中国不動産業界、ハードランディングを回避できるか?

中国の不動産開発業者が連鎖反応的に経営不振に陥っています。その中でも最大規模の恒大集団の行方は連日、日本だけではなく欧米でも報じられていますが私の直観ではこれはゾンビ化させるようにみえます。つまり、何らかの形ですくなくともしばらくは生かす算段に入ったとみています。

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中国にとって負のイメージとなる不動産業界の崩落はいくら強気の習近平氏でも政府の不介入姿勢を貫くことが危険であるとわかっているはずです。仮にドミノ倒しになった場合、習氏はその対応にエネルギーを割かねばならず、国家構築、自身の3期目の就任を前に絶対に避けねばなりません。ましてや欧米との関係がぎくしゃくする中、外交や貿易問題でもひっ迫した日々を送る中、これ以上の問題発生は絶対に抑えたいというのが本音でしょう。

現在デフォルトないし、ほぼその状態にあるとされる大手開発業者は10社以上あります。開発業者の倒産は建設会社への支払いが滞ることになるので深い連鎖が起きやすくなります。日本でもバブル崩壊後の処理に手間取ったのは巨額の金融機関からの借り入れと建設会社への支払い、更に値下がりした不動産に買い手がつかない状態が長く続いたことが原因です。

中国はそれを当然学んでいます。仮に今、中国の不動産業界にドミノ倒産が起きれば習近平氏の第3期目の計画は絵に描いた餅になるリスクすらあります。それにはハードランディングを避ける、これしかないと私は考えています。

そもそも恒大集団の経営不振について政府系新聞はあまり報じていないとされます。タブロイド的な報道では購入者や多額の社債を購入させれた社員の不満に焦点を当てていますが、経営そのものについてはまだ不透明さが残ります。その中で10月半ばに中国の中央銀行に当たる中国人民銀行の易総裁が中国恒大問題に関して「若干の懸念をもたらす」とした上で、「全体として、われわれは恒大のリスクを封じ込めることが可能だ」と述べています。

これは中央銀行を含む政府が何らかの対策に入っているとみています。また同社の社債の利払いについて今のところ、元建ての利払いはほぼ約定通りに行い、ドル建て社債に関して遅れが生じているものの1か月間のグレースピリオド(猶予期間)内には支払いを進めています。

では同社が倒産するリスクですが、子細に調べたわけではありませんが、普通、デベロッパーは負債も大きいのですが、資産も極めて大きいものです。よって同社の立て直し方法は必ずあるはずで今、利払いのために資産や子会社、別事業をバラバラと切り売りをするのではなく、落ち着くのを待って再建計画を出してくるものとみています。最終的には大規模な資産整理が行われ、企業としての法的倒産を踏まえるか私的整理になるかはわかりませんが、政府が裏で手を引きながらはめ込み先があらかじめ決まっているパッケージディールとなるのではないでしょうか?

中国政府にしてみれば国民の関心が高い不動産価値の大幅下落が目に見えて起きれば政府不信すら起こりえるわけでそんなことを習近平氏が放置するわけがない、というのが私の見方です。

これに関連して経営不振に陥り今年2月に倒産していた海航集団の再建案がまとまりそうです。同社は航空会社を主軸に様々な投資を行い、一時期、ドイツ銀行の筆頭株主であったこともあります。その負債は19兆円ですが、今般債権者会議で再建案が可決しています。

私は恒大集団の株価はウォッチリストに入っているので毎日、チェックをしていますが、ここに来て取引量が漸減し、落ち着いてきた感じはします。この手の会社は噂に振り回されて実態がよく見えなくなるのでそのあたりを注意深く観察すべきでしょう。ただ、来年は巨額の社債の一部の満期を迎えるはずで借り換えが一つの山場ではないかとみています。いずれにせよ、時間稼ぎをする、それが私の読みです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年10月29日の記事より転載させていただきました。