米国NIHのフランシス・コリンズ所長が、CNNニュースでトランプ政権からの圧力を語っていた。ファウチ博士を退任させることを迫っていたようだが、コリンズ所長はサイエンスの基本的原理を変えるわけにはいかないと拒否したようだ。科学を捻じ曲げてPCR検査をしなかったどこかの国とは大きな違いだ。
この国のコロナ対策には、最初から科学がなく、今でも科学がない。御用学者が、当たり障りのないコメントを発しているが、常に後付けで、専門家でなくとも考え付くことしか言わない。メディアも御用メディアとなり、コメンテーターと称する人たちは決して科学的な検証をしようとしない。日本も政権からの大本営発表の圧力がなかったのか検証が必要だ。
今頃になって、濃厚接触者は療養施設でという方針に変わった。しかし、空港での検査が抗原検査というのでは、あまり意味がない。抗原検査がPCR検査と同等という屁理屈をいつまで使い続けるのだろうか?そして、年末にかけて自宅待機が増えれば、必ず、どこかから漏れが出る。それが、等々力でのサッカー観戦につながる件で現実となったはずだ。いつまで経っても、このチグハグさは拭えない。
オミクロン株の実態が明らかとなり、麻疹と同じくらい感染力が強いのは事実だろう。しかし、イギリスの死亡数を見ると、デルタ株流行時10%程度だ。もう少し経過を見る必要はあるが、季節性のインフルエンザと同じくらいの死亡率かもしれない。しかし、それほど感染力が高いならば、日本が鎖国をしたタイミングでは、市中感染が全くないのも不思議な話だ。米国ではワクチンを受けていない人たちの間で感染が広がっているという理由で、ワクチン接種の重要性を強調しているが、何となく納得がいかない。
フィリピン、バングラディシュ、インドネシアなど、ワクチン接種率の低い国でも、依然として非常に少ないコロナ感染陽性者数が続いている。欧米だけを眺めて考える感染対策ではなく、日本の科学が信頼を取り戻すべく、もっと頭を使って科学的な見地でアジア諸国と一緒に解明に励んで欲しいと思う。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2021年12月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。