中米政府がジャーナリストを大弾圧:「今日が最後の日になるかもしれない」

中米のジャーナリストへの弾圧が続いている。

ロサリオ・ムリーリョ副大統領(妻)ダニエル・オルテガ大統領(夫) NICARAGUA, DANIEL ORTEGA CON OPRESIÓN. 17-11-2021.

中米ニカラグアの大統領による報道メディアへの弾圧

大統領再選の選挙で投票を棄権した有権者が81.5%もいるのに、74.99%の得票率で棄権者は34.66%だと偽って4期目を迎えた大統領が中米にいる。(11月9日付「ABC」から引用)。

その人物とはニカラグアの大統領ダニエル・オルテガ氏(75)だ。対立候補はいない。何しろ、7人の大統領候補者は拘束されているからだ。ギャラップ調査でも、オルテガ氏を支持する有権者は19%を超えないとされている。

また、米州機構(OAS)はメキシコを含め7ヶ国が棄権したのを除いて40ヶ国がこの選挙結果は正当性がないとした。(11月13日付「エルパイス」から引用)。

現在、ニカラグアには政治犯として150人以上が収監されている。その内の40人は野党のリーダーたちだ。この中に前述した大統領候補7人も含まれる。また政治犯の中で政治家以外に比率として高い割合を占めているがジャーナリストだ。(11月3日付「エル・パイス」から引用)。

多くのジャーナリストがコスタリカに亡命して報道活動を継続

ジャーナリストへの弾圧が起きた起因は2018年にニカラグアで社会保障制度の改正に市民が抗議したことが始まりだ。この改正によって市民の負担金が値上げされることになった。この抗議を主導したのは大学生で、それが暴動化して全国規模で展開された。それはオルテガ氏の独裁政治に反対する抗議でもあった。この暴動によって数百人が死亡。12万人が国外に脱出するという事態に発展した。

この暴動が全国規模で発展したのは報道メディアがそれを煽ったからだとしてオルテガ大統領は報道メディアへの弾圧を強化。主要紙の発刊に必要な設備などを押収。それが起因となって、多くのジャーナリストが国外に脱出。特に、隣国のコスタリカに逃れ、そこからニカラグアに向けて報道活動を続けている。

例えば、ニカラグア・インベスティガ紙のディレクタージェニファー・オルティッツ氏の場合、今年6月に2回目のコスタリカへの亡命を果たした。それは彼女が運営する報道メディアを存続させるためだった。

彼女はニカラグアで報道活動を続けるのはあたかも戦場でジャーナリズムを展開しているようなものだと指摘している。というのも「取材で出かける時に、負傷するのではないか?、今日が最後の日になるかもしれない? といったことを考えさせられる。なぜなら殺害されたり、誘拐されたり、拘束されたりするかもしれないからだ」と語った。

ジャーナリズム活動をすることは政府にとって一番の敵になることで、政府は権力を維持する為には如何なることをするのも厭わない。このような条件下でジャーナリズム活動をしていることから、彼女は住む場所を変えたりせねばならなくなり彼女の娘は学校教育が2年遅れているそうだ。

一方の独裁者オルテガ氏の狙いは情報源をできるだけ少なくさせて行くことだ、としている。また政府からの報復を恐れてこれまでの情報提供者も情報をメディアに流さなくなっているという。そして、記事になってもその執筆者の名前を掲載することを控えるようになっている。政府からの報復を警戒してである。

エルサルバドルの大統領もメディアへの弾圧を強化

ニカラグアのこの流れに追随しているのが特にエルサルバドルだ。2019年にナジブ・ブケレ氏が大統領に就任してから次第に独裁色を強めている。

元々、エルサルバドルは犯罪の多い国であった。2018年に65件の暴行事件が発生したが、ブケレ氏が大統領に就任した2019年には77件。2020年には177件となり、今年に入って7か月の間に既に164件が記録されている。

エルサルバドルは法治国家としての体をなさず、憲法裁判所、最高裁、検事総長らが解任させられてブケレ大統領が指名する人物がその空席を埋めるようになっている。

メディアが報道した内容が政府への批判に繋がると、まず最初にそれを取り上げるのがブケレ大統領で、ツイートでそれを批判したり侮辱したりする。その後副大臣や大統領の与党の議員が攻撃的な姿勢を示し、彼らの親派で政府からお金をもらっているインフルエンサーを動かして批判の対象となっているメディアに暴力的行為を実行する。このようにしてブケレ大統領は政権の安泰を図ろうとしている。

米国の在エルサルバドルの元大使だったジェーン・マネス氏は現在米国政府を代表してエルサルバドルとの外交交渉を担当しているが、エルサルバドルの民主政治は崩壊しつつあり、ベネズエラのようになって行くのではないかと懸念している。

彼女がその要因として挙げている中に独立系の報道メディアへの攻撃そして破壊を挙げている。(9月21日付「エルサルバドル」から引用)。

ブケレ大統領は議員に圧力をかけるべく2020年2月に議事室に軍隊と警察を侵入させるという出来事もあった。

ニカラグアそしてエルサルバドルに続いて報道メディアが政府から弾圧されているのがホンジュラスとグアテマラである。中央アメリカ連邦5ヶ国の中で唯一民主政治が施行されているのはコスタリカだけである。

中米4ヶ国の報道メディアの自由を守るフォーラムCAP

そのような事態に及んで、11月初旬から1週間に亘って3か国エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラのそれぞれの首都サンサルバドル、テグチガルパ、グアテマラとで連携して50人余りのジャーナリストがフォーラムCAPと称して報道メディアの自由が権力の前に脅かされていることへの取り組みを協議した。(11月4日付「エルパイス」から引用)。