日本も世界の経済潮流には勝てず…

「インフレの足音」といえば聞こえがよかったのですが、残念ながら怒涛のように押し寄せる公算が高くなってきました。そもそもの理由は材料高。その材料高の多くは原油をはじめとするエネルギー資源でそれが上がった理由の一つはカーボンゼロといった環境問題への対応が急速に進んだことは原因の一つとして挙げられましょう。

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日本での影響は原材料や製品が手に入らないという問題が生じています。これはコロナによる影響で生産できないという問題もあるでしょう。国際輸送が大幅に遅延していることもあります。今、船積み貨物はその船を予約するのに一苦労、船はいつ入港するかわからず、入港してもそれを捌けないといういくつもの苦悩が待ち構えています。中国では電力不足で工場は2日操業、2日休みといった具合です。中国の電力不足は「習近平ショック」といってもよく、「石炭火力を削減しよう」の掛け声が理由とされます。同国のエネルギーは70%が石炭火力ですが、習近平氏の発言力も使い方次第でとんでもないことになるという良い例となりました。

株価が不安定になるのは物価高が一時的とは思えないという投資家の懸念から国債のイールドが高くなり、利上げに構えるポジションをとるからでしょう。

「外国では物価高らしいね?」。茶の間の話題ぐらいにしかならない日本への影響ないのでしょうか?

確実に物価が上がるはずです。それも久しく見ていない水準の物価高になるかもしれません。そして、そうなれば残念ながら嫌な形の物価上昇となり、日本経済に少なからず影響が出るとみています。

かつて世界をリードする経済成長を見せたころの日本は経済の歯車がきれいに廻り、製品を世界に供給できる能動型国家でしたが、今は受動型国家です。日本がリードできる分野が素材産業などごく一部に限られてしまったからです。一方、資源は輸入に頼るわけですが、その資源価格に対抗する余地も十分にありません。(昔は高いガソリン価格に対して燃費の良い車を作るといった対抗策がありました。)

日本が抱える最大の問題は地球儀ベースでの経済問題が生じたときのクッションがもはや、あまりない点です。我々は企業努力という言葉を好んで使いました。「乾いたぞうきんを絞る」という改善改良で企業の経営体質は確かに強化されたのですが、余裕のない経営にもみえるのです。

我々は1年半以上に渡りコロナで苦しめられました。個人も企業も完全に病み上がり状態でガンガン攻めるという状態からは程遠い状態です。また経営者の世代交代がまだ十分に進んでおらず、経営の先行きに不透明感が重くのしかかっています。

この状態で何が起きるかといえばある時、堰を切ったように値上げラッシュが始まる公算が高い、とみています。一方で給与所得は上がりません。日銀は金利も上げらないでしょう。高齢者や所得が十分ではない方から不満が出るでしょうが、政府はコロナ対策で財源を費消し、これにどこまで太刀打ちできるかは定かではありません。

以前にも申し上げましたが、私はロシアの動きに注目しています。プーチン大統領は自身の不人気の理由に経済不振があると考えています。ここにきて主力の一つ、石油、ガスが急速に値上がりしている中で更に儲けることを企んでいるのではないかと気を揉んでいます。また突如、植林保護のため、ロシア産木材の輸出制限を言い出しましたが、それを真に受ける人はいないでしょう。明らかに違う理由です。

ロシアが供給するガスについて我々はもう少し、注意深く見る必要があります。これから冬に向かうにあたりガス需要は季節的要因で増えます。それを理由に供給を絞られるとグーの音も出なくなるでしょう。ロシアも中国も世界のことなどはお構いなしで自分中心です。我々はそれにどう対応するのか、受動型国家としての試練が待っているのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年10月4日の記事より転載させていただきました。