コロナ禍を通して、日本では自分たちの牙城・権益を守ろうと躍起になる医師会などエスタブリッシュメントの存在が明らかになったように思う。
中川会長のダブルスタンダードぶりで日本医師会が注目されるようになったが、大きな特徴としては次のような民間病院(開業医)と医師会の密接な関係と影響力であろう。
(1) 外国の状況(病院の多くは公立)と違い、日本では圧倒的に民間病院が多い
(2) 医師会は実質的に開業医を代弁する日本の代表的な圧力団体である
他国と異なり、新型コロナ感染治療に全く関わらない医療関係者まで、コロナワクチンを最初に接種できたことからも、医師会の政治力が透けて見えるようだ。
そしてこの(1)(2)が次の問題とつながっていく。
(3)日本の法体系では医療機関に対して(国や自治体が)強制執行ができない
重症者が増えていくことを前提に対応したくとも、日本の場合、政府や都道府県知事は、民間の医療機関に対して具体的な診療内容を指示、命令する権限はないという。
(4)大半を占める民間病院は、コスト・利益面などから積極的にコロナ治療を引受けない
(5) 上記(2)(3)により、医師会は民間病院・開業医の利益を守るため、積極的にコロナ治療病院・病床の確保には動かない。開業医がコロナ治療に関わるようになる指定感染症1・2類相当から5類相当への変更にも消極的になる。
これらの結果、
(6)日本の病院には病床をはじめ大きなキャパがあるのに、新型コロナ対応病床や重症者用ベッドが極端に少なく、容易に満床状態となってしまう。
さらに輪をかけるのが次の2点である。
(7)マスコミなどが、自宅療養中に亡くなったコロナ患者をセンセーショナルに報道して不安を煽ったこと
この報道により、昨年の春「無症状・軽症患者は、外部宿泊施設又は自宅療養が基本」と厚生省が指針を出していたにも関わらず、医療機関は自宅療養中患者の重篤化や死亡で責任を問われることを恐れ、軽症であっても慎重に入院させるケースが増えたのではないだろうか。もちろん患者自身も不安感が強ければ、軽症でも入院を切望するだろう。
このように入院患者に占める重症者が非常に少なくなる(約1%)のは、データで見ても明らかで、ここ2か月でも減り続けている(*直近1週間は下げ止まっている)。
感染割合からして、残り99%の入院患者すべてが中等症とは考えられないので、入院患者の中に相当数軽症者がいると推測できる。
(8) 医療専門家らしからぬ情緒的コメントで国民の不安を煽る
尾身氏、中川氏など、医療の専門家であり責任ある立場の人間が、少なくともテレビ報道を見る限り、具体的なデータを提示して分析・説明することよりも、報道キャスターと同様「このままでは医療崩壊になる」「人流をとめなければ大変な事態になる」、といった不安を煽るようなコメントを何度も発している。
また、十日ほど前には静岡県病院協会会長も、記者会見で同じような情緒的コメントを述べていた。
「医療破壊」「適切な治療を受けられなければ死ぬ病気」などとインパクトのある言葉を並べ、市民に強く自粛を促し、政策者に代わって「セルフロックダウン」の提言まで行っている。
そして(3)~(8)の流れにより、
(9) 病床が足りない等、「医療ひっ迫」の状態が1年以上も続き、感染拡大で本来最優先に治療すべきコロナ重症患者に手が回らなくなり、矢面に立つ公立総合病院の勤務医が、極めて過酷な労働環境に置かれてしまった。
最近「医療崩壊」なる言葉が安易に使われているが、そもそも通常時でも、病床が満室かそれに近い状態でなければ、飽和状態に近い日本の民間病院の経営は立ち行かない可能性がある。実際身近に「満床」は当たり前に起こっており、これまでベッド待ちや先行予約の経験のある人もいるはずだ。つまり「ベッド使用率」だけ見るなら医療は常にひっ迫しており、医療現場では粛々と対応していくしかないはずだ。
これらのことから、現在の医療崩壊状況を招いた元凶は医師会ではないかと推察できる。ただし、医師会がすべての医師や現場の声を代弁しているわけでないことは、しっかり認識しておき、医師会の代表者・理事や開業医と総合病院勤務医をしっかり区別しておく。いずれにしても国民は「医療崩壊」のツケを払わされていることをしっかり認識しておく必要はあると思う。
「医療崩壊」を防ぐには、短期的には法律を改正して政府・自治体が強制執行できるようにし、指定感染症1・2類から5類への変更を行うことであろう。
そして中・長期的には、民間病院の経営事情を踏まえた構造改革(効率化・統合など)を行い、公立の病院・新型コロナ専門病院(重症者専用の病棟含む)を増設することなどが考えられる。
編集部より:この記事は投稿募集のテーマで寄せられた記事です。アゴラでは、さまざまな立場の皆さまからのご意見を募集します。原稿は、アゴラ編集部(agorajapan@gmail.com)にお送りください。