どうなる株価

お前は秋の株式市場は気をつけろ、と言い続けてきて本当にそうなったからきっとうまく逃げきっただろうと思っている方も多いでしょう。日本の個人投資家は全部売却とか猪突猛進で買い上がるという極端な動きもとれますが、私はロットもそこそこありますし、右へ左へと簡単にはできません。

北米の個人株主でも個人年金の運用であったりしますし、機関投資家はそもそも運用することが仕事なので現金割合を一時的に増やすことは可能でも大半を現金にするようなこともできません。私も法人と個人の両方の売買がありますが、法人は多少は現金持ちを増やせても、基本的には長期投資ですからこのような場合には影響は極力回避しても全部逃げられないのです。

Fabrice Cabaud/iStock

さて月曜日のNY市場は前日の香港、欧州市場を引き継いで大荒れとなりました。引き金のひとつは中国の不動産大手、恒大集団の行方を占う大口の利払いが今週23日に迫っていることがあります。ドル建てと人民元建ての利払い総額は130億円相当。ただ、すでに規模の小さい利払いは止まっているし、手持ち完成在庫の不動産による現物払いのオファーも始まっていると報じられています。(それが法制度と担保上、技術的にどうして可能なのか不思議ではあります。)

私は以前に述べましたように恒大が無傷で生き延びる術はないとみており、債権者と債務再編を行うとみています。中国政府に近い一部報道機関が「大きすぎて潰せないことはない」と述べているので政府として「放置プレー」をする気がします。仮に債務再編がなかなか決まらない場合、私は10月12日の米ドル建て利払い160億円を超えられるかが次の山場になるとみています。欧米系金融機関で同社の社債を多く持っているのはブラックロック、UBS、HSBCですがスワップする手段がなく、中国市場の独自性もありリスクヘッジに苦戦している模様です。

ただ、私は仮に恒大にしろ、他の不動産会社にしろ、それが混乱したとしても世界への波及は限定されるとみています。そもそも中国のエクスポージャーは危険だという見方がずっとあり、積極的な投資は一部を除き絞り込まれてきました。また、中国の国家の規模と中国人の特性を考えると不動産を安値で買うバーゲンハンターが出てくるはずで第2のリーマンショックにはならないと予想しています。

さて、私はアメリカの株価が冴えない事情にはアメリカそのものに問題がある、と申し上げました。その行方を占う金融の2つの動きにも注目が集まります。1つは9月21日、22日の2日間開催されるFOMCを受けてパウエル議長がどのようなステートメントを出すか、であります。

経済指標はまだらで雇用はいまいちです。COVIDの行方、株式市場の不調を考えると量的緩和縮小に踏み込んだ発言するのは厳しい気がしています。そもそもインフレリスクがやや後退する兆候も一部では見られます。この点は株価にはプラスになるでしょう。

もう一つはアメリカの債務上限問題で毎度のことながら10月に資金が枯渇するので上限の引き上げ、ないし、上限撤廃をイエレン財務長官が主張しており、共和党と対立しています。何年も同じことを繰り返し、共和党と民主党でボケと突っ込みの役割が変わる「漫才」のようなものです。ただ、枠組み撤廃をするようなことになればドル安を誘発し、本当の経済不安になる公算があります。最終的には政治家の大好きな駆け引きゲームで上限引き上げにて合意するとみており、これも終末的な事態に陥ることはあり得ません。

それよりも私はやはり、バイデン大統領の手腕がかなり怪しい点が気になっています。今週、外交関係でびっちりとスケジュールがあります。マクロン大統領と電話会談、ジョンソン首相との会談、更にQUADが木曜日で個別会談でもかなり神経質なやり取りが行われることになります。

バイデン氏は最近かなり強引頑固になっています。いわゆる「聞く耳持たず」の状態もみられ、アメリカの外交軸の論理的構築がブレることが最大のリスクファクターです。またご本人が11月には79歳になる中で公務を本当にこなしているのか、十分な判断能力を持っているのか、側近やブレーンは十分なのか、カマラ ハリス副大統領はなぜあまり出てこないのか、を含め、疑問符だらけであります。

この政治不安辺りまでを考え合わせると総合的には株式市場はしばし軟調で調整局面が続く気がします。何%下落するかはわかりません。ただ、下落幅が10%だろうが15%だろうがそれは大きな波動の中のブレだと割り切るべきでしょう。私は今回の暴風はそれほど大きいものにならないとも予想しています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年9月21日の記事より転載させていただきました。