ユーチューバーは、なぜ炎上騒ぎを繰り返すのか?

先週ネット上で話題になったのは、有名なユーチューバーが生活保護を受けている人たちに対する差別的な内容をユーチューブで配信し、炎上した事件でした。

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私は内容に関しての是非を語る立場にはありませんが、なぜこのような炎上騒ぎが繰り返されるかについて、自分なりに考えてみました。

ユーチューバーのような、コンテンツを配信する人は、もともと自分の専門分野を持っているはずですが、人気が出てくると専門分野以外に関しても配信することが求められるようになります。

難しいことをわかりやすく説明するのは、一見簡単そうですが、そのわかりやすさの裏には、膨大な知識と情報の蓄積が必要です。

専門外の内容を語るためには、本を読んだり専門家から情報収集をして、コンテンツを組み立てていくことになります。しかし、専門外の内容を短期間で付け焼き刃で身に付けても基本ができていなければ、根本的に誤った方向に向かってしまうリスクがあります。

テレビのコメンテーターでも、弁護士が大雨による土砂災害について語ったり、医者が最近流行の音楽について意見を述べたりするのを見たりします。経験豊富なコメンテーターは、自分の専門分野以外は無難なコメントに終始し、馬脚を見せないように慎重に対応しています。

ところが、ユーチューブのような登録者数やアクセス数を激しく競っている媒体になると、毎回制作するコンテンツが視聴者にリアルに評価されます。

無難なコメントを配信しても、アクセスは伸びず、視聴者が離れていくリスクが出てくるのです。

こうなると、自分の専門外の分野であっても、旬のテーマに積極的に参戦し、過激な内容でコメントしたくなってしまう。そしてそれが、無知で的外れな内容となり炎上につながってしまうのです。

また、「炎上商法」と呼ばれる意図的な炎上騒ぎを引き起こすインフルエンサーも存在します。あえて極端な内容を発言し、賛否両論を引き起こすことで、注目を集めアクセスを稼ごうという過激なマーケティングです。

しかし、国際政治、宗教、人権問題、労働マーケットといった分野には、極めてセンシティブな内容が含まれています。

門外漢の人間が、生半可な知識で安易に意見を発したり、炎上狙いでコメントすると、今回の事件のように想像以上の大きなダメージにつながり、活動休止に追い込まれたりしてしまうのです。

大きなリスクがあるとは言え、世間の注目を浴びなければ、すぐに忘れられてしまう厳しい競争環境が変わらない限り、有名人やインフルエンサーの炎上騒ぎは、これからも繰り返されると思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年8月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。