無視できなくなる暗号資産の価値

お前はアンチビットコイン派だろう、とズバッと切り込む方がいたら私のブログをよくお読みの方です。そう、昔、ビットコインが2万ドルをつける過程で、猫も杓子もビットコイン、若い女性がクレカでビットコインなどというのはかつてのチューリップ相場と同じだとこき下ろしました。時は17年末でその年の確定申告がある18年2月頃は「億り人」なんていう言葉も流行りました。

その頃の私のスタンスはビットコインは何の担保的裏付けもなく、実際に使用するのも困難なこの暗号資産の価値が2万ドルだろうが1000ドルだろうがその価格を論理的に裏付ける方法はない、よって暴落する、というポジションでした。確かにそのちょうど1年後、4000ドルそこそことなり、これで終わるかと思ったのですが、そこからしばらく、じわじわとした上昇を続け、20年初夏、株価と共にビットコイン相場も急上昇、76000ドル台をつけ、現在、概ね5万ドルに位置しています。

KanawatTH/iStock

そのビットコイン、チャート的にも潜在的にも今後、更に上昇し、大きく跳ねるのではないか、とされます。では、お前はどうなのか、といえば1年半ぐらい前から実験的にビットコインではなく、そのマイニング会社やカナダのETFを実験的に購入し、「なぜ」を突き詰めることにしたのです。私はその間、じっと待たず、売り買いを頻繁に行いながらその特性を探りました。

結論的には相場としては成り立つ、と判断し、ビットコイン関連株を大きく買い増ししました。しかも今、もっと買い増ししてもよいかと思っています。

理由です。

明白なきっかけは中国が暗号資産のマイニング業務のみならず、その使用までも禁止してくれたことが大きかったのです。禁止の発表があった時、相場はクラッシュしました。その際の私のブログ(21年6月24日付)にはこう書いてあります。「ビットコインのマイニングが中国でシャットアウトされたらどうなるか、と言えば一つは西側諸国のコントロール下になること、採掘の方法で環境負荷を下げたものがどんどん生まれていることで長期的にはプラスの効果が出るだろうというのが私の読みです」と。今回、その使用まで禁じたので民間の暗号資産が西側諸国の支配下に置かれたことを意味します。これは中国人にとって喉から手が出るほど欲しいものに変貌するはずです。

次に5-6年前までならちょっとしたオタクでもビットコインをマイニングすることは可能でした。政府紙幣が誰でも技術さえあれば作れる、というのと同じです。ところが今では能力的にごく一部の特定業者しか発掘出来ないため、供給側に一定のコントロールが効いている点が挙げられます。

更に供給側がプロの採掘者に絞られたことでコスト意識が芽生え、マイニングコストプラス適正利潤という考え方を相場にあてはめることが可能になりました。私は金(ゴールド)のマイニング会社に長く投資していますが、その決算説明書の最大のポイントは掘削コストなのです。とすれば、環境問題等で掘削コストが上昇する一方で、暗号資産に対する需要が不変であれば市場価格は否が応でも上昇する、という結論になります。私が投資するビットコインのマイニング会社は概ね一日10ビットコインを掘削しています。10ビットコインとは50万ドル/日ですので1年にするととんでもない売り上げになるのです。

では不変の需要があり、普遍性をも持たせることができるのでしょうか?一般通貨のような形には様々な理由で困難性が伴うものの代替資産として一般社会で着実に浸透するかもしれないと考え始めています。

最近、日経ですら「暗号資産」と「仮想通貨」を使い分けているように見えるのです。正式には暗号資産なのですがよく考えるとこの2つは意味が違うのです。資産はアセットですが、通貨は決済手段です。ということはゴールドと同じで資産にはなりえるが、それで商品を購入できないから仮想通貨とは言わない、ということかもしれません。ならば資産価値を否定していないともいえるのです。

これに拍車をかけるのが毎度のお祭りでありますが、アメリカの債務上限問題です。この問題のたびに起きるのが「ドルは本当に大丈夫か?」であります。基本的に国家は潰れません。国土というとてつもない不動産があるからです。一方、通貨は政府発行紙幣であって政府の判断でその価値の位置づけは恣意的にどうにでもなるというリスクがあります。それゆえに太古から代替資産である金はその輝きを失うことはなかったのです。

世界の国々の財政は厳しく、その問題のループから抜け出すことはできません。だからこそ、資産分散先の選択肢としてコアなファン層が作り出す暗号資産がじわじわと一般社会に展開する、という発想です。

幸いにもパウエル議長は「暗号資産を禁止する意図は全くない」と発言しました。中国の動きに対する姿勢を示したのです。エルサルバドルでは同国の火山の熱を使って発電し、それでビットコインのマイニングの電源にすると発表しました。

数年前までは小ばかにしていたビットコインですが、いつの間にか、それなりの投資をしている自分が怖いのですが、それぐらい世の中の常識や価値観の変化は激しく、固定概念に囚われすぎず、柔軟な姿勢で臨んでいくことが必要な時代になったのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年10月5日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。