立憲は「共産党アレルギー」を甘く見てはならぬ

立憲民主党最大の危機

今回の政権選択の総選挙で、立憲は、公示前の勢力110議席から予想外に14議席も失った。反対に、予想外の絶対安定多数を確保した自民や、議席4倍増の大躍進をした維新に比べれば、立憲は「惨敗」と言わざるを得ない。

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しかも、今回の総選挙では、共産党との間で、限定的な「閣外協力」を行い、200を超える小選挙区で立憲を中心に候補者の「一本化」が実現していたにもかかわらず「惨敗」したのである。このため枝野代表は辞任を余儀なくされ、立憲は結党以来の最大の危機を迎えている。

 日本における強烈な「共産党アレルギー」

立憲「惨敗」の原因については、様々な見方があるが、筆者は共産党との「閣外協力」が致命的であったと分析している(11月8日拙稿「立憲民主党を惨敗させた共産党アレルギー」参照)。なぜなら、立憲最大の支持母体である連合を含め、日本国民の間では、「閣外協力」によって惹起された、共産党に対する国民の恐怖心すなわち「共産党アレルギー」が強烈だからである。

この「共産党アレルギー」は、日本共産党自身が自覚している以上に深刻であると筆者は考えている。なぜなら、中国共産党政権による組織的な香港・ウイグル・チベットへの人権侵害、北朝鮮労働党(共産党)政権による公開処刑、粛清、強制収容所などの恐怖政治が、「プロレタリアート独裁」の名において、近隣の共産党一党独裁国家で、今も現に行われているからである。しかも同じ「共産党」なのである。

そのうえ、年配者は、5年間にも及んだ日本共産党徳田球一書記長ら共産党指導部による戦後の大規模な火炎瓶闘争や交番襲撃などの暴力革命路線を鮮明に記憶しており、旧ソ連共産党スターリン書記長による「人民の敵」粛清、強制収容所、秘密警察(「ゲーペーウー」)、言論弾圧など、共産党の恐ろしさを知っている。

地方・農村における強烈な「共産党アレルギー」

そのうえ、日本の地方や農村では、「共産党アレルギー」は都会以上に強烈である。なぜなら、農村の大部分は自作農であり、先祖代々の農地を所有している。しかも、自民党政権下では、「農地法」によって、産業資本から農民の農地が厳格に守られているのである。

ところが、もし、日本に共産党政権が成立すれば、旧ソ連のコルホーズやソホーズ、中国の人民公社のような「農業集団化」により、先祖代々の農地が国有化・公有化され事実上国に没収されることを、農民は本能的に恐れるからである。しかも、旧ソ連や中国のように、農地を奪われた農民は、集団農場で「農業労働者」になる以外に生きる道はないのである。日本共産党は党綱領五で「生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化」を社会主義革命の最重要政策として主張しており、農地が「生産手段」に含まれることは明らかである。

立憲は「共産党アレルギー」を甘く見てはならぬ

今回の総選挙で、共産党の選挙協力によって当選した立憲の議員は、共産党から離れることはできない。なぜなら離れれば次の選挙で落選する危険性があるからである。したがって、そのような議員は、代表選等において、「共産党アレルギー」を無視又は軽視して、共産党との協力関係の継続を主張するであろう。

しかし、「共産党アレルギー」を無視又は軽視して、共産党との協力関係を継続する道は、立憲民主党の破滅の道である。なぜなら、今回の総選挙で立憲は「惨敗」し、「閣外協力」を含む立憲・共産の野党共闘が国民から支持されなかったからである。選挙後の共同通信の世論調査によれば、国民の61%は立憲・共産などの野党共闘の見直しを求めているのである。その最大の原因は、前記で述べた日本国民の強烈な「共産党アレルギー」が根底にあるからと言えよう。

立憲は、党勢を回復し、政権を獲得するためには、日本国民の間の強烈な「共産党アレルギー」を甘く見てはならない。今後、「閣外協力」を含む立憲・共産の協力・共闘関係が進めば進むほど、それに比例して「反共攻撃」も極めて激しくなり、国民の間の「共産党アレルギー」はますます強まるであろう。