での一見「明るい」投稿を見ると、この「明るい農村」を思い出します。
「大好きな~」「とても楽しい~」「最高においしい~」「大の仲良しの~」といった投稿を見ると、無邪気に自分の素直な感情を明るく表現している人だけではなく、なんだか無理に明るくしているように見えてしまう人もいるのです。
本当はあまり好きではないものでも「大好きな」とコメントし、面白くなかったイベントでも「とても楽しい」とアップする。
実はそんなに美味しくないお店でも有名店は「最高においしい」と書くしかなく、友達と一緒に写っている写真にはそんなに親しくなくても「大の仲良しの」と入れてしまう。
そんな「明るい農村」状態になっている可能性は、意外に高いのではないでしょうか。
SNS上では仕事も順調、プライベートも楽しいことばかりとアピールしている「リア充」に見える人が、実はその裏に人には見せられない問題や苦悩を抱えている。
本人が明るさを強調すればするほど、現実が真逆に見えてしまう人がいます。その一方で、本人の書いていることが、素直にリアルに感じられる人もいる。その違いはどこにあるのでしょうか?
どちらにしても、本当の事は本人以外にはわかりません。SNSの最大の問題は、事実とフェイクが共存していて簡単に区別がつかないことです。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年8月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。