パニックに陥ると役所の人もこういうチョンボをやってしまう、という実例でしょうね
緊急事態条項を憲法に書き込むべし、などという話がよく出て来るが、私たちは結構愚かなので、内閣や行政当局に余りに過剰な権限を与えることになってしまう緊急事態条項の創設はくれぐれも慎重に検討した方がいい。
国土交通省が各航空会社に対し、日本着便の国際線新規予約停止を要請したが、帰国予定の邦人らの反発でこれを急遽撤回した、という。
多分、国土交通省の航空局がオミクロン株対策の一つとして発案したのだと思うが、担当者の方々は当時一種のパニック状態に陥っていたのだろう。
これは単なる要請でしかない、決めるのはあくまでそれぞれの航空会社だ、などと強弁しなかったことはよかったが、役所からこういう要請が正式になされると、法的には強制力がなくても事実上はこれが罷り通ってしまうから、事実上の強制力を伴う行政指導や命令等はそう簡単に発しない方がいい。
私たちは、結構愚かである。
愚かな私たちの中では、比較的賢いと思われている行政当局も、時々こういう間違いを犯してしまう。
今回は、様々な方面から批判の声が上がって、岸田総理がこれを耳にして直ちに新規予約停止要請を撤回したから辛うじて事なきを得たが、内閣や行政当局が常に正しい判断、適正な判断をするとは限らない、ということを私たちは知ったはずである。
いずれ、憲法改正問題が国政の大きな課題として浮上する。
今回の事例は、緊急事態条項創設問題を考えるうえで参考になるはずだ。
まあ、こういう朝令暮改は仕方がないでしょうね。間違いに気付いたら、さっさと訂正・修正しましょう
過ちてこれを改めざるを過ちと言う、というところだろう。
朝令暮改だ、などと批判される方もおられるが、間違いに気が付いたらさっさと改めることである。
霞が関には、一旦決めたことはなかなか自分では改められないようなところがあるが、岸田さんにはそういうところはなさそうだ。
一度決めた方針を撤回するのは、どなたでもそれなりに恥ずかしいものだ。
どんなことがあっても自分の過ちを認めない人が世の中には結構多いが、岸田さんは極めて柔軟な発想の持ち主のようである。
国土交通省の交通局の担当者の皆さんが、後手を踏まないように、先手先手で動いたのだと思うが、そのスピード感は悪くない。
ちょっと慌て過ぎましたね、世間の反応を読み誤りましたね、とは申し上げたいが、しかし、担当者の皆さんをいつまでも責めない方がいい。
憲法違反だ、などという声を上げている方がおられるが、緊急事態、非常事態に遭遇した時にとりあえず行政当局がどう対応すべきか、ということは結構難しい問題である。
朝令暮改のように見えるだろうが、やり過ぎに気付いてさっさと訂正・修正し結果的にほどほどの措置に改めたのだったら、今回はよしとすべきだろう。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2021年12月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。