1月~5月の超過死亡が増加していることが報告されました。この記事では、超過死亡は5月に特に多く、この増加は異例と解説しています。また、その原因を、「新型コロナによる死亡」と「医療逼迫によって増えたコロナ以外の死亡」が原因であると推測しています。私は、この推測には大きな疑問を感じるため、独自に検証してみることにしました。
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まず、2021年6月の人口動態統計速報を確認してみます。
去年と比べて、5月~6月の死亡者数が増加しています。
次に、比較するために、2020年(令和2年)6月と2018年(平成30年)6月のデータを確認してみます。
5月~6月の死亡者数は、前年と同じように減少しています。
平成30年も、5月~6月の死亡者数は、前年と同じように減少しています。
過去10年のデータを確認してみましたが、ほぼすべての年において、5月~6月の死亡者数は、同様に減少しています。2021年の5月~6月の増加は、異例なのです。
5月~6月の特殊要因を確認するために、第3波、第4波、ワクチンの開始時期をグラフで示しておきます。
VBAにより、月別接種後死亡者数グラフを作成しました。
高齢者の接種開始後、接種後死亡者は急増しました。
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感染症疫学センター では、超過死亡者数を算出する場合に、FarringtonアルゴリズムとEuroMOMOアルゴリズムを使用しています。 この算出方法は、私には難易度が高いため、その使用は断念しました。 代わりに、過去10年の死亡者数の平均を予測死亡数とし、 95%予測区間 を計算し、「速報の死亡者数より予測区間の上限値を引いた数値」を、超過死亡者数の近似値としました。 この近似値を用いて議論を進めることにします。
過去10年間のデータを用い、近似値を算出しました。データ年数を10年としますと、95%予測区間の幅が狭まり、超過死亡者数近似値は、データ年数5年のそれより大きな数値となります。死亡者データには、速報と概数があり、扱う範囲が少し異なります。概数の方が望ましいのですが、公開は5か月後です。つまり、5月のデータは10月にならないと公開されません。そのため、今回は速報のみで計算しました。
各年の月別の死亡者数は、人口動態統計速報より取得し、月別のコロナ死者数は、厚労省Webサイトより取得しました。月別接種後死亡者数は、ファイザー製死亡症例一覧よりVBAに自動集計(若干誤差有り)したものに、モデルナ製の死亡者数を加えました。
算出の結果を、以下の表にまとめました。
一見して、5月~6月の超過死亡近似値が目立ちます。このなかに、どのくらい「本当の接種後死亡者」が含まれているかを推測することが、考察の肝となります。
話が長くなりますので、前編はこれで終わりとします。 考察は、後編で続けます。
(後編につづく)