一年前に書いた総裁候補への批評を再読してがっかり

八幡 和郎

昨年の8月21日に、私はアゴラで「ポスト安倍:岸田・茂木・河野・稲田・菅・小泉の長所と難点」という記事を書いた。いま見てもあまり直すところはないと思うが、今回、候補となっている人たちについての分を再掲、併せて現時点での補足をする。

河野、高市両氏については少ししか書いてないのは、昨年は、有力な候補とみられていなかったからだ。

① 岸田 文雄

自民党の岸田文雄政調会長は、安倍晋三首相の「意中の後継候補」といわれてきた。なにしろ激務で2年勤めるのすら難しいといわれる外相を5年間も務めて安倍外交を支えてきた。

憲法改正では、国民投票で賛同を得られるかが焦点になるが、安倍首相自身も含めて保守派の首相のもとで対決ムードで臨むより、リベラル色が感じられる岸田氏が「やはり第九条は改正するのが自然だ」というほうが確実に勝てそうだ。

ところが、なぜだと言いたいほど岸田氏への国民の支持は低調だ。岸田氏は最近のインタビューで、安倍政治を「分かりやすい説明」や「スピード感」が不足していると評したが、この点で岸田氏自身が、安倍首相より優れているとは思えない。

例えば、前法相の河井克行被告と、妻の参院議員、案里被告の選挙買収事件の発端は、自民党が参院広島選挙区で2議席獲得できる得票が見込めるのに、岸田派が「野党と1議席ずつでいい」と河井排除で理不尽に暗躍したためとされる。その意味で河井氏への同情もかなりある。

岸田氏は衆院広島1区選出の派閥領袖として、地元の混乱の経緯について説明すべきではないのか。

安倍内閣の政治は、満足すべきとはいわないが、官邸主導によって「スピード感」を確保してきた。岸田氏が現在以上にスピードを出すためには、コンセンサス重視という方向にはいかないと思うがどうするのかぜひ聞きたい。

「情熱が伝わっていないということは反省する」

「みなさんの話を聞いて、それを参考にして、改めるべきところは改める」

と月刊誌『正論』(9月号)のインタビューで語っていたが、やはり「首相になったら、こういう改革を断行する」という目玉を持たないと、国民の期待がわいてくるはずがない。田中角栄の列島改造に匹敵するくらい魅力的な看板が欲しい。

【現段階での補足】
私は一年前にはやはり岸田氏がいちばん良いと思って、さらなる課題を書いたつもりだが、一年間、なんの進歩もしてないのが問題。学習能力なさ過ぎ。

② 河野 太郎

河野太郎防衛相は「言うべきことを言う政治家」として人気があり、父親の河野洋平元外相の外交での軟弱ぶりとは好対照だ。ただ、外交の世界では相手をねじ伏せるような言動はリスクが高い。

また、信賞必罰というと聞こえがいいが、十分に吟味しない人事への拘泥が指摘される。一閣僚なら官邸が最後はブレーキをかけるからいいが、「一国のトップとして、大丈夫か」という心配を払拭する必要があると思う。

【現段階での補足】
外交の場で相手国に恥をかかせても国内政治では大衆的人気を得られるが、無意味に相手を怒らせてもいいことはなにもない。それは国内政治でも同じだ。

③ 高市 早苗

高市早苗総務相については、宰相候補としてこれまであまり名が出てないが、女性政治家の中で、重要ポストを最も堅実にこなしてきたことをもっと評価すべきだし、アメリカ議会での実務経験もありもっと注目されるべきだ。

【現段階での補足】
もっと評価されても良いのにと多くの人がいってきた。それが正しく評価されたのは嬉しいことだ。

④ 野田 聖子

中国南シナ海進出で「トンデモ発言」が惜しまれる。野田聖子元総務相は、過去に二度、総裁選出馬を推薦人が集まらずに断念したが、意欲は満々。ただ、南シナ海への中国の進出について「日本は直接関係ない」とトンデモ発言して批判を浴びた。また、配偶者について心配事もあり情報公開すべきでないか。

日本の主要政治家に最近、配偶者や家族について情報公開に消極的な人もいるが、国際常識に反する。安倍首相の昭恵夫人でも批判はされたがむしろ情報は過多なくらい公開している。

【現段階での補足】
配偶者が元ヤクザだから資格なしとまではいわないが、裁判でも認定された事実を認めず、反論するわけでもなくではどうしようもない。

⑤ 小泉 進次郎

閣僚として安倍首相に尽くそうという熱さが欲しい。安倍首相が、小泉純一郎首相時代に、祖父(岸信介元首相)や父親(安倍晋太郎元外相)時代の主従関係など、露も感じさせなかったことを見倣うべきだ。

いまは純一郎ご隠居の若様のつもりかというところがあっていささか非常識だ。逆に言えば、進次郎氏の最大の敵は「父親の生臭さ」だ。

【現段階での補足】
これもなんらの成長も認められず。