コロナ禍でメキシコ大統領専用機の引き受け企業が見つからない

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領(アムロ)は少々変わった人物であり、同時に人間性が豊かな人物である。2018年大統領選挙選中から「大統領になれば大統領専用機は利用しない」と公約していた。多くの国民が苦しい生活を余儀なくされている中、大統領は贅沢できないという考えからである。大統領になってからも国内移動や、僅に行なった外遊では民間航空会社のフライトを使って訪問している。

(メキシコ大統領が民間機内通路を通っている映像)

一番困るのがSPである。民間機での移動だと大統領を護衛するのが難しく、テロなどに狙われ易いからだ。この件について記者から質問を受けると、アムロはいつもポケットの中からお守りを色々取り出して、「神様が私を守ってくれているから大丈夫だ」といつも彼は語るのだ。

また、アムロの大統領としての年収は166万ペソ(910万円)。ペーニャ・ニエト前大統領はアムロの3倍の年収を貰っていた。年収の高い判事などの高級公務員についても、大統領年収以上を受け取ることをアムロは禁止した。

話を大統領専用機に戻すが、大統領専用機ボーイング・ドゥリームライナー787-8はハンガーに入ったままだ。この専用機はフェリペ・カルデロン元大統領が就任中の2012年に発注。購入した飛行機は民間旅客機として使用される目的を大統領専用機に改装した。回想に必要な設備機器や内装など含め、総額で2億1870万ドルの費用がかかったという。しかしながら専用機が完成した時にはカルデロン元大統領は任期を終えていた。そこで次の大統領になったエンリケ・ペーニャ・ニエト前大統領が使用することになった。ペーニャ・ニエト前大統領が最後にこの専用機を利用したのはブエノスアイレスで開催されたG20に出席する為だった。その為にWiFiが使用できるよう改修に使った費用だけでも37万ドル。しかも、ローンのため、今も返済があり、2037年まで支払いが続くことになっているという。

アムロはこの大統領専用機を売却すべく企業にアプローチ。また宝くじのネタにして得た売り上げで駐機にかかる費用なども負担できるとした。何しろ、駐機に費用がかかり、洗浄するだけでも5000ドル余りの費用が掛かる代物である。当初、トランプ前大統領に売ることも検討された。また、関心を示した12社の企業の共同購入ということやレンタルで貸すことも検討された。しかし、どれも実現していない。

そこで最近あがった案が、米国デルタ航空かメキシコのアエロメヒコ航空にオファーし、企業経営者や役員の使用、あるいは結婚式披露宴でこの専用機を利用して移動してもらうという案であった。

しかし、コロナ禍で資金難にあるアエロメヒコ航空では専用機を購入することを検討するような余裕は現状ない。デルタ航空もアエロメヒコ航空の負債の一部を投資資金として負担する意向はあったが、アムロが提案しているようなビジネスは採算には乗らないと見ている。提案を受けた他社でも検討しているようなしぐさは儀礼的に見せてはいるが、それをビジネスとして考えている企業は皆無だという。

航空業界の専門家フェルナンド・ゴメス・スアレス氏は民間航空会社が受け入れるには難しい提案だと判断している。民間航空会社ではアムロが提案しているようなビジネスを受け入れられる部門がないというのが理由だ。

「景気の良い時代であれば新しい事業としてそれが考えられるが、今のコロナ禍によるパンデミックの影響下ではそのようなビジネスに投資してもそれが採算の取れるものになるということはまったく不透明である」と同氏は述べた。(「エル・パイス」7月13日付から引用)。

使用しなくなって既に2年が経過しているが、この専用機を処分できないことに対して、アムロは大統領に就任した2018年12月からこれまで1億1000万ペソ(6億円)の支出があったが、2億ペソ(11億円)〜3億ペソ(16億5000万円)は節約できたと指摘している。仮にそれを使用していれば節約した金額の2倍から3倍以上の費用が掛かっていたであろうことも付言した。(地元紙「エル・エコノミスタ」3月5日付から引用)。

アムロが昨年7月にワシントンを訪問してトランプ前大統領と会談した際にも民間航空機でワシントンに赴いた。元々、アムロは外遊することが余り好きでないようで、いつもマルセロ・エブラルド外相が彼の代理として外遊している。エブラルド外相はアムロの後継者として次期大統領候補になる最も可能性の高い人物である。