野党は3回目接種について閣僚の優先接種を提言しませんか --- 田中 奏歌

コロナの3回目接種が始まる。またもや医療関係者優先である。

確かに一番最初に接種したのだから、早めに接種するのはおかしくはないし今更何も言うことはないが、本来はその前に優先的に接種すべき職種の人たちが漏れていると思う。特に野党の皆さん、この際、少し優先順位を見直してみませんか。

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医療関係者が優先されるのは、国民のコロナによる被害を防ぐための最前線にいるから、という位置づけであろうが、もっと最前線にいる人があることをなぜ重視しないのであろうか?

それは閣僚と首長たち、国会議員、地方議員である。さらに、防衛・救急・消防に携わる人たちだけでなく、施策決定と遂行を支援する一部の重要な国家・地方公務員たちであり、この方々が最前線にいるはずである。

これらの人は国民の安全を守るために、ほかの要員では代替がきかない緊急を要する業務を抱えている。この方々の行動は多くの場合、医者よりも多数の国民の命を守ることができる。

医者では命を守れないというわけではなく、どちらがより多くの命を守れるか、という判断である。

特に閣僚や地方自治体の首長たちは多くの緊急を要する政策の意思決定を求められているのであり、コロナの回復を待ってから、ということは極力回避すべきだろう。

国会議員や地方議員は、あとで政策をチェックすることが可能、という点ではこの中での優先順位は低いが、それでも医療関係者よりは上位であろう。

重要な職務を遂行するこれらの国家・地方公務員などの皆さんの優先順位についても述べたいが、この論ではあえて、あまり話題になっていない、政治家の優先接種について提案したい。

はっきり言って何名かの医者が感染して前線から離脱したとしても、少ないとはいえ医者は一人ではない。しかし、国や自治体の行政の意思決定をする政治家には代わりはいない。確かに、こんな人はいらないと思うような政治家もいるが、少なくとも国民の預託を受けて選ばれた政治家に代わりはいない。国や自治体の方針を決め遂行するこの方たちが優先的に接種を受けないでどうするのであろうか。

国会議員のワクチン優先接種について「言語道断だ」と言い放った政党共同代表がいたが、危機意識のなさにはあきれかえるばかりである。閣僚や国会でクラスターが発生したら、日本のコロナ対策をどうするつもりだったのだろうか。反対一辺倒ではなく、是々非々で対応するといっている政党とは思えない危機意識のなさである。こんな危機意識のない政治家には政治をまかせたくない。

「そういう発想自体、上級国民といわれても致し方ないのではないか」とその方はおっしゃったが、「上級国民」でいいではないか。選挙を経て国民の預託を受け国会議員となり、その国会議員の中から選ばれて行政権を預託された首相とその彼が任命した閣僚が上級国民でないわけはないではないか。少なくとも民主主義国家である日本では、国民が、この国のコロナ対策、いやそれ以外の重要なことをも責任をもって遂行させる権利をこれらの政治家に与えたのである。残念ながらどんなダメな政治家でも、選挙を経ない限りは他に代わる人はいない、という意味では、次回の選挙までではあるが、まさに「閣僚や首長たち、議員は上級国民」なのである。これを無視するのは民主主義の危機であり、議員としての自覚に問題あるのではないか。

※「上級国民」という言葉には違う意味があるのは承知しているが、そういう表向きの言葉に引きずられてポピュリズムに走るな、と言っているのである。

少なくとも行政権を持つ政治家が救える人命のほうが、我々庶民が救える人命より多いはずだという冷徹な判断ができない政治家は能力がない(はっきり言って、邪魔をしているとしか思えないような、いなくなってほしい政治家もいるが、ここではあえて原則にのっとって提案したい)。

本当は、菅前首相自ら胸を張って「皆さんを守るために優先接種する」といってほしかったのだが、マスコミの当時の扇動ぶりを見ると、残念ながら首相自らがそういえる状況ではなかった。

ならば、野党をはじめとする議員が内閣に対し、「閣僚は優先接種するように」と提言しませんか。

内閣が自ら言いだせずリスクを放置している形の「閣僚の優先接種という重要なコロナ対策」を野党が率先して求める、これこそ、まさしく野党の責任ある行動ではないか。それに現状では野党以外に効果的にこの正論を言える人はいない。マスコミがどう言おうと野党がきちんと説明することで、「批判だけではなく、対立する内閣であっても国民を守るために民主主義は守る」ということを国民に示すことができる。「内閣よりも国を大事に考えている政党である」ということを国民が認識すれば、野党の政権担当能力も見直してもらえるのではないだろうか。

内閣だけでなく地方の首長たちも同じである。国民の理解がすすむことで、内閣や首長だけでなく言い出しっぺの議員たちにも優先接種が必要である、という声が出てくればしめたものである。

実際には医師会の力はあなどれないので、医療関係者の優先順位を下げるとなると厳しいだろうが、そうせずとも今のワクチン需給ではこの程度の優先順位の見直しは不可能ではないだろう。

野党の皆さん、今がチャンスです。ぜひ声を上げていただけませんか。

※上記優先順位の見直し提案は、2回目接種との間隔を8ケ月以上あける必要があるのではなく早く接種しても健康上また効果の上でも問題ない、と判断しているならその問題ない範囲内での優先順位の話とお考え願います。

田中 奏歌
某企業にて、数年間の海外駐在や医薬関係業界団体副事務局長としての出向を含め、経理・総務関係を中心に勤務。出身企業退職後は関係会社のガバナンスアドバイザーを経て2021年4月より隠居生活。