NHK首都圏ネットワークが7日に放送した「コロナ感染者なぜ急減 ワクチン 免疫 人出? 専門家5人の見方は」の内容をネットで読んだ。「PCR検査陽性者」ではなく未だに「感染者」としている辺りが如何にもNHKらしい。
政府組織などの専門家5人が「新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合で6日示された資料」にある、「新規感染者数は5日までの1週間では前の週と比べて、全国では0.53倍と、ほぼすべての地域で1ヵ月以上にわたって減少傾向が続いている」理由を述べている。
5人とは政府分科会の尾身茂会長、専門家会合座長の脇田隆字国立感染症研究所長、同会合メンバーの和田耕治国際医療福祉大教授と西浦博京大教授、そして山本太郎長崎大熱帯医学研究所教授。山本教授だけは「感染症に詳しい」とあり、政府分科会や専門家会合メンバーではない様だ。
奇異に感じたのは、その山本教授だけが「ワクチン接種の広がりや感染を経験した人が増加したことによって、集団の中で免疫を獲得している人の割合が増えてきていることは確かだと思う」と、「過去の感染で獲得する」いわゆる「自然免疫」に明確に触れていることだ。
山本・和田両教授以外の3人の話には「感染拡大要素がなくなった」、「医療危機伝わり感染対策」、「夜間の人出が減少」、「ワクチン接種の効果」、「天候の影響」(尾身氏)、「分析途中」(西浦教授)、「若者で増えて若者で減った」(脇田教授)と「免疫」のメの字も出てこない。
和田教授も「ワクチンや感染によって免疫を獲得している人の割合が比較的少ない10代後半から20代の若い世代が感染の中心になり、そこからワクチンを接種していない中高年層に感染が広がり、重症化してしまうという流れが懸念される」と「自然免疫」に触れるものの、文脈は慎重論だ。
NHKがまとめた9日時点の「感染者」は171万人余りだが、9月17日の日刊ゲンダイ記事のようにこれの3倍を超える「隠れ陽性者」がいるとするなら、日本全国で7百万人ほどが「自然免疫」を持っている可能性がある。
日本のワクチン接種者は8日現在で92.2百万人(72.8%)が1回目の接種を終え、2回目を終えた者は80百万人(63.1%)だ。「自然免疫」取得者も、ずっと1割を超えていた検査陽性率から推して10倍は居ても不思議はなかろう。とすれば免疫取得者は優に1億人を超えるかも知れぬ。
■
同じように「感染者」が減っている米国に目を転ずれば、米国の専門家も「ほとんどの州で感染者数が減少」している原因について意見が分かれているようだ(9日のThe Hill)。
先ずは慎重論。マサチューセッツ大生物統計学ライヒ教授は「亜種発生や免疫持続性が不明で、より大規模な増加の可能性がある」とし、ジョージ・ワシントン大公衆衛生学ウェン教授も「デルタ波が過ぎたと人々が考えることが懸念される」と述べる。ワシントン大ディレクターのマレー氏も「このまま消えてしまわないかと思う人もいるが、あまり考えられない」という。
楽観論では、ゴットリーブ元FDA長官は「想定外のことがない限り、これが最後の大きな感染の波だと思う」とし、ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センターのアダルジャ上級研究員は「冬の感染者増加は、ワクチンや感染による免疫力の向上により、入院や死亡とはより切り離されるだろう」と述べる。
同氏は「多くの人がワクチンを接種し、この大きなデルタ波による自然免疫を多くの人が持ち、多くの人が亡くなったため、入院や重篤な疾患、死亡といった重要な点に関しては、過去に見られたようなピークは見られないだろう」と具体的だ。
ジョンズ・ホプキンス大ブルームバーグ公衆衛生大学院のダウディ准教授(疫学)も「ワクチン接種が増え、ワクチンを受けていない人もかなりの人数が感染しているため、米国人の免疫力は「これまでにないほど高くなっている」と指摘する。
■
何を言いたいかといえば、「新型コロナ検査陽性者減少」の主たる理由の一つに「自然免疫取得者の増加」があるのではないか、ということ。しかしながら政府組織の「専門家」がそれを口にしないのは奇異だと思わないか。
筆者は陰謀論者でないし真相も判らないが、バイデン政権がワクチン接種を推奨するがあまり、「自然免疫」が不当に扱われているらしい米国事情を報じた8日のEpoch Times(ET紙)「自然免疫:ワクチンの代わりになるか?」なる記事を紹介する。
記事は、ファウチの武漢ウイルス研究所への資金提供容疑を執拗に追及する、医師でもある共和党ランド・ポール上院議員が「医師の学位もない」ベセラ保健社会福祉長官が、「自然免疫」で十分と自己判断してワクチン接種をしない者を「地球平面論者(flat earther)」と腐したのを責める場面で始まる。
議員は「ワクチンへの信頼を欠いて誹謗中傷する人々が引き起こす被害は誇張ではない」と主張するベセラに対し、「貴兄はCOVIDを生き延びた1億人以上の米国人に、自身のケアを決める権利がないと言うつもりか?」、「科学的な背景も医学的な学位もない弁護士なのに・・」と手厳しい。
記事は覆面取材で知られるProject Veritas記事を引き、ファイザーの研究者ニック・カールが「自然免疫があるとウイルスに対する抗体は多い…実際にウイルスを得るとその複数部分に対する抗体の生成を開始する …その抗体はおそらくその時点でワクチン接種よりも優れている」との談話を書く。
同僚のクリス・クローチェは「自然のCOVID抗体を持っている場合、ワクチンと比べてより長く保護される」とし、「自分は邪悪な企業で働いている…組織はCOVIDの金で運営されている」と嘆じ、ラウル・カンドケ氏も「(感染し)抗体を持っているなら、ワクチン接種証明と同等だ」と述べる。
ET紙は「感染による免疫がワクチン接種による免疫と同等かそれ以上に強力」であることのエビデンスとして、21年3月のLancetに載ったデンマークの研究、8月のイスラエルのマッカビヘルスケアサービスの研究、9月の英国BMJ誌やシステマティック・レビューなどの記事を挙げる。
最後に記事は「自然免疫」が話題にならない理由として、NPOのBrownstone Instituteが「ハーバード大の疫学者Martin Kulldorffによる、自然免疫を獲得したワクチン未接種の看護師を病院が解雇すべきではないとの主張をLinkedInが弾圧している」件に触れて、「検閲」の存在を示唆する。
またProject VeritasのFacebook(FB)の内部告発者で、FBが「ワクチンへの躊躇」を助長すると思われるコンテンツを密かに検閲していたことを示す文書を共有して解雇されたモーガン・カーマンを、FBの内部告発者として目下話題のフランシス・ハウゲンと共に紹介している。
コロナ感染でもワクチン副反応でもゼロリスクなどあり得ないから、何があろうとそれはその時のことと流れに任せている筆者だが、ワクチン接種を義務化したミシガン大学を、「自然免疫」保持を理由に訴えた大学職員を敗訴にし、解雇の危機にまで晒す米国はどうかと思う。
同様に、近ごろの日本でネットのワクチン否定論がbanされるなども異様だが、まさか政府分科会やの専門家会合が「自然免疫」に口を紡ぐ理由が、それと同根ではあるまいな。