日本共産党の志位和夫委員長は朝日AERAのインタビューで次のように答える
特に15年の安保法制の強行成立は、日本の政治にとって非常に大きな分水嶺(ぶんすいれい)でした。憲法9条のもとでは集団的自衛権は行使できないという憲法解釈を一夜にしてひっくり返し、自衛隊を米軍と一緒に海外で戦争できるようにするという、立憲主義の根本からの破壊でした。破壊された立憲主義を回復することは、国政一般の問題とは違う次元の問題として捉え、この年に共闘路線に舵を切ったのです。
志位氏にとって安保法制可決に伴う立憲主義の破壊は大変なことらしい。「破壊された立憲主義を回復することは、国政一般の問題とは違う次元の問題」という表現を見てもそれは明らかである。
立憲主義が破壊されることの何が問題なのか筆者さっぱりわからない。安保法制が可決されて6年程度経つが立憲主義の破壊による悪影響は何も感じない。何も想像できない。国政選挙も普通に実施されている。労働者の賃金・待遇、企業業績、株価の動向も立憲主義の破壊とは無関係である。
安保法制可決後、筆者の日常も順風満帆というわけではなく大変な日もあったが、それはもちろん立憲主義の破壊は無関係である。今、こうして政党代表について執筆することもできるし、アゴラに投稿した記事も立憲主義の破壊を理由に編集部から撤回・修正要求されたこともない。
今、日本はコロナ禍で社会が停滞しているが、もちろん立憲主義の破壊とは無関係である。むしろコロナ禍ではいわゆる「ロックダウン」を巡って立憲主義が議論を複雑化しているのが実情ではないか。
本当にわからない。だから志位氏は説明してほしい。立憲主義が破壊されてこの日本にどんな悪影響をあったのかを。
志位氏が立憲主義の破壊を「国政一般の問題とは違う次元の問題」と捉えるなら尚更である。
安保法制可決以降、野党が国政・地方選挙で政権交代からほど遠い結果を出しているのも、立憲主義の破壊よる悪影響について志位氏を始めとした野党議員が国民に対して説得的な説明していないからではないか。
政権交代を目指すなら立憲主義の破壊によって日本社会がどうおかしくなったのかを真摯に説明したほうが良い。野党共闘のためにも日本共産党ためにも「立憲主義を取り戻す」ためにも志位氏はもっと具体的に説明すべきである。
…いや、もう説明する気はないのだろう。もう安保法制可決から6年も経っている。
6年も立憲主義の破壊による国民生活への悪影響を説明できないということは立憲主義は野党の政治利用の結果、もはや本来の意味を失って全くの別物になってしまったといってもよいかもしれない。
別物とは具体的には「国体」である。立憲主義は安保法制反対派によって戦前の「国体」と同レベルまで貶められた。このことについて過去に書いた。
率直に言ってこのコロナ禍で立憲主義の破壊にこだわるなどあまりにも生活感がなさすぎる。志位氏の発言は「赤い貴族」の戯言にしか感じられない。他者説得能力に乏しく多数派を形成できない者にとっては「絶対的なもの」は最後の砦である。日本共産党にとって立憲主義はその程度の位置づけにしか過ぎないのだ。
志位氏のこの立憲主義への執着は日本共産党にはもはや日本社会を発展させるだけの知見は何もないということを自ら告白しているようなものである。
投獄・逃走経験がなく日本共産党の世界しか知らない「純粋培養」された党委員長の最大の関心は「ソ連が実現できなかった共産主義社会」でもなく「コロナとの共生」でもなく「国体」的ものである。自らの先輩達を苦しめた特高警察と同じ思考に陥っているのだ。漫画というほかない。
日本共産党が今後も日本社会の発展に微力ながらも貢献したいと思うのならば志位氏のような特高的思考を持つ党議員に引導を渡し、党運営の民主化、党名変更しかないだろう。
もっともそれに着手した途端、処分されるかもしれないが。