都市封鎖のホーチミンからの報告

知人が先月、日本からベトナムに向かった。ホーチミン市の現地会社に着任するためだ。奥さんはベトナム女性。その奥さんの故郷の国で仕事をし、基盤を作るためにホーチミンに向かったが、ベトナムでは新型コロナウイルスの感染が再び拡大し出したため、入国も予定より延期、やっと到着すると2週間、即ホテルで隔離されたという。フェイスブック欄で掲載された数枚の現地写真を、本人の許可があったのでコラム欄で転載する。

▲軍が出動し、市民の移動を監視、市内には市民の姿がほとんど見られない(写真はホーチミン駐在の邦人から提供)

ホーチミン駐在の邦人から提供

ホーチミン駐在の邦人から提供

知人はフェイスブックの中で、「8月23日午前0時~9月6日(時間不明)まで、ホーチミン市における社会隔離措置の一部がさらに強化され、外出等に対して、より一層厳しい制限が課される事となった。軍も本格的に投入され、これまでにない物々しい雰囲気である。当初の予定では、入国後の隔離(ホテル+自宅)は8月25日で終了、翌日26日から出社予定であったが、難しくなった。出社は早くて9月6日か7日までずれ込む事が確定。引き続き自宅隔離状態となる」という。

ロイター通信は、「ベトナム政府は23日、新型コロナウイルス流行の震源地となっている最大都市ホーチミン市で厳格なロックダウン(都市封鎖)を実施するため、軍隊を派遣した」と報じていた。知人はそれを追認していた。

それに先立ち、ホーチミン市Covid-19対策指導委員会は8月20日、感染防止の隔離措置を公表している。在ホーチミン日本国総領事館が通達した内容を以下に紹介する。ちょっと長いがホーチミン市のコロナ対策の深刻さ、徹底さが理解できる。

「8月6日付政府議決第86/NQ-CP号に従った市Covid-19対策指導委員会の8月15日付計画第2715/KH-BCD号に基づき、9月15日までに市内の感染状況を抑え込むという目標の実現のため、市は首相指示第16/CT-TTg号の精神に則り、社会隔離措置の一部措置の実施を8月23日0時から9月6日まで強化する」

1 社会隔離の徹底的実施について

(1)各家庭、各町内、各坊、各村等の地域単位での厳格な隔離を実施する。各地区単位で特別対策チームを設立する(特にオレンジ/レッドゾーン)。その任務は、社会隔離措置の実施状況確認、住民への呼びかけ、広報等(その他省略)。住民向けの市場への買い出し、社会安生の実現。

(2)交通参加が可能な対象の点検及び縮小、
ア、引き続き市民の移動を管理する(時間帯、対象等)。公的機関の職員の携行する証明書等の確認をガイダンスする(省略)。(公安局が実施に向け調整する)
イ、公的機関職員を在宅勤務とする方式を適用する。感染防止対策に参加、又は、緊急の業務の解決を行う場合に限り、「3つの現場(勤務、飲食、宿泊)」若しくは交代勤務制を適用する。(内務局が実施に向け調整する)
ウ、各家庭への商品の配達業務において配達員(シッパー)の活動の管理を行う。(商工局が実施に向け調整する)
エ、トゥードゥック市及び各区郡人民委員長は、(グリーンゾーンの)住民が週に1回市場に いけるよう調整を行う。

2 社会安生への適切な配慮

(1)2回目の支援物資の給付以降も困窮する対象に対し、十分な補充支援を行い、世帯主への支援措置を実施する(電気水道料金の免除、減額等)。(労働傷病兵社会問題局が実施に向け 調整する)

(2)200万セットの支援物資を準備し、困窮者を取り残さないという原則を保証する。栄養のある食事を困窮するFO患者に提供する。(商品の受領 支援センターが実施に向け調整する)

3 感染症の抑制 制圧、死亡者の最小化のための措置の強化について

(1)検査業務  8月15日付市人民委員会の計画第2716/KH-UBND号に従った市内における検査業務の実施に関し、保健局はトゥードゥック市及び各区郡人民委員会と連携し以下の内容を強化する。
ア、レッドゾーンの全ての住民に対し、クイックテストをプール方式で実施する。
イ、以下の一部対象に対する検査(7日に1回)を追加する。スーパーマーケットの店員、物資輸送のドライバー、薬局店員、都市環境会社ゴミ収集業者等公益業務に携わる社員、検問所で勤務する者、感染防止業務に携わる者、ガソリンスタンドで勤務する者。

(2)ワクチン接種
ア、ワクチン接種を加速する(以下省略)
イ、ワクチン接種に対する社会世論を方向付けるべく広報 宣伝する(以下省略)

(3)FO患者の自宅隔離
ア、400の移動診療所を設立する(以下省略)
イ、10万袋の薬品キットを自宅療養中のFOのために準備する

4 商品の供給
商工局は、市の既存の配給システムに基づき、商工省の特別チームと連携し、十分な商品の提供を保証するよう調整し、特に市にとって必需品となる物資を確保する。

5 企業の活動
引き続き企業を監督 検査し、8月15日付市Covid-19対策指導委員会計画第2715/KH-BCD号の要求を担保できる場合のみ(企業は)活動を許可される。(商工局に委任する)。

知人は、「 今回の危機を乗り越えるために、ベトナムがいかに国を挙げて懸命に取り組んでいるか、少しは伝わると思う」と述べている。

ウイーンに住んで3回のロックダウンを経験した立場から見て、上記の措置は詳細できめ細かい。ホーチミンはベトナム南部の最大の経済拠点だ。人口は2019年の段階で900万人。オーストリアの総人口に当たる。その大都市のロックダウンを問題が生じないように慎重に実施することは大変なことだ。

ハノイ発ロイター通信23日によると、ベトナムの累計感染者は34万8000人、死者は少なくとも8277人。ホーチミン市とその周辺の工業地帯では、4月下旬以降、デルタ株の流行で感染が急増している。保健省によると、ホーチミンの累計感染者は17万6000人、死者は6670人で、感染者は国内全体の50%、死者は80%を占めている。同国でワクチン接種を完了した人は、人口の1.8%に留まっている。

ベトナム政府は7月初旬にホーチミンに移動制限を導入したが、感染拡大に歯止めがかからず、制限措置の施行が不十分との見解を示していた。政府は今月20日、同23日からロックダウンを厳格化すると発表し、食料の購入も含めて外出を禁止、軍が市民を支援すると説明していた。

政府は20日、国家備蓄から13万トンのコメを放出し、兵士たちが23日、ホーチミン市民にコメ、肉、魚、野菜など食料を届けているという。政府は、医療体制の逼迫を緩和するため、ここ数週間で医師・看護師1万4600人をホーチミンと近隣の州に追加派遣。軽度か無症状の患者は自宅隔離を求められている。

以上、知人の情報とロイター通信の報道をまとめた。知人からの3枚の写真を見ると、軍が市内の至る所で監視し、市民の姿がほとんど見られない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年8月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。