「お金・遊ぶ時間・体力」が人生で全て揃うタイミング

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

次のツイートが大きな話題を呼んでいる。

まさしく人生の本質を現す一枚の画像と言える。若い頃は時間と体力はあってもお金がない。社会人になるとお金と体力があっても遊ぶ時間がない。高齢者になるとお金と時間があっても体力がない。人生の多くの時間はこの3つが揃うタイミングが極めて短く、下手をすると一生揃うタイミングを得られない人もいるだろう。

iryouchin/iStock

お金・体力・時間というのは、それぞれ人生における資産である。そして時を経て年齢を重ねていくと、この資産は変遷していく。

人生で3つすべてが揃うタイミングは?

筆者が考える、この3つの資産が人生で最初に揃うタイミングは大学生だろう(寝る間も惜しんで勉強する忙しい学生も世の中にはいるが…)。

たとえば筆者の経営する会社で雇っているアルバイト学生がこれにあたる。彼は私立文系の4年生ですでに就活で内定を得ており、「大学には週1行けばいい。今のうちにバイトで稼ぐ」といい、卒業前に旅行を計画しているという。彼には体力も時間も、そしてアルバイトで使えるお金も潤沢にあるように思える。

「大学生も絶対的な資金は少ないのでは?」という反論もありそうだが、多くの大学生は独身で余暇資金を自分のためだけに使うことができる立場と言える。それ故にこの場合の資産の絶対量は問題にならない。3つの資産が全て揃うこのタイミングは極めて短く、多くの人は社会人になった4月から、いきなり時間の自由を失ってしまう。

その次に人生で3つ揃うタイミングは、一体いつやってくるだろうか?人によっては、もはや永遠に来ないかもしれない。そう考えると、人生の儚さを感じずにはいられない。

だが人生を最も豊かにするのは「感受性」だ

冒頭に取り上げた3つの資産に、4つ目を追加させてもらうなら、「感受性」が挙げられるのではないだろうか。多くの場合、感受性は20代前半までの若い時期にしか備わっていない。そして筆者はこれこそが最大の資産であると考える。

食を楽しむ上では、食材、調理の腕、雰囲気、調味料など様々な要素で味わい深さが決まる。中でも最大のインパクトは「空腹」であろう。どれだけ良い料理が出てきても、満腹状態で楽しめる人はいないからだ。よくある話で長い期間、刑務所に収監された人物のエピソードが取り上げられる。釈放された後にお寿司やデザート、濃い味付けのラーメンを食べ、涙が出るほどおいしく感じたという話だ。あれは、長い間舌が生物や甘み、塩気のある味付けに対して空腹状態、つまり飢餓感があったからである。まさしく空腹に勝る食材は存在しないことがわかる話だ。

この話と人生の味わいは通ずる部分がある。人生を決定する最大の要素は時間やお金より、「感受性」という「心の空腹状態」と言えるだろう。

若い頃に挑戦することの重要さ

感受性は若い頃にのみに持ち合わている。それ故に若い頃にどれだけビビッドな経験をするかが、その後の人生を大きく左右してしまう。

若い頃に体験した海外旅行は、それまでの常識が天地がひっくり返るような衝撃を受ける。筆者は10代の終わりに単身、アメリカ旅行へ出かけた。英語はひとかけらもわからず、勢いだけで出かけたが、見るもの触るものすべてに心臓の鼓動が早くなるような感動を味わった。その時の感激が忘れられず、のちの英語力取得や米国大学留学に繋がり、今は英語学習ビジネス起業へと続いた。英語や海外にまつわる一連の思考、行動の源泉は若き時期の体験にあったといっても過言ではない。若い時期に考えたり、行動して体験したことはその後の人生を決めてしまうほどの大きなインパクトがある。その正体こそが感受性なのである。

だが、ある程度人生経験を重ねた上での海外旅行になると、それほどの新鮮な感覚を受けないという人もいるだろう。海外旅行で大きな衝撃を受けた筆者だが、30代になってからの都心への海外旅行はそこまでのインパクトはなかった。「どの国も同じようなブランドショップが並ぶ都市と、便利なインフラ整備、多様な人々が行き交う点では何も変わらないんだな」という、慣れ親しんだ東京の都会機能への既視感というか、都市の機能性パターンが透けて見える気がしてしまい、大きな感動を覚えることはなかったのだ(故に海外旅行における最大の醍醐味は、地方へ遊びに行くことにある)。

お金は後から稼ぐことができる。今は忙しい人もいつかは自由な時間を得る時がくる。体力は努力で維持できる。この3つの資産が重なるタイミングが、もっとも人生で充実する可能性はある。その状態の獲得を目指して努力する意義はあるだろう。だが、忘れてはならない最も大きなファクターは感受性だ。どれだけお金と時間を潤沢にかけた体験をしようとも、感受性が枯渇してしまっては、もはやそこから何も得られるものはない。そして感受性の賞味期限は、寿命が伸びた現代においても極めて短い。お金はなくとも、若い内に感受性を育む経験ができるか?その後の人生を決めるのは、この点にあるだろう。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。