キューバ市民の生活苦とカストロ一家の贅沢三昧:社会主義の慣れの果て

キューバ市民の生活苦とカストロ一家の贅沢三昧。社会主義の慣れの果てだ。

生活苦で3分の1の住民は一日3度の食事ができない

キューバでは冷蔵庫を買い求めるのに店の前の列に並んで2週間以上待ったというニュースが8月11日付の電子紙「14イメディオ」で記事になっていた。これも60年余り続いている社会主義国家の末路の現象のひとつであろう。

キューバの多くの家庭では栄養価に欠ける食事を取らざるを得ない境遇にある。しかも、それも3分の1の住民は一日に2度か1度の食事しかとれない状態にある。例えば、子供の成長に必要なたんぱく質やビタミンを満たした食事が取れる保障はまったくない。

1950年代のキューバではひとり当たりの牛肉の消費量はアルゼンチンとウルグアイに次いで3番目の消費国だったそうだ。今ではキューバで牛肉を口にできるのは政治指導者層や軍隊の将官とその家族に限られる。闇市場で12ドル前後で販売されている牛肉だ。公務員の給与が40ドルにも満たない国ではこれほど高価な牛肉は一般市民は入手することはできない。(5月12日付電子紙「ディアリオ・デ・クバ」から引用)。

空腹で就寝の前に唯一砂糖を少し加えた水を飲んで寝る人が多くいるという証言もある。元々、カストロ兄弟のキューバ革命から食料難は始まっていた。今でも食料の7-8割は輸入に依存している。ところが今、コロナ禍、米国からの観光収入の激減、外貨の移民からの仕送りも制限されている。こういった事情で政府に外貨が不足していることから十分な食料の輸入ができないでいる。

キューバは寄生虫のごとくソ連、その後ベネズエラと支援に依存して来た国

それにしても60年余りの社会主義国家で生産性は向上するどころか、逆に後退して来たというのが現状である。それに今まで住民に不満があっても政府からの弾圧で表明することができなかった。そして、キューバが寄生虫のごとく援助を最初に頼った国がソ連、その後ベネズエラと続いた。しかし、ソ連は崩壊し、ベネズエラは現在経危機にあることからキューバを助けることができないでいる。

食糧難による栄養失調の影響は老人やこどもに現れている。医学雑誌「Behavioral and Brain Funcitions」は5歳から10歳のこどもが成長に必要なタンパク質を吸収しない場合は精神障害、視力、記憶力、学習能力、集中力、注意力といったことにマイナス影響をもたらすと指摘していることも同紙は挙げている。

更に同紙は最近のキューバのこどもは数十年前の子供と比較して身長が低くなっていることも挙げた。

食料難を示すひとつとして同紙が挙げているのは、インゲン豆の国内需要は7万トンであるが5万トンだけしか生産されず、残り2万トンは輸入されていた。それが今では外貨不足で輸入出来ない状態にある。

更に、独立系のある紙面が指摘しているのはサンタ・クララでは800世帯に食料を配布するのにひと月に400世帯分しか支給できないでいるということ。残りの400政界への支給は翌月まで待たねばならないそうだ。

カストロ兄弟の孫たちの贅沢三昧

その一方で、カストロ兄弟のダイナスティーは1959年以後続いている。兄のフィデル氏は公式には6人の子供がいるとされているが、現在まで二人増えて8人の子供がいることが確認されている。一方の弟のラウル氏は2人の子供がいる。そして今、カストロ兄弟の子供や孫が住民の生活向上を犠牲にして築き上げた富を享受している。しかも、その内情がインターネットの普及で隠し切れなくなっている。孫の一部はそれを控えめにするのではなく、逆にネットに掲載して誇示しているのだ。一般に彼らのことを市民は「どら息子」と呼んでいる。

1970年代から80年代にはキューバの指導層の子供だけの低学年の学校も存在していた。

孫の道楽ぶりを披露する前に、フィデル・カストロ氏自身が1986年まで彼だけの消費用に葉巻を特別につくらせていたほどだ。それを外国からの貴賓にもプレゼントしていた。またキューバを代表するロンも彼の消費用に蒸留されていたものもあった。

キューバの独裁政権を批判して2018年に設立したサン・イシドロ運動のリーダーマヌエラ・ビエラ氏はフェイスブックに「カストロの息子や孫たちが行ける場所に我々はいつ行けるようになるであろうか?」「ミゲル・ディアス・カネル大統領のようにローレックスの時計をいつ身に着けることができるのであろうか?」「ファーストレイディーのリス・クエスタ夫人のようにキャロライナ・ヘレラの財布を私の家内がいつ買うことができるのであろうか?」「寄生虫のごとく国の為に何もしたことがないサンドロ・カストロのようにベンツを我々はいつ乗り回すことができるのだどうか」と掲載して自由が束縛されている市民を前にして政治指導層が贅沢三昧している姿を批判したことがあった。(8月7日付ベネズエラ電子紙「エル・ナシナル」から引用)。

このサンドロ・カストロ氏というのはフィデル・カストロ氏の孫の一人だ。今年3月にソーシャルネットを使ってベンツを時速140キロで走行したのを掲載したことで話題になった人物だ。そこで彼が語ったのは「我々はシンプルだ。しかし、家にあるこれらのおもちゃを時々出してやらねばならないのだ」語ったのだ。2019年にも彼は同じようなことを別の車でやらかしている。(同上「エル・ナシナル」)。

外国車の輸入は国営企業がやっており、その市販価格は最高8倍にまでなるのでそれを手に入れることができるのは限定した家族しかできない。

同じく孫のトニー・カストロ氏もBMWを取りまわしていることで目立った時もある。またパリやスペインを豪勢に旅行したことなどもその写真をネットに掲載して公にしたこともある。また、彼はキューバ革命60周年記念に豪華なヨットに乗っている姿をネットに掲載した。

ラウル・カストロ氏の場合も息子や孫は裕福な生活を享受しているが、フィデル氏の孫ほど目立つ行動は見当たらない。

首相のマヌエル・マロン氏の息子も職業柄プライベートジェット機で指導者層の家族や外国からの要人を観光地などに案内している。

ネットが登場してカストロ兄弟の孫の世代になると窮状にあるキューバ市民のことなどそっちのけで敢えてネットで裕福な生活ぶりを披露したくなるようだ。

また、フィデル氏の息子の中には今後のキューバのことを推し量って現在従事しているビジネスを利用してキューバから出ることを考えているようだ。彼らはスペインのパスポートも所有しているから尚更ヨーロッパでの仕事もやり易くなっている。