菅首相を退陣させた自民党は、総裁選を経てどう変わるか

田原 総一朗

田原総一朗です。

9月3日、菅首相が総裁選不出馬を表明した。菅内閣の支持率は、8月28日実施の世論調査(毎日新聞)で、26%とついに30%を切ってしまっていた。

下落の要因は、いうまでもなくコロナ対応である。8月は東京などで新規感染者が増大し、医療逼迫が切実となった。入院を希望しても空きがなく、自宅療養を余儀なくされる、呼吸困難などの症状が出て、救急車を呼んでも受け入れ先の病院がない……といった事例が相次いだ。

支持率の下落に動揺したのは、自民党議員たちである。「これでは秋の衆院選を戦えない」というわけだ。二階幹事長、安倍前首相や麻生財務相も、「菅続投でよい」と言っていたのが、考えを変えた。

幹事長にしたいと、4日間にわたり説得した小泉進次郎氏からも固辞された。その他の党人事も難航し、菅首相は辞任せざるを得なくなったのだ。

そして9月17日、自民党総裁選が告示となる。いったい次期総裁は誰になるのか。最も早く出馬表明していたのが、岸田文雄氏。宏池会のリーダーであり、安倍前首相や麻生財務相ら、党の大物からの評価は高いが、逆に国民からは、「権力に対して迎合しすぎ」と言う声も多い。

岸田氏と対照的なのが石破茂氏だ。党内での評価は低いが、全国の自民党員からの評価は高い。しかし、石破氏は、党の大物たちの動きを考えると、「当選はできない」と判断。河野太郎氏の応援に回るとみられる。

その河野氏への、国民の期待は高い。しかし「脱原発」を掲げているため、経産省、全国の電力会社などからは、敬遠されているようだ。自民党の議員たちの多くは、原発のあり方について、情けないほどあいまいだが、そんな河野氏をどう見るのだろうか。

高市早苗氏は、推薦人の数が揃わないのではと懸念されていたが、安倍前首相が支持に回って、出馬することになった。

状況がめまぐるしく変化したので、遠い昔のように感じるが、8月26日、私は首相官邸で、菅義偉首相に会った。私は菅さんに、「辞めろという声が多いようだが、ここで辞めるのは無責任だ。なんとかコロナを押さえ込むまで、がんばってほしい」と言った。

菅さんは、「政治生命をかけてがんばりたい」と、きっぱりと語っていた。あの時点で菅さんは、本当に我が政治生命をかけて、やり抜く覚悟だったと思う。目の前の私に、その覚悟がひしひしと伝わって来た。しかし、状況が続投を許さなかった。もう半世紀も政治の世界に関わっているが、あらためて非情なものだと思う。

今回の総裁選は、自民党が変わるよい契機になりうる。感染症対策、原発、そしてもちろん、外交、安全保障……。とことん議論してほしいと思う。総裁選を経て衆院選が行われる。さあ、自民党はどう変化するのか。そして国民はどう判断するのか。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2021年9月17日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。