この度菅総理は小生が察するに余りある苦渋のご決断をされたように拝察しています。
菅総理は、歴代総理の中で最も仕事師であると言っても過言でなく、総理になられて直ぐ学術会議の改革に向けた動きから始まり、前内閣から積み残しとなり誰もが手を付けられなかった福島第1原発の処理水の海洋放出の決定、あるいは日本のITの遅れを取り戻すためのデジタル庁の創設、そしてこのコロナ禍でのオリンピック・パラリンピックの遂行、その他に50年脱炭素目標の表明、携帯料金値下げに向けた「アクション・プラン」の公表、不妊治療への保険適用拡大の閣議決定、気候変動サミットでの30年目標の表明と、一年という短い期間に実に数多くの重要な政策案件を手がけられ、どれひとつとっても簡単ではないご決断をされてこられました。総理在任期間は短いですが、仕事は極めて重要かつ大なるものであると考えています。
新型コロナの対応は、後手後手とマスコミは煽っていましたが、状況を知る者はそのようには考えておりませんでした。ワクチン接種が先進諸国に比べて2か月遅れたのは、政府のディシジョンの遅れというよりも、我が国の薬やワクチンの承認制度の問題であり、また、安倍前内閣から引き継いだ指定感染症二類の枠の中で行わなければならないという桎梏(しっこく)をはめられたわけですから、誰がやっても大変で難しい仕事だったと思います。しかし、その中で総理のリーダーシップのもとワクチン接種率は急激に高まり、欧米先進国並みの状況へと突き進んでいます。マスコミがコミュニケーション不足とか自分の言葉で説明しないとか盛んに批判しておりますが、小生は「巧言令色」より「剛毅木訥」が余程良いと思います。
数々の成果を上げてこられた総理がこのような結果になったことは小生として大変残念ですが、しかし菅総理がおやりになったことは、心ある人の記憶に深く残ることだと思います。コロナ禍で様々な問題点が浮き彫りになり、今後はこれら問題点を是正するような方向で次の総理の下で、動いていくことを期待します。
今回のことで小生がたったひとつ良かったと思うことは、菅さんが総理をお続けになられていたら健康を害することにならないかと心配していましたので、総理の仕事から解放され、次に向かって英気を養われるそのような時間ができるということであります。
編集部より:この記事は、北尾吉孝氏のブログ「北尾吉孝日記」2021年9月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。