共産党は民主主義化せよ(屋山 太郎)

会長・政治評論家 屋山 太郎

この夏、都内でタクシーに乗った時、広告用の小型テレビに、いきなり共産党の志位和夫委員長が現れた。「日本共産党は、中国共産党の政策を全く認めていません」と力説している。全世界の主要国は勿論、日本の主要政党は中国の軍備拡大を背景にした膨張主義を非難し、各国は対抗上、軍備を拡大中である。その最中の8月22日には横浜市長選が行われ、立憲民主党を始めとする全野党が支持した候補が大勝した。一方で、自民党支持率はジリジリと下がり、任期満了選挙では政権交代もあり得るとの見方が広がっていた。

日本共産党HPより

1959年に野坂参三氏率いる日本共産党の代表団は、中国共産党との間で「アメリカ帝国主義は日中人民の共通の敵」などとする共同声明を発表した。61年の中国共産党創建40周年にあたっては、日本共産党は「中国共産党と日本共産党の戦闘的兄弟的連帯万歳!」という祝賀メッセージを送っている。55年に「武装闘争路線」を放棄したとは言っているものの、日本政府は「共産党は『暴力放棄は、敵の出方に寄る』と述べており、公安調査対象だ」と言っている。

横浜市長選で立民候補が大勝したのは、共産、国民など与党以外の票が一体となったからだ。国政選挙でも、自民党に対応する野党が一体となれば政権交代も可能だ。09年には、民主党による政権が誕生したが、あまりの無能さに3年3ヵ月で終った。その後、自公政権が続いて野党の出る幕がなかったが、菅政権の支持率が30%を切るまでに下降。慌てた自民党が菅政権を交代させた結果、政局の雰囲気が一変。岸田新政権の支持率は59%(日経新聞)に挽回した。しかし新政権発足の相場は60か70%台であり、野党が萎んだとは言い切れない。

小選挙区制を採用する先進国で、政権交代がかくも困難な国はない。その最大の原因は「日本共産党」の存在だろう。10月末の総選挙を控え、野党は候補一本化を巡り、またも共産党との取引に頭を悩ませている。立憲民主党がもし政権を獲ったら、共産党を閣内に入れるのか。入れないとすれば、共産党は閣外協力で良しとするのか。この点を巡り、国民民主党は「共産党とは組めない」と断ずる。新しく連合の会長となった芳野友子氏も7日の記者会見で、立民が、政権交代した場合に「限定的な閣外からの協力」を得る合意を共産党と交わしたことについて、「閣外協力はあり得ない」と反論した。立民、国民、連合、共産の主張は、ここ20年近く続いた対立の延長であり、これでは選挙制度を中選挙区から小選挙区に変えた意味もない。

事態が片付くとすれば、共産党が党名を変えるか、党を民主的運営に変えるしかない。志位和夫委員長は21年間も委員長を続けている。それ以前の10年間は書記局長だった。政権交代を妨害しているのは共産党自身なのだ。イタリア共産党は自らの党を解散して左派政権を創造した。

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数


編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2021年10月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。