コロナ禍で悪化?確認強迫の真実

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コロナ禍の影響で症状が悪化していると言われている強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder)。

このコラムでは『精神科医が教えないプチ強迫性障害という「幸せ」 気になってやめられない「儀式」がある人の心理学(双葉社)』の発売を記念して、強迫性障害のあっと驚く魅惑の世界をシリーズでご紹介します。

強迫性障害は上手に付き合えば幸せにつながる要素もたくさんあるのですが、病態化が重いと生活が症状に侵食されてしまいます。自分らしく生きられないという悲劇も…。

悪い影響を受けないように、正しく知って備えましょう。

第2回目は確認強迫です。

確認が生きがいのチェク魔

このタイプの人は「何かが想定通りではない…」ような予感がして心配になります。例えば持ち物の確認、火の元の確認だけでなく、スケジュールの確認、施錠の確認、書類の確認、電気製品の電源の確認、エアコンの消し忘れの確認、スマホ時代になってからは着信の確認、メールの確認…などなど、あらゆることの確認を繰り返すのです。

誰でも、不安になったときに「大丈夫」だと確認できると安心できますよね。心が軽くなって晴々します。すると、この安心が癖になるのです。確認事項のチェックリストなどが手元になると、更に確認が楽しくなります。これもチェック、あれもチェック、それもチェック…と繰り返して、「完璧だ!!よし、大丈夫!!」となればご満悦です。軽症レベルとだと自覚を持ちにくいのは、チェックで心が軽くなって楽しくなるので問題だと感じられないからなのです。

確認そのものは「良いこと」なので余計にやっかい

この症状の悩ましいところは「物事を想定通りに遂行する力」ととても近いことです。誰しも、確認を疎かにして痛い思いをした経験があるのではないでしょうか?筆者の私にもちょっとした確認不足で、痛い思いをした経験がたくさんあります。確認はやりすぎてはいけませんが、物事を良い方向に進めるためには必要なことなのです。

私の印象になりますが、確認強迫に陥りやすい人は目的意識が高い、意志の強い、責任感が強い、そして心配性、といった特徴を兼ね備えた人に多いような気がしています。確認によって安心できて、さらに良い形で物事が進んだ(と思っている)、という繰り返しが行われているのです。

強迫性障害か、必要な確認かの分かれ目は、その確認に実効性があって他の問題を起こさないかどうかです。たとえば出張前に確認三昧で時間をロスし、結果的に飛行機や新幹線などに乗れなかったら、強迫性障害の可能性が高いと言えるでしょう。

現代社会の新しい不安-情報漏洩リスク

持ち物の確認や火の元の確認は割と古典的な症状ですが、情報化社会の今日では「個人情報漏洩」のリスクを繰り返し確認するという症状も出てきています。

例えば、ごみ箱の紙くずを繰り返し確認する症状です。何かの明細やATMの現金出し入れの控えなど、私たちの個人情報はいろいろな「紙」に書かれてやり取りされています。ただ、その多くはすぐに紙くずになってゴミ箱行きになります。ゴミ箱をあさってでも、個人情報を得ようとする不届き者が本当にいるかどうかわかりません。

ただ、そのままで出してしまうと不届き者が「見ようと思えば見られる」というリスクを犯すことになります。そこで漏洩を心配する人は、マジックで上書きして読めなくするなど何らかの対策をしてからゴミ箱に捨てます。

個人情報は守りたいものですが…

しかし、強迫性障害では「もしかしたら、上書きしていない紙くずが混ざっているかも…」と心配になってしまうのです。そこで、ゴミ箱をひっくり返して、個人情報が読めてしまう紙くずがないか徹底的に確認します。

このタイプの方には、「ネット上に自分の個人情報が漏れていないか」「会社の機密を漏らしていないか」ととても心配する方もいます。漏れていないと安心できるまで、他の仕事を中断して確認をしてしまうこともあります。確認そのものは良いことなのですが、まさに過ぎたるは及ばざるが如しなので、心配優先の心配払拭第一主義で無駄な確認を繰り返さないように心がけたいですね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

次回は縁起強迫をご紹介します。

杉山 崇(脳心理科学者・神奈川大学教授)
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