バージニア州といえば、米中央情報局(CIA)が本部を構え、ノーフォーク海軍基地やラングレー空軍基地を備え、多くの政府関係者や軍関係者が居住する地域ですよね。ワシントンD.C.のベッドタウンとしても、知られています。
1948年以降の大統領選を振り返ると、アイゼンハワー氏から2004年のブッシュ氏(息子)まで、1964年のジョンソン氏を除き共和党候補が勝利してきました。しかし、流れが変わったのは2008年で、オバマ氏以降は2016年を含め4回連続で民主党候補を選出しています。2020年には、バイデン氏が54.1%と10.1ポイントのリードで大勝しました。
知事はといいますと、現職のノーサム氏を含め2000年以降は2009年の知事選を除き6人中5人が民主党出身と、リベラル色が濃くなっている様子が垣間見れます。
このように民主党の地盤と化すバージニア州で、11月2日に知事選が行われます。当初は民主党候補のテリー・マコーリフ氏(64歳)が優勢でした。ところが、足元では共和党候補で投資会社カーライル・グループのグレン・ヤンキン元共同CEO(54歳)とデッドヒートを演じています。10月1~3日実施の世論調査結果では、1%ポイントと肉薄しているのですよ。
バージニア州と言えば、2017年8月に展開された白人至上主義による抗議活動の舞台、シャーロッツビルを擁します。当時、マコーリフ氏は知事として非常事態宣言を発動。集会打ち切りに踏み切るなど、毅然とした行動を受けワシントン・ポスト紙は当時「(白人至上主義を表立って批判しない)トランプ大統領を相殺する存在に」と評価していました。
その他、マコーリフ氏は知事時代、大中小問わず企業を誘致した実績があります。そのうちの一つは、中国の製紙大手山東泉林紙業で、マコーリフ氏は売り込みのため中国を訪問し20億ドルの工場建設の呼び込みに成功しました。ただし、満了間近の2017年10月時点での支持率は48%と、50州別で32位だったんですね。それでも、同氏は2020年の大統領選出馬を考えていたといいます。
結局、マコーリフ氏は再び知事の座を狙い20年12月に出馬表明しました(なお、マコーリフ氏が2014~2018年まで知事を務めたように、バージニア州は任期を1期4年と規定する一方で、複数回の就任が可能)。計算外だったのは、バイデン大統領の支持率低下。選挙情報サイトのポリティコやファイブサーティーエイトも、マコーリフ陣営の焦りやヤンキン氏の巻き返しを伝える有様です。
民主党全国委員会(DNC)委員長を歴任したマコーリフ氏は、1996年と2008年に再選を目指すビル・クリントン氏、その妻ヒラリー・クリントン氏の選対本部長も務めただけに、バイデン氏とも近い人物です。しかし、マコーリフ氏は10月8日に「残念ながら大統領はバージニア州で不人気であり、我々は苦労して勝利の道を切り拓いていかねばならない」と発言。現職で、しかも自身の選挙を支援する大統領にあり得ない言葉を投げ掛けました。マコーリフ氏の不安が、手に取るように感じられます。
バイデン政権と民主党にとっても、バージニア州知事選は負けられません。と言いますのも、2009年11月の同州知事選で共和党候補のボブ・マクドネル氏に敗北した翌年の中間選挙で、オバマ大統領(当時)率いる民主党は大敗し、ブルーウェーブから一転、下院を共和党に多数派を奪回されましたよね。
ところで、なぜ共和党候補のヤンキン氏が支持を集めているのでしょうか?それは次回、お伝えします。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年10月12日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。