第5波における陽性者数の減少要因の考察 --- 山田 成美

新型コロナウイルス感染症における第5波(メディア等で報道されている)におけるPCR検査の新規陽性者数の減少要因について、メディア等で発言されている感染症の専門家および医師の方々の説明の結論は「不明」または「不思議」というものです。そこでインターネット上に公開されている情報(主に統計データ・・図を含む)を詳細に検討して考察した結論を以下に述べます。

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感染症の対策または抑止

対象の感染症について治療薬またはワクチン等が準備できていないとすれば、感染者を社会から一時的に「隔離する」ことが最良の対策と考えます。新型コロナウイルス感染症の発現当初はこの状況でしたから感染者はすべて指定病院へ治療目的で入院させられています。これは感染者を一時的に社会から「隔離」していることに他ならないと考えます。隔離が確実におこなえるなら入院した感染者による非感染者への感染は起こらないか起こりにくいと考えます。

新型コロナウイルスに感染した人の検出

これはPCR検査で下記の方々に対して行われていると推定します。

  • 自覚症状(発熱、咳込む、味覚/嗅覚異常、倦怠感等々)により医師の診断結果
  • 濃厚接触者
  • PCR検査で陽性になった方と接触があった
  • その他必要と考えられた方々

PCR検査で陽性と判断された方々の総数が毎日(全国、都道府県、自治体単位で)公表されています。

PCR陽性者数の増減

PCR陽性者数の増減について下記のことが云えます。

<毎日の新規PCR検査の陽性者が増加傾向の場合>

ある日の潜在陽性者数 >(ある日の新規PCR検査の陽性者数)

<毎日の新規PCR検査の陽性者が減少傾向の場合>

ある日の潜在陽性者数 <(ある日の新規PCR検査の陽性者数)

※ 潜在陽性者数:ある日の集団内に存在する陽性者の総数(ある日の新規PCR検査の陽性者数を除いた数)+ 翌日にPCR検査で陽性になる可能性のある人の総数(潜伏期間の状態にある人の総数)

以下、厚生労働省のデータからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-、および東京都から公表されているデータ「最新のモニタリング項目の分析・総括コメントについて」を基にして述べます。

感染させる傾向の強い方々

新型コロナウイルスを感染させる傾向が非常に強い方々は「入院」および「宿泊療養」の方々と考えます。他方、新型コロナウイルスを感染させる傾向が無いか非常に弱い方々は「無症状者」、「軽症者」および「自宅療養」とします。

メディア等における専門家および医師の方々はこれらの方々も感染力があると説明していますが、確実な裏付け(エビデンス)があることではないと考えます。特に無症状者が感染力があるとは非常に考えにくいことです。従って上記に述べた区分けにしました。

東京都における新型コロナウイルスの陽性者の区分け

前記のURL(厚生労働省および東京都)から公表されているデータ(csvファイル、pdfファイル)から毎日の「入院患者数」、「宿泊療養者数」、「入院・療養調整中の患者の移行先数・・入院、宿泊療養、自宅療養、退院・療養等終了・・・他」から毎日の入院患者数の増減、毎日の宿泊療養者数の増減を求めて本考察の基礎データとしています。しかしながら、東京都にしても厚生労働省のデータにしても下記のデータを算出することが困難でした。

毎日の新規陽性者を区分けしたデータ

  • 入院(軽症者数)
  • 入院(中等症者)
  • 入院(重傷者数)
  • 宿泊療養者数
  • 自宅療養者数
  • 無症状者数

東京都にしても厚生労働省にしても累積データはありますが、その累積データに関して上記の区分けの正確なデータがありませんので、毎日の「入院患者数」および「宿泊療養者数」を潜伏期間を検討しながら推定で算出しました。

毎日の新規「入院患者数」および新規「宿泊療養者数」の増減の傾向

7月1日から8月中旬(15日あたりまで)は増加傾向になり、その後に減少傾向になります。特に8月22日以降は減少傾向が大きくなります。

感染の元になる主たる陽性者は前記で述べた通り、医師の診断(およびその他の条件)により「入院」および「宿泊療養」に移動されるので、これらの方々が多ければ感染者数も多くなりPCR検査での陽性者数は増加します。それらの方々は必ず隔離されますので、PCR検査の陽性者がはじめは次第に増加しますが、いずれ減少に至るのが自明のように考えます。

PCR検査における陽性者数の減少理由

最大の原因は「感染の元になる主たる陽性者」を入院(またはホテル療養)として「隔離する」ことに起因していると結論するに至りました。全般にPCR検査での陽性者を社会から一時的に隔離または隔離状態にしている政策が陽性者数の減少に大きく寄与していると推察します。

感染抑止について

第1波から第5波迄を検討しますと、

  • 人流の抑制
  • マスク
  • 距離の確保
  • 換気

は、感染抑止に関して期待した効果がなかったように考えます。但し、ワクチンは効果あるように見えますが、第5波の急激な現象についてその波及効果の評価はこれからのように思われます。

また、クラスターの発生は問題が多いように思われますが、対策として「一度の多くの陽性者をある集団から隔離状態にする」ので感染抑止効果としては大きいのではないかと思われます。なお、家庭内感染はクラスター感染のように考えますので、一時的に他への感染抑止になっていると考えます。

また、中国では陽性者の発生が少ないように報道されています。これも地域全体を他の地域から一時的に隔離(ロックダウン)しているようなので、これをもって「隔離政策」が陽性者の減少要因であると云えると思います。

感染対策

感染対策は「隔離政策」を主体としてワクチンがその抑止に寄与することで良い考えます。なお、治療薬は感染者の治療に提供するものなので、感染対策とは異なるものです。第5波が以前の波と違い大きな波となった理由はデルタ株の感染力の大きさにあります。従い、次の波が感染力が大きなウイルスとすれば第5波より大きな波になると推定しますが、入院体制、ホテル療養および自宅待機が整っていれば特別に問題が起こるようには思いません。

入院体制およびホテル療養は各自治体を超えた体制が重要と考えますが、これが実現できるか否かは、国および各地方自治体の政治家の方々、各役所の方々、各病院および勤務医と各開業医の方々および宿泊業の方々の意欲にかかると考えます。

今後、感染対策としてのワクチンと感染者のための治療薬はもちろん必要と考えますが、少なくとも「入院体制とその他が整っている」ならば「自粛」とか「規制」は経済的に非常な無駄なことと考えます。

日本経済が劣化するならば、近い将来に医療を支える経済力も必ず劣化(健康保険料の増額とか、皆保険の破綻とか、高度な医療機器の導入難とか、等々)しますので、今までのような「十分すぎる治療と処方薬の提供」も無理になると考えるべきです。今までの感染対策の考え方では「ウイズコロナ」と安易に言ってはいられなくなることを誰もが認識する必要があります。

山田 成美
21歳からコンピュータ関連(米国製メインフレーム)のOS保守/改変の担当を行い、後に基本S/Wの開発/改良、15年後に退社、IT企業(S/W開発)の立ち上げに参加して3年後に退社、IT企業の立ち上げに株主/役員として参画、65歳で退社、インターネットの機器関係他を輸入販売するIT企業の技術責任者として参加し71歳で退社し現在に至る。