東京の病床は本当に切迫しているか

永江 一石

東京は軽症者をどれくらい入院させているのか、他府県の事例から推測する

すでにピークだと思われる証拠に高止まりしている東京の新規陽性者数。


実効再生産数も1ちょいをずっと続けています。
新規陽性も高止まりしまして増えたり減ったりしてまして、もう爆発的には増える段階ではありません。

ただしメインのファクターXを失い、従来株の数千倍のウイルスを放出するデルタ株の感染力は凄く、一気にピークアウトはなかなかしてくれない模様です。ただし


死者はこのとおり激減しています。

経済を全解放して普通の生活に戻っている欧米と日本の1日の新規陽性者数と(死者)を比較しますと・・・
※人口合わせてあります
日本 20000(30)※コロナ死以外を多く含む
米 40000(300)
英 60000(200)
仏 55000(200)
伊 15000(130)

10倍も違う死者数の違いはたぶんコレです。死者数が多かった時は致死率も大差なかったが、激減すると死ぬのは肥満体ばかりになって明確な差が出てきたと思われます。

何度もいいますが欧米基準ならとっくにコロナは終わっているのです。
違いは軽症も入院する過剰医療と国民がインフル程度の主に高齢者の死者を許容するかどうかにかかっています。
どうして欧米では医療崩壊していると全く言われないし、日本の7~10倍の死者が出ているのに社会が許容しているのか。ひとつは「日本は軽症者をムダに病院が入院させている」という事がよくいわれています。

救急医療の現場はクレーマーのおかげで混乱していないか

また、

【独自】都内のコロナ救急要請 病院見つからぬ例多発 6割搬送せず

という報道も、6割は搬送されている訳で、残りの4割は本当に搬送されるべき中等症II以上だったのかが全く分かりません。軽症だけど「怖い、怖い」って騒いで救急車呼ぶ人も相当に多いと思いはずでしょ。日本は救急車が無料だから気軽に呼べるということもある。もともと軽症なのにタクシー代わりに救急車を呼ぶことは以前から問題になっていた。米国は有料で300~500ドルだから軽症で呼んでいたら大変だから呼ばないのである。

平成29年の内閣府の調査

「救急車で行った方が早く見てもらえる」
「診察時間外だから」
「症状が重いかわからない」
「交通手段がない」 タクシー呼べよ

有料なら自分で行きますよね。救急車は1回あたり45000円が使われて我々の税金で賄われます。


ごねるヤツ、2割以上

こちらは第一生命の調査


年代が低い人や世帯年収の低い人では、救急車の利用に際して受益者負担を受け入れにくい傾向

M3の医者へのアンケート

救急の現場では2割くらいの安易に救急車を呼ぶ層のおかげでかなりの負担がかかっている事が分かります。なかにはたいしたことなくても帰りも送れとかいうやつもいるそうです。コロナで救急搬送が必要な場合、医師が訪問して判断した上で呼ぶ仕組みがないと大混乱して本当に必要な患者が入院できない可能性が十分ありますよね。

重症と中等症の割合はどのくらいか

軽症者を入院されているのではないか疑惑については、ほとんどの都道府県が中等症を公開せず軽症と一緒にしている。そこてぜ公開している都道府県から中等症が重症の何倍いるかを試算してみる。

新潟県

中等症は重症の5倍前後〜最大9.4倍 入院総数は222人なので 軽症・無症状は176人(入院の80%が軽症・無症状)

愛知県

中等症は重症の6.4倍。無症状・軽症者は373人入院(入院の60%が軽症・無症状)

神奈川県

中等症は重症の5.4倍 無症状・軽症者は91人入院(入院の6%が軽症・無症状)
神奈川は本当に切迫していると思われます。

茨城県

中等症は重症の10倍 無症状・軽症者は128人入院(入院の30%が軽症・無症状)

中等症は重症の5倍から最大でも10倍と考えるのが良さそうです。

東京は無症状・軽症をどれくらい入院させているか

東京は無症状~中等症を分けて発表していません。

東京都の重症者は国基準だとだいたい20%増しくらいになります。東京都は「国基準なら東京の重症はこうなる」と発表していますが誰でもデタラメとわかる数字です。

東京都が発表する「国基準に合わせると東京の重症はこれくらい」が大盛り過ぎて笑えるくらい

東京都「国の基準だと東京の重症者はこれくらい」が大盛り過ぎる
東京都のいう「国基準に合わせたら東京の重症者はこれくらい」の仰天数字 知ってる方は知っていると思いますが、東京都の重症者の基準は国と少し違って厳しめです。 とあります。 東京都の基準のほうがまともなのですが、なんども厚...

そのデタラメは無視して計算すると

重症は275×1.2=330
中等症は1650~3300人になります。

そうすると無症状・軽症の入院は240~1835人になります。つまり
入院の6~48%が軽症・無症状ということです。

しかしここで問題があります。中等症には「中等症I」と「中等症II」があり、

救急科専門医は「中等症Iでは必ずしも入院を必要としない」としています。この比率が分かりません。それを考えると東京も中等症II以上の入院は過半数はとてもじゃないけどいないと思われます。

なぜ中等症IIなのに受け入れ拒否されるのか

ひとつは前期のように。無料だから気軽に救急車を呼ぶ人がけっこういる疑惑です。救急車も振り回され、病院側も本当にどの患者が緊急性が高いのか分かりづらい。クレーマーなら大げさに騒ぎたてて入院したがるのは容易に想像できます。しかもコロナは入院費も全て無料です。5類になればそうはいかないので簡単に入院させろは減るでしょう。

もうひとつは、↑の「実は軽症者でベッドが埋まっていてそこの対応に追われている」という懸念です。

実際に神奈川を除くとほとんどの都道府県でまだかなりの軽症を入院させているようです。軽症を強制退院させればベッドが空くわけで、それがそのまま中等症II以上に使えるかどうかは別にして対応するスタッフの数はかなり浮きます。それを中等症II以上に充てれば良い。それをしないで儲かるからと軽症でベッドを埋めているのはおかしいし、自分よりもっと重症がいるのに「怖いから」と居座る患者もモラルに欠けるでしょう。

各都道府県とも、入院患者を「無症状・軽症」「中等症I」「中等症II」「重症」に分けて発表してくれないことには本当に切迫しているのかどうかさっぱりわからない。入院の60%が無症状、軽症なのに「切迫してる」と言われても「なに。それ」と思うだけだし、そう言われないためにあえて軽症と中等症までを一緒に計上しているなら国民に負担を強いること自体がおかしいのです。

年のせいか最近コレがあるのでAmazonの日替わりセールで買いました。

voyata/iStock


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2021年8月20日の記事より転載させていただきました。