スペイン製モデルナのワクチン製造業者ロビ社の株は1週間でおよそ840億円の下落
ロビ社の今後の上場継続に疑問が持たれている
スペインでモデルナのワクチンを委託生産しているロビ(Rovi)社への不信は依然継続している。それを如実に示すかのように同社の株価は一時24%まで下落した。同社の現在の時価総額は29億4400億ユーロ(3530億円)で、今回の同社の株価の下落によって7億100万ユーロ(840億円)の損失が発生したという。(8月31日付「エル・コンフィデンシアル」から引用)。
株の専門家の間では同社の今後の上場継続に疑問が持たれるまでになっているという。今回の日本で発生した同社のワクチンに絡んだ問題の解明がロビ社の将来を左右するようになるのは必至だ。
ロビ社への不信につながったこれまでの経緯
ロビ社が製造したモデルナのワクチンから異物が検出され、それを接種した30代の二人の男性が死亡した事件の前後のロビ社に纏わる出来事を以下に記載して行くことにする。(電子紙「ボルサマニア」8月31日付から引用)。
8月26日、スペインで製造されたモデルナワクチンに異物が検出された。厚生労働省は163万回分の同ワクチンの接種を見合わせるように全国に指示。
それを委託生産していたスペインのロビ社の株価は13%の下落。
この時点でモデルナのワクチンが日本で大きく報道されるようになったのであるが、最初の警鐘は既に8月16日の時点で鳴らされていた。全国5か所に配布されていたモデルナのワクチンから39個の小瓶に異物が検出されていたのである。(8月31日付「エルパイス」から引用)。
8月28日、厚生労働省は問題のワクチンを接種していた30代の男性2人が死亡したことを発表。問題のワクチンと死因に直接の関係があるか調査に入った。
8月29日、今回の死因がモデルナのワクチンによるものであるという明白な根拠はないとしたスペイン国立市場証券委員会(CNMV)の声明をロビ社は広報したえ。
8月30日、厚生労働省はモデルナのワクチンにさらに異物が検出されたとして新たに2つのロットのワクチンの接種を控える指示を出した。その結果、全部で263万回分のワクチンが接種の枠から外された。
8月31日、厚生労働省は問題のワクチンが生命の安全性において懸念されるべきものはないという声明を発表した。
この1週間でロビ社への不信は非常に高まり、前述しているように同社の株価は大きく下落した。この事件が発生する前までは同社の株価は65ユーロあたりを維持していた。しかし、この事件が発生してからの株価は一時47.25ユーロまで下がった。(8月30日付「エルパイス」より引用)
今後、同社が信頼を回復するには厚生労働省とこのワクチンの輸入代理店である武田薬品による調査解明に依存して行くことになる。
ワクチンに混入されていたのものはステンレスの破片。その原因は?
9月1日になると、厚生労働省は小瓶の中に混入していたものはステンレスの破片であったことを明らかにし、同省はそれが健康の安全面で危険をもたらすものではないとした。
この発言を裏付けるための調査を行ったロビ社によると、ワクチンが入った小瓶を外側がステンレス製の蓋で密封する際に多数の小瓶が詰まっている生産ラインにおいてテクニカル上の欠陥からそのステンレスの破片が小瓶の中に混入していた可能性があることを指摘したのである。(スペイン「EFE通信」9月1日付から引用)。
それが厚生労働省と武田薬品に伝えられてたようで、今回の同省の発言となったものだ。しかし、これだけでロビ社への不信が回復するとは思えない。