ドイツ「オミクロン株対策」を発表

予想されたことだが、ドイツのショルツ首相(社会民主党)主導の3連立政権は政権発足後、メルケル前政権と同様、新型コロナウイルスの感染対策に追われてきた。ショルツ首相は21日、ドイツ16州の首相らとコロナの変異株オミクロン株の感染防止策を協議した後、記者会見で対策案を発表した。

ドイツ国立感染病研究所「ロベルト・コッホ研究所」(RKI)の全景RKI公式サイトから

具体的には、ワクチン接種完了者と回復者も私的な会合は最大10人まで(非接種者は2人まで、14歳以下は制限に入らない)。大規模なイベントは観客なしで開催。クラブやディスコは閉鎖され、ダンス、パーティは禁止される。慣例のシルベスター(大晦日)のパーティやイベントは実質的に禁止される。同案はクリスマス開けの今月28日から施行されるが、いつまで続くのかは不明だ。

ショルツ首相は、「クリスマスを控え、いい知らせを国民に伝えたいが、残念ながらそうはいかなくなった」と説明し、「英国、デンマークなどで拡大するオミクロン株がドイツでも広がる前に緊急に対応策を練る必要が出てきた。悠長なことを言っている時ではなくなった。これからは可能な限り、国民は接触を制限していかなければならない」と述べ、国民に理解を求めた。

ドイツではデルタ変異種株による第4波の感染者は減少してきたが、入院患者と集中治療室の状況は緊迫している。第5波がすぐ傍まできている。オミクロン株の感染が広がった場合、短期間に患者が急増し、ドイツの医療体制は崩壊の危機に直面することが予想される。

ドイツ国立感染症研究所「ロベルト・コッホ研究所」(RKI)は「早急に国民の接触制限を強化すべきだ」と強調する一方、レストランを閉鎖、学校のクリスマス休暇を延長すべきだと主張している。今月28日から施行される政府の対策案と比べ、RKIの勧告は一層強い。

オミクロン株はデルタ株より感染力が強く、従来のワクチン接種の有効性が弱まるとの懸念が聞かれる。そのため、ドイツ政府は国民にブースター接種を呼びかけている。同国では22日時点でワクチン接種完了率は70.4%だ。隣国オーストリアでは来年2月1日からワクチン接種の義務化を行う。ショルツ首相はオミクロン株の感染次第では「ワクチン接種の義務化も排除できなくなる」という考えを度々示唆している。

RKIは、「オミクロン株は来年1月に入れば、ドイツでも感染症例の大部分を占めるようになるだろう。1日数万件のオミクロン感染症が発生する可能性が考えられる」と警告している。英国では1日のオミクロン株感染者数は既に1万5000人を超えている。

なお、ワクチン接種では迅速の対応してきたイスラエルは21日、オミクロン株対策のために医療従事者や60歳を過ぎた国民に対し、4度目のワクチンを接種することを決めている。先進7カ国(G7)の保健相会合は今月16日、「オミクロン株は世界の公衆衛生で最大の脅威」という点で一致している。ポスト・デルタはオミクロン時代の到来となってきた。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年12月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。