下院で1.75兆ドルの歳出法案が可決しましたので、加筆致します。
米議会予算局(CBO)が18日、1.75兆ドルの社会保障関連・気候変動対策向け予算「より良い再建法案(BBBA)」がもたらす財政の影響を試算し、その結果を報告しました。
試算によれば、2022~2031年の10年間で財政赤字は約3,760億ドル拡大する見通し。ただし、内国歳入庁(IRS、日本の国税庁に相当)への予算増額に伴う徴税強化を通じた2,070億ドル相当の歳入増加を含めるならば、向こう10年間の財政赤字拡大幅は1,270億ドルへ縮小します。
とはいえ、ホワイトハウスが予想したネットでの歳入増には至りません。結局、BBBAは財政赤字を拡大させる見通しです。
チャート:どちらの試算が最も現実的?
BBBAは財政調整措置を活用しますから、民主党の単独過半数で成立が可能となります。民主党中道派が求めていたCBOの試算を受けて、米下院は本日にもBBBAを採決する方向です。下院では、5人の民主党中道派が財政拡大に難色を示してきました。その5人とは以下の通りで、そのうち2人は試算に満足した様子ですが、1人は依然としてBBBAを支持しない方針を固めています。
チャート:CBOの試算を求めた民主党下院中道派5名
下院で民主党が許容できる造反者は3人までですが、18日にはマッカーシー共和党院内総務の4時間にわたる大演説で妨害が入ったこともあって、無事に通過することでしょう・・・と思ったら、19日の午前中に220対213で可決しました。民主党議員の造反は、1人にとどめたかたちです。
今後は、中道派マンチン議員が立ちはだかる上院でどうなるかが問題。恐らく、マンチン議員が反対するEV向け税額控除(労働組合を擁する米工場で生産されたEV購入者に、追加で税額控除4,500ドル)は修正せざるを得なくなるでしょう。仮にこれが盛り込まれても、米国・メキシコ・カナダ協定に参加するメキシコとカナダが苦情を寄せており、国際問題となりかねません。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年11月19日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。