今週のメルマガ前半部の紹介です。先日、ビジネスパーソンにとっては要注目の判決が出ましたね。
【参考リンク】「子育てに支障」転勤拒否訴訟 大阪地裁がNEC系元社員の訴え棄却(朝日新聞デジタル)
日本では転勤を断ったら懲戒解雇されうるというのは割と有名な話で、昔の判例も存在するんですが、21世紀のリアルタイムでこういう判例が出てくるとなかなか感慨深いものがありますね。
少なくとも司法の世界では日本型雇用はまだまだ盤石のようです。いい機会なので、今回は転勤との向き合い方についてまとめておきましょう。
「サラリーマンならしのごの言わず転勤しろ」は過去の話?
実は事業責任者でもない普通のビジネスパーソンが、会社都合で全国の事業拠点に転勤させられるのは日本くらいなんですね。ジョブ型の場合はおおよそ勤務地も限定されますから。
以前も書きましたが、人手不足の事業所に余剰人員を移すことで終身雇用を維持するツールとして、司法からも認められている仕組みなんです。
要するに、ハロワ機能の一部を民間企業が自分で行っているわけですね。
もちろん家庭の事情で転勤しづらい従業員も多いんですけど、労組に相談してもたいていはやんわりと協力を断られます。所帯も持ってない若手が「田舎に転勤したくないんですけど」とか相談にいくと「おまえサラリーマン舐めてんの?」と説教されると思いますね(苦笑)
なので、長いこと「会社で出世したいなら喜んで転勤しろ」というのはサラリーマン処世術のセオリーでした。
日本企業で将来的に経営幹部になるには、複数の事業部を経験して幅広い人脈を持つゼネラリストになることが不可欠です。
また、転勤をいっぱい経験しているということは、それだけ組織内で引き合いがある人材だという証明にもなります。仕事できない人や素行に問題のある人間は引き取り手がないですから。
転勤というのはサラリーマン的にはけして悪いものでもないんですね。
ただ、2010年代以降になって、かなり空気が変わってきた印象がありますね。
具体的に言うと「なんで偉くもない普通のサラリーマンが会社都合で生活拠点を移さにゃならんのだ」という当たり前の疑問を抱く人が一気に増えた感じです。
疑問を抱くだけではなく、実際に「転勤は嫌です」と断る人も増えたという話はあちこちから聞いています。この働き手不足のご時世、会社もある程度は従業員の事情に配慮するようにもなりました。
【参考リンク】脱「昭和スタイル」進むか? 望まぬ転勤・単身赴任に見直しの動き 共働き増え、働き方に変化
なぜ流れが変わったのか。恐らく、90年代までは「転勤や単身赴任はつらいけれども我慢すれば出世や昇給などで将来報われる」という暗黙の前提が機能していたんでしょう。
でもその前提の後半部が完全に崩れちゃったことで、みんな我慢するのがイヤになったんでしょうね(苦笑)
いいんじゃないですか、勤務地を自分で選ぶのは世界標準なので。意に添わぬ転勤にはどんどん「No!」と言ってやりましょう。
とはいえ、終身雇用制度が存続する限りは、雇用調整ツールとして残業同様に転勤制度も完全にはなくなりません。会社員である以上、転勤とはなんとかして共存していく以外にありませんね。
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以降、
出来るビジネスパーソンは会社をこう使え
35歳以降は会社と割り切った関係に
Q: 「“上司ガチャ”ってどう思いますか?」
→A:「上司ガチャの最大の影響はやはり査定でしょう」
Q:「民間企業で男性で育休取得するとキャリアに影響しますか?」
→A:「影響あると言っている会社はありませんが…」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2021年12月9日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。