先日、沖縄中部病院・感染症内科の高山義浩先生と対談させていただいた。
高山義浩 vs 森田洋之 感染対策か?経済か?ぶっちゃけトーク Morita`s BAR#3
テレビ等で感染対策を訴えておられる高山さん。かたやこちらは医師の中でも感染対策慎重派として異端のレッテルを貼られがちな森田。壮絶なバトルを期待されていた方も多かったと思うが(笑)、対談は終始なごやかで、楽しい感じで終了した。
詳細は動画をご覧いただくとして、今回はその冒頭の、「今の感染収束はなぜ起きているのか?」
という話題について論じてみたいと思う。
高山さんいわく、
「沖縄に関して言えば、感染者の多い若者でのワクチン接種率がまだまだ高くないからワクチンは大して感染収束に寄与していないだろう。」
とのこと。
これは、沖縄だけでなく全国的にも言える。
以下の通り、感染者数が圧倒的に多い20代でのワクチン完全接種率はまだ50%程度だ。
10月の下旬のいま、全国の新規陽性者数は一日に200−300人。8月のお盆の頃は毎日2万5千人超の新規陽性者が出続けていたのだから、とんでもなく減っていることがわかる。
では、なぜここまで感染が減ったのか?
という問いに対して高山さんはこう言う。
「感染が拡大する理由が単一でないのと同じで、感染が収束する理由も単一ではないが、若者が会食・イベントなどかなり控えてくださったことが大きな理由の一つではないか」
これに対し私は、
「一つの有力株が一つの波を形成する。」
これが大きな理由ではないか?
という考え方を提示した。
というのも、国立感染症研究所発表の資料では、感染の波と株の関係がこういうグラフで表現されているのだ。
これを見ると、これまでの第1〜5波までのすべての波が一つの有力株によって形成されていることがわかる。しかもそのパターンはおよそ2ヶ月で拡大し、その後2ヶ月かけて収束する。おおよそそんな感じのパターンに読みとれる。
ということで、
今回もそのパターンだっただけなのでは?
ということ。
ただ、私の見解はいわゆる帰納的な過去のパターン認識。たしかに医学においては演繹的な仮説より帰納的な統計事実の方が重視されるものだが、かといって「なぜそのパターンになるのか」もやっぱり気になるところだ。
そこで、こちらの論文がそのパターンになる演繹的な理由付けをしてくれそうな気がする。これは、あのノーベル賞の山中伸弥先生の京都大学iPS細胞研究所から出た論文だ。
加齢やサイトメガロウイルス感染が新型コロナウイルス反応性キラーT細胞に与える影響
この論文の冒頭には
ポイント
「新型コロナウイルスに反応する記憶型T細胞(交差反応性T細胞)が未感染の日本人においても確認された」
とある。
これはつまり、過去に旧型コロナウイルス(普通の風邪ウイルス)に感染したときの免疫が新型コロナに反応している(これを交差免疫という)、ということだろう。
もしかしたら、日本では過去の風邪で得た旧型コロナの免疫が広く国民に獲得されていて、新型コロナウイルスが拡散しても多くの人は検査に出るか出ないかくらいの軽症・無症状で済んでしまう…およそ2ヶ月かけて全国に広まり切ったら、その後は収束に向かう…みたいなイメージだろうか。
まあ、仮説なのだが。
とはいえ、この仮説だと上記の
「一つの有力株が一つの波(2ヶ月で拡大し2ヶ月で収束)を形成する。」
をうまく説明してくれる。というより、これ意外の説だとそんなにうまく説明できないのであれば消去法でこれを採用してもいいのでは?とも思う。
国民の健康が左右されるのだから、消去法みたいな消極的理由だと弱いかもしれないが…
とはいえ、感染対策をダラダラ続けることは、孤独・自殺の増加など別の意味で国民の健康を阻害する。経済にも大きな打撃を与え、子供の教育にも甚大に影響する。仮に過去の免疫記憶が今の日本人を守っているのだとしたら、感染対策を徹底している子どもたちは今、免疫をつけていく機会を奪われているのかもしれない。これが将来の健康にどう響くのか、今の医学ではそれもわからないのだ。
そういう意味では、帰納的にこれだけデータが揃っていて、消去法でも理屈が通るような理論があるのなら、感染対策を見直すことも日本にとってはとても大事な選択なのではないか、と個人的には思う。