第6波ではコントロール群を置いた実証実験を行うべき

2020年春に実施された小中学校の臨時休校では、休校により新型コロナウイルス感染症の拡大は抑制されなかった、という論文(Nature Medicine)が発表されました。これは、国の指示に従わない自治体が複数存在し、その自治体の小中学校がコントロール群となったため、成立した研究です。論文として認められるには、コントロール群が必須です。

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緊急事態宣言の賛否、新型コロナをインフルエンザと同じ5類感染症に格下げすることの是非については、多くの識者により議論されています。しかし、いつまでたってもコンセンサスが得られません。それは、コントロール群を設定した実証実験を行っていないからだと、私は考えます。コントロール群を置いていないデータで議論しますと、仮説が積み上がるのみで、いつまでたっても真実には到達できません。

第6波が実際に来た時には、再び緊急事態宣言が発出されると予想されます。緊急事態宣言を発出するのはだめだと言うつもりはありません。しかし、毎回同じような宣言を発出するというのでは、あまりに芸がありません。ワクチンにより致死率は下がってきましたので、「緊急事態宣言は本当に効果があるのかどうか」について、検証すべき時期がきたのだと、私は考えます。

コントロール群を置くということは、感染率(陽性率)と年齢構成がほぼ同じ県で、緊急事態宣言を発出する県と発出しない県に分けるということです。コントロール群の県を複数置けるのであれば、制限する内容を3段階くらいに分けて、比較するのもよいかもしれません。そのようにすれば、どのような制限が最も有効かがはっきりします。新型コロナを、インフルエンザと同じ5類感染症に格下げすることも、特定の県のみで実施すればよいのです。

東南アジア韓国など、ウィズコロナへの方針転換を模索する国が増えてきています。私は、国全体の方針を一気に変更する方法には賛成できません。一気に変更してしまうと、何が有効で何が無効なのか、わからなくなってしまいます。コントロール群を置いた実証実験を繰り返すことにより、方針は決定されるべきなのです。

県知事の権限の問題などで、このような実証実験の実施は簡単ではないかもしれません。総理大臣の強力なリーダーシップがないと実現困難かもしれません。国民の説得も必要です。今の総理大臣にそれを実行する胆力があるのか、少し不安なところです。

このような実証実験は、一種の人体実験だから容認できないという反論があるかもしれません。人体実験の要素があるのは確かです。しかし、よく考えてみてください。現在接種しているコロナワクチンも、ランダム化比較試験により有効性が証明されているのです。つまり、コントロール群の人たちは、ワクチンの代わりに効果のない偽薬を接種されているわけです。そのような人たちの犠牲の上で、ワクチンの有効性は立証されているのです。

医学の進歩の影には、大なり小なり人体実験の要素がついてまわります。ワクチンや薬の開発には、ランダム化比較試験による臨床試験は必須です。そして、コントロール群には効果のない偽薬が投与され、犠牲となります。きれいごとだけでは、医学は進歩しないという現実を直視するべきと、私は考えます。

【補足】
臨床試験に参加する人には、高額の謝礼金が支払われます。単に犠牲になるわけではありません。このような礼金は、ワクチンや薬の開発には莫大な資金が必要となる要因の一つです。