第16回パラリンピック東京大会が24日、国立競技場で天皇閣下をお迎え、開会した。世界161の国と地域から4403人のアスリートが参加し、競泳、卓球など22競技539種目で競う。東京夏季五輪大会と同様、競技は無観客で行われる。東京のパラリンピック開催は1964年以来で2度目。夏季パラリンピック大会を2回開催した都市は東京が初めて。東京はそれを誇ることができるだろう。
当方は夏季五輪大会と同様、オーストリア国営放送の中継で式典を追った。五輪組織委員会の橋本会長の開会あいさつ後、国際パラリンピック委員会のパーソンズ会長は力強いメッセージを投げかけていた。ホスト国日本に感謝して、「ありがとう」と日本語で挨拶、そして選手団に対しては「次は君たちが日頃の成果を力いっぱい発揮する番だ」と呼びかけ、選手たちを激励した。長くもなく、適切なメッセ―ジだった。
パラリンピックは、1948年7月28日、ロンドンオリンピック開会式と同日に、イギリスのストーク・マンデビル病院で行われた競技大会が初めてという。大会は戦争で負傷した兵士のリハビリテーションが目的だった。バチカンニュースによると、バチカンは1905年から1908年にかけ、障害者のスポーツ選手が参加した大会を開催している。バチカンがパラリンピックを最初に開催したという。
さて、新型コロナウイルス感染が世界的に広がっている時、パラリンピックを開催することで様々な意見も聞かれたが、開幕した以上、感染が拡散しないように最善の対応が願われる。関係者の一層の努力を期待したい。
開会式を中継していた放送記者が「世界人口の15%は身体障害者だ」、「障害者を支える『We The 15』という運動がある」という。生まれた時から身体傷害者である人から事故や戦争で体の一部を失った人もいる。さまざまな理由で不十な体となった人が世界人口の15%もいるとは知らなかった。そのハンディを克服しながらスポーツに取り組むわけだ。それだけでも大変だ。
ところで、当方が住むオーストリアからは24選手が今回参加する。メダルの獲得が期待されている選手もいて、国民の関心も高い。24選手のうち10人は過去の大会でメダルを獲得済みだ。11人は今回の東京大会がデビューとなる。
オーストリアは先の東京夏季五輪大会で7個のメダル(金1、銀1、銅5)を獲得したが、同国パラリンピック委員会(OPC)はマリア・ラウフ・カラト会長は、「メダル獲得のチャンスはある。コロナ感染で厳しい状況だったが、選手たちは十分訓練を重ねてきた」と期待している。前回リオ大会(2016年)では9個のメダル(金1、銀4、銅4)を獲得した。
バチカン日刊紙「オッセルヴァトーレ・ロマーノ」記者は、「パラリンピックは今日、障害者に対する全く異なった認識を広げる上で貢献している」と報じ、パラリンピックの目的については、「単に大会を祝うことではなく、深刻な障害を抱えるアスリートが命がけで取り組めば何が達成できるかを示す機会だ。これはスポーツの世界だけではなく、全ての人生にも当てはまる」と強調している。
フランシスコ教皇は1月2日のイタリアのスポーツ新聞「ガゼッタデロスポーツ」のインタビューで、「パラリンピックに語るべきドラマあるとは誰も思わなかったが、参加したアスリートたちは生き生きとしたドラマを持っていてそれを表現していることに感動した」と語っている。
第32回東京夏季五輪大会では女子自転車競技ロードレースでアンナ・キーゼンホファー選手がオーストリアに2004年のアテネ大会ぶりの金メダルをもたらした。オーストリア国民は大喜びとなった。同選手はプロの自転車競走選手ではなく、大学で数学を教えている学者であり、他の選手からはノーマークだった。その彼女が総距離137kmのロードレースで他のプロ選手を圧倒し、大差をつけてゴールしたのだ。米CNNも同選手の活躍を大きく報じていた。第16回東京パラリンピック大会でも同じような「ドラマ」が多数誕生することを期待したい。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年8月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。