菅首相に欠けている政治家に必要な「3つのS」とは何か

田原総一朗です。

東京オリンピックが閉幕した。開催前は圧倒的に、「中止」「再延期」という意見が強かった。たとえば朝日新聞の世論調査(5月15、16日)では、「中止」または「再延期」すべきという意見が、あわせて83%を占めた。

しかし政府は、「開催すれば国民は盛り上がり、日本選手が金メダルを取れば気持ちも変わる。やってよかった、と世論は変わる。支持率もアップするだろう」と考えていた。たしかに、いざオリンピックが始まると、テレビ中継は高視聴率、国民はおおいに盛り上がった。

そして、「開催してよかった」という意見は増えた。同じ朝日新聞の世論調査(8月7、8日)では、
オリンピック開催は「よかった」が56%となり、開催前と逆転したのだ。しかし、内閣支持率については、読みが大きくはずれ、28%。発足以来初めて30%を切ってしまった。他の調査でも、NHKが29%、共同通信が31%と、30%前後だ。

支持率低下の要因は、当然、新型コロナウイルスの感染爆発だ。オリンピックを開催しても、感染者が抑えられていれば、支持率はここまで低下しなかっただろう。

政府は8月20日から、緊急事態宣言の対象を7府県加え、13都府県に拡大。「まん延防止等重点措置」は、10県を加え、16道県となり、9月12日までの延長を決めた。ただし、規制の内容としては、これまでの繰り返しであり、緊急事態宣言の効果はもはや感じられない。

自民党総裁の任期満了は、9月30日だ。しかし菅さんとしては、その前の衆議院解散、総選挙をもくろんでいた。ある程度議席数を取って、総裁選にのぞみ、無風当選といきたかったに違いない。

だが、この支持率では、解散には当然踏み切れない。自民党としては、任期満了で総裁選をすべきだとした。菅さんとしては、ワクチン頼みである。10月いっぱい、遅くても11月初めまでには、希望する国民すべてに、2度目の接種を終えたいと考えている。

しかし、多くの国民がワクチン接種を終え、感染率が低下したとしても、国民の支持は戻るだろうか。菅さんの話には、あきらかに力がない。

政府に近いある有識者が、こう明言していた。「菅さんには、3つのSが欠けてるんじゃないか。つまり、説明力、説得力、そして、責任能力がない」これは政治家として、致命的ではないか。菅さんはこの言葉をどう聞くだろう。