日本経済新聞の記事によれば、都心までのアクセスが必ずしも良くないマンションの売れ行きが好調だそうです。
例えば、東横線日吉駅まで上り坂で徒歩9分という「プラウドシティ日吉」(画像をブログでみる)は、販売センターへの予約が殺到して初回案内はウェブ対応に切り替えるほどの人気になっているそうです。
また、浦安の「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラ」は駅までバスで11分というバス便物件にも関わらず問い合わせが6000件を超える注目を集めています。
この背景にあるのが、コロナ禍でのリモートワークの広がりです。通勤時間を気にするより住環境を重視し、自宅での仕事のスペースの確保や周辺の商業施設へのアクセスの良さなどを評価して購入しているのです。
しかし、私はこのような郊外物件を購入することに賛成はできません。
まず、日本ではリモートワークが今後さらに本格的に普及するまでには、まだ時間がかかりそうです。外資系や一部のテクノロジー系の企業を除き、日本企業の多くはまだメンバーシップ型雇用と呼ばれる業務範囲が曖昧な雇用システムになっています。
ジョブ型雇用という、あらかじめ業務内容を明確に定めた雇用の仕組みとは異なり、リモートワークをすると曖昧な人事評価で、出社する人よりもマイナスになる可能性が出てきます。上司は目に見える人の仕事ぶりを過剰評価しがちですし、仕事も頼みやすいのです。そうなれば、再び会社で仕事をする人が増えていくかもしれません。
さらに、日本では既に人口減少が始まっており、公共交通機関も利用者が減れば運行頻度を下げるなど利便性にマイナスの動きが出てくることになるでしょう。交通アクセスの悪い場所で、住民の高齢化が進めば、リタイアする人が増え、移動する人の数も減っていきます。多摩ニュータウンのようなかつての郊外住宅地と同じことが繰り返される可能性が高いのです。
不動産とは目先のことだけを考えて購入するものではなく、10年20年後の経済環境を想定して保有していくものです。
将来の資産価値が高くなるとは考えにくい郊外物件のにわかな人気には、何だか危ういものを感じてしまいます。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年10月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。