河野談話を否定すべきか --- H. S. Kim

安積氏のツイートを引用して河野談話に関するアカデミックな見解を述べたところ(連続ツイートを読んでいない方は最初にそれを読んで下さい)、アゴラ研究所長から記事にまとめるよう要請されたので、一回限定でお邪魔する。

河野太郎氏の総裁選出馬を受け、安積氏は長年続く韓国の慰安婦問題蒸し返しを終わらせるには河野談話を否定するしかないと主張する。これは新しい主張ではなく日本の保守が20年以上繰り返してきたもので、約束を守らない韓国の理不尽さにうんざりする日本人の一人として、その感情に100%同意する。

安積氏は問題を放置せず、論理的に説明すればアメリカ人の理解を得られると考えているようだが、

外交誌Diplomatや米国の主要紙New York Timesなどのコメント欄でアメリカ人とこの問題に関して十数年前から英語で議論してきた者として、それは100%ないと断言する。日本の保守は河野談話を否定することにより、「日本軍が朝鮮人慰安婦を強制連行した」という事実に基づかない主張を韓国人が繰り返すのをやめさせたいようだが、欧米人にとって慰安婦は女性の人権問題で、日本軍が強制連行したのか、親に売られた女性を業者が連れて行ったのかは、どうでもいい。意志に反して慰安婦にさせられた女性がいたのは一次資料を読めば明らかで、旧日本軍が日中戦争・太平洋戦争を始めなければ慰安婦の需要は生まれなかったと欧米人は考える。

日本の韓国併合で多くの奴隷が解放され、教育を受け職業を選択できるようになり、人口が約2倍になったことから、日本の統治は半島人にとって概ね有益だったと言えるが、それは旧日本軍が戦争を始めるまでである。戦争で半島人は日本人と共に辛い経験をして、敗戦を受けてそれまでの日本や天皇に対する好感を失った。旧日本軍がそれまでの日本の半島での努力を台無しにしたのだ。

河野談話を否定して朝鮮人慰安婦を強制連行したのは日本軍でないことを(その可能性は極めて低いが)欧米人に理解してもらったとしても、女性の人権を侵害した責任は免れられない。今の日本が欧米で好意的に見られるは、戦後70年以上に渡る国際社会での正しい振る舞いや貢献、優れた食文化やアニメ文化、などが評価されているからで、それ以前の過去を弁明しようとすれば逆効果になり、戦後の努力が無駄になる。2007年に米国下院で慰安婦決議案が提出された際、日本に好意的な議員の多くはそれに反対するつもりだった。しかし日本の右翼がワシントンポストに全面広告を出したのを見て彼らは好感を失い、決議案は全会一致で可決された。

そもそも欧米の白人の大半はアジア人同士のいざこざに興味がなく、慰安婦像を目にしても数分後には忘れる。日本にとって安全保障上の最大の脅威は中国なので、韓国人のストーカー行為は無視すればよい。韓国の出生率は2020年に0.84まで低下し、今後さらに低下が予想される。10年後の韓国には反日する力さえ残っていないだろう。

欧米の慰安婦像にどうしても対処したいなら、欧米人女性のロビイストを雇い(ロビイストの多くは元議員で議会にコネがある)、彼女らに活動させるのが好ましい。日本政府・外務省・日本人が表に出れば客観性を失い裏目に出る。水面下で資金提供に徹するのが賢い選択だ。