今週のつぶやき:中国の特殊性ほか

岡本 裕明

アメリカは木曜日が感謝祭。最近ではクリスマスより感謝祭という流れもあり、休み明けのブラック フライディ セールが注目され日本でもそれに乗じたセールがあちらこちらで行われているようです。ラジオをつければこの時期、クリスマスソングしか流さない放送局がいくつもあり、キリスト教信者ではない私にとって「あぁ、またやってきた」とやや憂鬱になることもしばしば。それにしてもモノ不足の今年のブラック フライディ セールはどんなことになるのか、高みの見物をさせて頂きます。

RomoloTavani/iStock

では今週のつぶやきをお送りします。

売り崩し

金曜日の東京市場で株価が747円下落しました。一夜明けたNY市場ではダウが一時1,000㌦も下落しました。理由は南アフリカで発見された新型ウィルス。しかし、今の時点では何もわかっておらず、感染者の数も爆発的というほどではありません。なのに溶け落ちるほど売られた理由は何でしょうか?

典型的な売り仕掛け、だと思います。アメリカが感謝祭で市場参加者が少ない中、まず、東京で売り浴びせを行い、市場心理を揺さぶります。そこから地球儀をぐるっと一周させている間に心理はどんどん悪化します。感謝祭明けの金曜日のNY市場は半ドンの短い取引になりますから市場が気持ちを取り戻す時間的余裕がないのです。特に商いが薄く価格が飛びやすい原油市場は暴落、仮想通貨も暴落、旅行関係の株も暴落…となるのです。

市場のメンタルがお祭り気分で緩いとこうなってしまいます。逆に言えばこういう時に付け入るスキもあるということです。まぁ、一種のゲームであり、心理作戦となるのですが、個人的には収まるとみています。コロナについては明日のブログのテーマにします。ただ株式市場だけ見ると年末までの取引ベースで確定申告をすることを考えれば今年、利が乗っている人が損失との相殺取引をする可能性があり、売り圧力は一定水準出やすくなることは確かです。またボリュームが取れる取引はあと2週間しかありませんから年末にまたこのような嫌なニュースが飛び出すと再び売り崩しが起きかねない点は留意が必要です。

中国の特殊性

ソフトバンクが出資するDiDi(滴滴)が今年6月、当局の警告を無視してNY市場に上場したことを根に持っていたのでしょう。今になってNY市場の上場を廃止するようにと勧告、その対策に入っているようです。中国政府がそこまで民間に関与できるとすれば常に顔色をうかがわざるを得ず、もはや個人の意思も企業の自由な活動も制約されます。いや、もう少し正しく述べるなら自由な活動をすることで「影響力を持っても儲けすぎてもいけない」のであります。よって企業のみならず、個人で資産を築いたような人や有名人への監視の目は日増しに強くなるのです。

一言でいえばフラット社会を目指しているのですが、人間は本当にフラットな社会で楽しく過ごせるのでしょうか?私は差があるからこそ、頑張る人が出て、競争意識が出てよりよい経済、社会、文化が生まれて人々の生活を豊かにすると思っています。今、誰でも携帯を持っていてその携帯の機能を使って日々の生活が充実しているでしょう。これはフラットな社会なのです。しかし、それはアプリを開発する人たちの競争力の産物であります。つまり、確かに競争で勝ち抜いた人が作りだしたものですが、それは全ての人と便益を分かち合うことができるのです。これは差がないと生まれないのです。

ロイターによると中国は学校教育においてフラット化を目指し私学を公立に転換するとあります。高額の塾もダメ。では小学生のクラス全員が全ての科目で5段階の3か4を取ればいいのでしょうか?個人それぞれが得手不得手があり、それが逆に補い合う社会を形成していくものではないでしょうか?中国が目指すフラット社会とは共産党に歯向かう人間を生み出さないよう個性を抹消し、洗脳教育によって思想の選択を厳しく制限することになるでしょう。私は中国の未来は終わったと思っています。中国から技術も創造力も生まれず、模倣社会が跋扈し、日本など諸外国から能力ある人を三顧の礼で招き入れる流れが強まると思います。

野党とは何か?

立憲民主党の代表選が30日に迫っています。泉氏がリードという報道もありますが、今一つ盛り上がらないのはなぜでしょうか?日本には自民党という巨大政党があります。政権担当経験者も数多く、ニッポン丸の運転の仕方をよく知っているので安心感があります。ただ、日ごろいうように時代背景が大きく変わる中、この数年は自民党のままでいいのかな、と思うときもあります。

野党が元気だった戦後直後は日本も元気だったと思います。つまり、与野党が拮抗し、切磋琢磨し合うことこそが日本をより高みに持っていくものだと思うのです。アメリカの二大政党は社会的背景が違う日本で根付くとは思いませんが、与党は緊張感の中で政権運営をすることが求められるのに今はライバルが無くて好き勝手できます。その中、野党第一党である立憲民主党は本質的な存在感を失い、常に自民党だけを意識する政党となり替わってしまいました。

政党とは支持者がいて成り立つものです。その支持者の期待にどう応えるのか、党利党略ばかりではなく、日本をどう変えるべきなのか、この20年の社会の変化、そして今後もっと変わるであろう時代をどうやったら過ごしやすくなるか、という独自の視線と信念を持ってもらいたいのです。例えば自民党は賃金を3%上げろと経済界に要請しました。それは上から目線なのですね。そうではなく、企業がどうやったら自然と3%でも5%でも賃金を上げてもよいと思うようになるのか、その仕組みを考え、提言するのが野党の役目だと思います。与党とガチンコ勝負するのではなく、与党にできないことを野党が提示する、これが私の期待する真の役目です。

後記

クリスマスが近づきプレゼント交換などという懐かしい響きの儀式に頭を悩ませています。もらう方もあげる方もこの豊かな時代に何が欲しいのかな、と思うのです。それこそ、70-80年代、あるいは物欲旺盛な子供ならまだしも、いい大人同士がギフト交換?そういえば日本に行くのにカナダの土産を買ったことはほとんどなし。理由はそもそも日本にあるものの方が良いものばかりで喜ばれないから。スモークサーモンにメープルシロップばかりでもねぇ、と自問自答しています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年11月27日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。