高級中華料理店が「松茸ラーメンランチ」を提供する訳

お店がお客さんを選ぶという究極の営業形態で人気を集める会員制の飲食店を今週のブログで取り上げました。

そこまで極端ではなくても、これからの飲食店は、移り気な不特定多数の人たちを相手にするより、少数の常連客を重視する方向に向かうと予想します。その方が経営が安定するからです。そのためには、リピート利用してくれる固定ファン作りが重要になってきます。

南青山にある中華料理の有名店4000 Chinese Restaurantのオーナーシェフの菰田さんから松茸ラーメンの限定企画があると教えてもらい、友人達と出かけてきました。毎年開催している期間限定のお昼のサービスです。

最初に松茸の入った小籠包、続いてメインの松茸ラーメンが出てきます。トッピングに麺が隠れる位の大量の松茸がちりばめられ、松茸の香りが湯気と一緒に広がります。

松茸の香りと、シャキッとした食感に上品な出汁の味のシンプルなラーメンが絶妙にマッチし、数年ぶりに、ラーメンを完食してしまいました。

ラーメンの後は、さらにフォアグラとトリュフの小籠包、そしてデザートでランチの特別コースは終了です。

参加費用は6000円とランチとしては決して安い値段ではありませんが、お店からすれば、これだけの材料費や人件費も含めると、利益はほとんどないと思いました。

それでもこのようなイベントを継続して開催しているのは、お店に来てもらうきっかけにして、お店のファンを増やすのが目的ではないかと思います。

普段は敷居が高くて、なかなか入れない高級中華料理店です。いきなりディナーの予約をしてくれる人はあまりいません。

イベント性の高いおいしいランチを食べて、オーナーシェフの菰田さんと写真を撮ったり話をしたりするうちに、通常営業の時にまた来ようと思うようになるのです。

コロナ禍で飲食店はどこも集客に苦労しています。特に高級店になると、一部の寿司店のような少人数しか入れない人気店を除き、予約で満席にする事は簡単ではありません。

そこで「価値>価格」なランチで、特別な経験をしてもらい、顧客層を広げる。そのためには、採算よりも顧客満足度を高めることを第一目的にして、イベントを開催する必要があるのです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年8月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。