なぜ自民党は苦戦しているかの真実はこれだ

八幡 和郎

衆議院が解散になった。内閣支持率はもう一つというが、支持率は低いが不支持率も低く、支持率が不支持の倍あるのだから十分な数字だ。自民党の支持率も高く、野党の支持率は惨めだ。政権交代を求める声なんぞ多くない。

しかも、甘利明幹事長の候補者調整など誠に見事だ。岸田総理も応援に回れば悪い印象はないし、高市、河野など応援弁士も清新だ。

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しかし、それでも、議席予測では自民党が20〜50議席位減らしそうだという。これは、どうしてなのか。

ひとつは、前回は立憲民主党に勢いはあったが、候補者の質が悪いし数も足りなかった。それで、議席数が伸びなかった。ところが、今回は、希望の党やその後、国民民主党から移ってきたそれなりの候補者がそろっている。

そして、共産党との候補統一もそれなりにはプラスになる。ただし、共産党と組むことで失う票も多いわけである。自民党の候補と前回の立憲民主党と共産党の候補者の票を比べて野党連合のほうが多いからと云って数字通りにはならないだろう。しかし、共産党攻撃の出足が悪かったと思う。

それから、自民党のベテラン議員が野党系の若い議員に苦戦しているところが目立つ。四年間選挙がなかったこと、コロナで十分に選挙区に入れなかったことが微妙に効いているのではないか。

さらに、そもそも、自民党の候補の質が悪いところも多い。自民党は野党に比べて党中央が公募して各選挙区に降ろすのでなく、地元から上げてくる即戦力を好む。これでは、質は確保できないし幅が拡がらない。

それから、論点で野党ペースに嵌まってしまっている。自民党が立憲民主党に、岸田首相が枝野幸男に明らかに優れるのは外交であろう。ところが、内政ばかり議論している。これは戦略上、非常にまずいと思う。それを争点にしないと共産党と協力することの危険性も浮かび上がってこない。G20だって行けばいい。もっとも土壇場でどんでん返しで行くかも知れないが。

野党のいうことを先取りしてしまうというのは場合によっては賢いが少しやり過ぎた。経済政策でバラマキ競争に加わるのも論外だが、これはまた、別に論じよう。

たとえば、赤木未亡人の手紙についても、岸田さんはちょっと踏み込みすぎたと思う。「行政の上に立つものとして、なんらかのかたちで仕事と関係した原因で亡くなった公務員の家族の方から手紙が来れば、誠意を持って拝見するのは当然というのが私の信条である。

しかし、どの方の手紙を見たかとか見なかったとかどう感じたかとかを申し上げたり論評することは他の方に失礼になりかねず申し上げないほうがいいと思う」とでもいえばいいのにと危惧する。

そうでないと、ますます、悪用される。森友事件と文書改竄事件はそもそも別の事件だ。そういう観点から、両方とも、視点を変えて反省のために、いちど整理し直すほうがいいと思う。再調査でなく、単なる再説明でもなく、再整理とでも位置づけたらどうか。