ワクチン未接種者は外出制限措置に

コロナウイルスの新規感染者の急増を受け、オーストリア政府は22日夜、感染対策として5レベルから成る段階的プランを決定した。同計画はワクチンを接種していない国民をターゲットにしている。5レベルに入ると、ワクチン未接種者は外出制限を強いられることになり、野党ばかりか国民からも批判の声が聞かれる。

オーストリアの新規感染者数動向(9月25日~10月22日)AGES(オーストリア食品安全庁)から

野党の極右政党「自由党」キックル党首は「不謹慎であり、非人道的だ」とシャレンベルク連立政権を非難。リベラル政党「ネオス」は「対応として不十分だ」と指摘し、予防接種を受けていない国民を接種に導き、広範な抗体検査を実施することが優先だと主張している。

シャレンベルク首相は22日夜の記者会見で、「パンデミックは終息していない。ワクチン未接種者によるパンデミックに直面しようとしている。それを防止しなければならない」と強調し、「ワクチン未接種者に大きな責任がかかっている」と指摘した。ミュックシュタイン保健相は、「新しい規制は主にワクチンを接種していない国民を対象としている」と述べ、ワクチン接種を呼びかけた。

以下、オーストリア通信(APA)の記事を参考に政府が公表した5段階プランを紹介する。

レベル1から3は新しい内容はない。現行のコロナ規制の継続だ。レベル1は集中治療室(ICU)の占有ベッドが200から実施される。9月15日から施行されている。FFP2マスクの着用義務を施行中だ。対象はスーパーマーケット、他の食料品店、薬局、公共交通機関などだ。他の商店(衣料品店や電気機器の店)ではワクチン未接種者だけはFFP2の着用が義務づけられている。ただし、ウィーン市とザルツブルク市では全ての商店で義務づけられている。イベント開催は25人以上の場会、3Gルールが施行される。レベル1では抗原検査の有効は24時間に制限されている。PCRテストは72時間有効。ただし、ウィーン市は抗原検査は無効で、PCRテストは48時間のみ有効だ。

(時代は「3G」から「2G」、最終的には「1G」時代に突入しようとしている。「3G」とは、ワクチン接種証明書(Impfzertifikat)、過去6カ月以内にコロナウイルスに感染し回復したことを証明する医者からの診断書(Genesenenzertifikat)、そしてコロナ検査での陰性証明書(Testzertifikat)だ。ドイツ語で「Geimpft」「Genessen」そして「Getestet」と呼ぶことから、その頭文字の「G」を取って「3G」と呼ばれている。2Gとは、ワクチン接種証明書か回復証明書を有する場合を意味する)

新規感染者が急増してきた現状から判断すれば、レベル2は直ぐに入る。レベル2は集中治療室の使用率が15%(300床)を越えてから7日後に導入される。ミュックシュタイン保健相は、「まもなくレベル2に入るだろう」と予想している。夜のレストランに入るためには2Gルールが適応される。自宅で行う抗原検査(居間検査)は無効となる。

レベル3は集中治療室のベッド占有が20%(400床)になれば導入される。抗原検査は完全に無効となり、ワクチン接種者か回復者、PCR検査を受けた人だけがレストランに入ることができる。新しい点は、レベル3の措置は制限値を超えたときに直ぐ適応され、従来の7日間の待機期間はなくなることだ。

レベル4に入ると、全ての領域で2Gルールが施行される。ICUベッド占有が25%(500床)になった時にレベル4に入る。ワクチン未接種の人は、レストラン、ホテル、イベント、文化施設、レジャー施設、またはスポーツイベントに立ち入ることを禁じられる。これは、陰性の検査が提示された場合にも当てはまる。それが抗原であるかPCRであるかに関係はない。

レベル5はICUベッドの占有が30%を超えた場合(600床)に始まる。このレベルに入ると、ワクチンを接種していない人は外出制限の対象となる。パンデミックの初期に実施されたロックダウンを意味する。自宅を離れるのは食糧の買い出し、仕事に行くとき以外に禁止される(ワクチン接種者と未接種者をどのように識別し、コントロールするかなどは不明だ)。

自由党のキックル党首は23日、「何百万人もの健康で症状のない人々が隔離されると脅かされている」と、政府の5段階計画を批判している。ワクチン接種者もその有効期限が過ぎ、3回目の接種を待つとき、同じようにロックダウンされる危険性が出てくるからだ。

シャレンベルク政権の5段階計画案は与党国民党と「緑の党」、そして野党の社会民主党の支持を受けて承認された。フォアアールベルク州のマルクス・ヴァルナー知事は、「ワクチン未接種の人々が封鎖される可能性は実際は低いだろう。最後の段階は、CoV患者の集中治療室の占有が完全に手に負えなくなった場合にのみ実行されることになっている」と説明、国民の不安を宥めている。

なお、オーストリアでは10月23日までに感染者総数79万1710人、回復者総数74万3507人、死者総数1万0995人。新規感染者数はここにきて急増、10月19日は4007人だった。ワクチン接種率は今月24日現在、1回接種率は65.7%、2回完了接種率は62.7%だ。

Pixelci/iStock (編集部)


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年10月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。