世界のジェンダー・ギャップ指数:日本120位は間違い?(屋山 太郎)

会長・政治評論家 屋山 太郎

世界経済フォーラム(WEF)と言う団体がスイスにある。この団体は1971年に誕生し、毎年各国の経済・社会の実情を分析している。長く続いているから信用はあるのだろう。しかし分析結果の中の「ジェンダー・ギャップ指数」というのが毎年気になって仕方がない。ジェンダー・ギャップというのは各国の女性の地位を示したもので2021年の日本の指数は120位。ジェンダー格差が少ない1位から5位まではアイスランド、フィンランド、ノルウェ―、ニュージーランド、スウェーデンとなっている。北欧諸国が高いのは女性の経済進出や政治参加で非常に高いスコアを示すからだという。日本も目下、女性の共働きや組織内での地位向上を目指しているが、社会参加が少ないの一字をもって女性の地位が低いと決めつけるのは間違っていないか。

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政界では結婚して同姓になると夫に帰属するようになる。従って「夫婦別姓」にせよ、との議論がある。しかし夫婦別姓が何を生み出したか、中国を見てみよう。中国は夫婦別姓のせいでもないだろうが、「妻は敵なり」という言葉が歴として存在する。徹底した男社会であって、他家族から嫁いできた嫁は夫とは別室で寝る(岡田英弘氏)そうだ。夫が寝言で家の財産額を喋るかもしれないと恐れるからだという。財産分野の方式は有史以来「諸子均分相続」と言って、男子だけが均等に相続する。これを何百年も繰り返せば、同姓の男社会が肥大化する。これを宗族(そうぞく)と言って、忠公が入り込む余地のない同族社会が出来上がる。

この中国が常に日本より上という位置づけが不可解だ。かな文字使用により日本の婦女子が文章を書くようになったのは10世紀である。11世紀にかけて女性により「源氏物語」「枕草子」が書かれている。

田辺聖子氏が書いた「姥ざかり花の旅笠」という名著がある。1840年代に北九州の商家の夫人が4人集まって伊勢神宮をお参りする話だ。4人とも筑前地方をリードした歌人伊藤常足の門人で、旅行中に歌でやり取りし、帰郷後は歌集を出す優雅さである。女4人と荷物担ぎの男2人だけで旅ができた。

日本では伝統的に旦那が働いて、夫人が家庭を守るのが普通だった。目下は共働きを奨励しているから“習慣の変化”の時代だが、これまで女性はそれほど蔑まれていたのか。欧州に駐在してよく分かったことだが、共働きのせいか、北欧を含めて多くの家庭では給料を夫婦別々に管理している。それに比べて日本は財布を握っているのはカミさんだ。亭主はカミさんから小遣いを貰って暮らす。夫の小遣いの額を調査した資料(ITmedia ビジネスオンライン)によると、ロンドンでは年収の12%、ニューヨークでは10%、東京近郊では最も低く6%だった。

家族の中で地位が断然高いのは財布を握っているカミさんだ。日本120位はおかしい。

(令和3年8月18日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数


編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2021年8月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。