今週のつぶやき:39年ぶり物価水準が株価にどう影響するだろう?ほか

ホリディシーズン真っただ中でレストランの予約も一苦労。ある集まりで8人の予約をするのにカードで一人2000円強、合計約18000円の予約金をオンラインで払わないと予約完了にならず、メニューはグループメニューで特別仕様。チップは19%自動加算。ワインは一杯約2000円。別にここは高級店ではありません。最近、私もレストランでメニューを見るとワインの価格が高くて飲めず、コスパが良いビールを飲んでいます。尋常とは思えない域に達したレストラン物価に私もついに音を上げつつあるということです。懐が痛い!

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では今週のつぶやきをお送りします。

39年ぶり物価水準が株価にどう影響するだろう?

アメリカの11月度消費者物価指数が39年ぶりとなる6.8%も上昇しました。コアでも4.6%上昇で、その内訳は食品が前年比6.4%上昇、ガソリンは58.1%上昇です。また一般物価では衣料、インテリア雑貨、航空料金の上昇が目立ちます。つまり、大雑把な話をすればエネルギー価格の上昇と食品資源価格がキー、次いで輸送が滞り、消費者に選択の余地が無くなった衣服などの価格上昇が激しかったということになります。

これを受けて12月14-15日のFOMCでは量的緩和縮小を加速させることはほぼ確実で市場は既にここを折り込み、あとは利上げがどう差し迫るかの判断どころになっています。パウエル議長はインフレが「一時的」という発言を取り消しており、利上げ環境を整えています。ただ、個人的には2-3月にこのインフレは沈静化するとみています。理由は来なかった物流が遅れて配達され、企業は在庫処分に苦慮するからです。また2-3月は旅行シーズンでもなく、一般に12月のクレカの請求書をみて消費が最も落ち込む時となります。

私には現在の需要は仮需にしか見えないのです。経済のエンジンが6-7割しか吹かせないのにないものねだりをする消費者であります。来年の株価の予想ほど難しいものはなく、私がある雑誌に毎年寄稿している「ヒロの10大予想」の原稿で来年の株価予想を放棄しました。ネガティブなニュースが並ぶ中、長期にわたる緩和マネーで金余りは継続します。乱高下、これが敢えて予想できることです。ちなみに日本の株価、期待される今年の「掉尾の一振」ですが、今後2週間で28社のIPOがあるためエネルギーを吸い取られて空振りではないかとみています。

民主主義サミットby バイデン大統領

オンラインで開催されたこの初の民主主義サミットには110の国と地域が参加したとあり、日本からも岸田首相が出ています。ですが、今一つ、メディアの露出が少ないのは中国への配慮というよりそもそも主眼がよくわからない集まりだった気がしています。民主主義といってもその定義は幅広く、この会議に呼ばれなかった中国では「中国的民主」という白書を今月初めに発行、自分たちは独自モデルを築いたと主張しています。NHKによるとスウェーデンの研究機関の調査では116の指標を基に、民主主義国家は98と2015年から6つ減。一方、ロシアやトルコなどのハイブリッドが23,中国や北朝鮮など権威主義44と増えています。つまり逆行です。

サミットをするならば民主主義の弊害も議論をすべきでしょう。その弊害を一番感じているのは当のアメリカのはずです。民主党政権が一枚岩にならないのは民主という名の我儘がいかにも道理ある論理と言わんばかりとなり、国政が滞っていることを知るべきです。もちろん、民主的議論をする機会は重要ですが、その結果はほぼ中庸なところに落ち着きます。日本でも世代間の感性の違いから「誰のための何のための民主主義か」という切り口となれば誰も意見を述べません。

個人的には声高に叫ぶ民主主義がやや偽善的に聞こえなくもなく、我々は次のレベルを模索するときが来たのではないかと考えています。一方、バイデン大統領は民主主義サミットをプロパガンダとしており、結果として世界の和平を恣意的に乱すことになりかねません。正直、今のアメリカは創造的ではなく、政治的バトルの中で自己都合と利己主義のごり押しです。アメリカこそ、国家維持と発展の意義を再考すべき時ではないかと思います。

HIS子会社のGOTO補助金不正受給問題

この問題は一般ニュースではあまり報じられていないかもしれません。理由はTBSテレビの独自取材による特ダネだったからです。(当然、TBSでは詳報が得られます。)GoToトラベル事務局からの「〇〇ホテルに69連泊しましたか?」という一通の手紙が本事件のきっかけでした。もちろんこの手紙をもらった人にそんな事実はなく、それをTBSに情報提供し、同局が1-2カ月かけて追跡調査していたものでした。結果は一部報道の通り、HIS子会社2社がそれぞれ13800泊と4800泊を実体のないままGoTo申請しており、それに伴う補助金の不正取得は数億円に上ります。

HISの澤田氏も驚愕の事実に愕然としていることだろうと思います。私が社長ならこの2社は清算しかありません。社員の名前を使い架空の申請をしていたことは経営者が主導し、意見の言えない組織を巻き込んだ会社の体をなさない犯罪です。申し訳ないですが、組織の存在意義は全くありません。日本の企業では不祥事はひっきりなしに起きており、東芝、みずほ銀行などを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、それらの不祥事は会社ぐるみというよりトップの一部に起因する問題で組織全体の問題とは一線を画します。ところが今回の問題で私がふと思い出したのが雪印の一連の問題です。

海外でもこういう問題が起きないとは言いません。しかし、このような詐欺行為が子会社とはいえ誰でも知っている企業の傘下で正々堂々と行われたことに一般人である私もショックなのです。私は日本企業が元気がないこと、中韓に追い越されるどころか、その背中すら見えないところまで引き離されても再起しようという機運も見えず、お勤めの方はただただ「疲れる日々」を送っているように見えます。疲弊ではなく、ロストなのです。深い霧の中、樹海の中をさまよっている、そんなふうに見えます。萎えた、その言葉が最もふさわしいのがこの事件です。

後記

私もお手伝いするNPOが主催する高齢者向けのオンライン版「脳の運動教室」の20週間のプログラムが本日終了しました。一回2時間、全部に出席した方が6名。皆さんのコメントは金曜日が楽しみ、皆さんに会えるのが嬉しい、幸せ、やっててよかった…と本当に前向き。そしてそれ以上にズームの画面には笑顔が溢れていました。バンクーバーのローカルプログラムでしたが最後は東端のプリンスエドワードから西端のビクトリアにお住いの方まで8800キロを日本人の輪をつなぎました。プログラムを運営したチームも最高でした。今年ベストのプロジェクトです。私は一緒に参加できて幸せです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年12月11日の記事より転載させていただきました。